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ゴミとゴミとゴミ

「さて、どうしたものでしょうか……」


 床の上には空になった紅茶の缶が、大量に転がっている。ペチカの額には、冷却シートが張られていた。


 ペチカは悩んでいた。スタッカート王国民(ゴミ)への復讐計画が一から練り直しとなってしまったからだ。


 前にやった"魔石を与えて強化したモンスターをけしかける作戦"は使えない。


 第一に、コストがかかりすぎる。ペチカが三ヶ月かけて必死に溜め込んだ魔石を使っても、ペン太郎一体をレベル三万にするのが精一杯だったからである。


 第二に、モンスターが市街地にでたら冒険者ゴミが集まってきてすぐ討伐してしまうからだ。


 そして最後に、モンスターは言うことを聞かない。せめて指示通りに動いてくれれば、主要施設を破壊したりできたのに。


「かといって、私自ら手を下すわけにもいきませんし……」


 作戦ノートには、没になった作戦がいくつも並んでいた。ペチカとしては、あの作戦は渾身の出来のつもりだったのだ。


 ペチカの復讐計画で一番大事なことは、ペチカが罪に問われないこと。


 スタッカート王国民(ゴミ)はできるだけ苦しめたいが、そのために自分が不幸になるのは割に合わないとペチカは考えている。

 ペチカは復讐者だが、その一方で自分が幸せに生きることも大事だと考えているのだ。

 因果応報というのなら、報いは既に受けているというのが彼女の主張だ。


 とりあえずいくつか案が出たところで、ペチカは倒れるように寝転がった。


「何はともあれ、先立つものが必要ですね……」


 復讐にはとにかくコストがかかる。ペチカは日銭を稼ぐため、今日は出かけることにした。



 ペチカは冒険者ギルドに来て、掲示板を舐めるように見つめている。今日の依頼おしごとを探しているのだ。

 なるべく難易度が高く、すぐに終わり、報酬がいいものがベストだ。ペチカの実力なら難易度は問題にならない。


「うーん、とりあえずこれでいいですかね……」


 とはいえ、ペチカのようなSランク冒険者ゴミを要求するような依頼はそうそう無い。大抵は今日のようにBランク程度の依頼を受けることになる。


「おや、ペチカちゃんじゃないか」


「あっハルトさん、こんにちはです」


 声をかけてきた白髪の胡散臭い青年に対し、ペチカは朗らかに挨拶あいさつを返した。彼はハルト。一見して頼りない昼行灯ひるあんどんのようだが、こう見えてペチカと同じSランク冒険者ゴミである。


「ハルトさんも依頼を探しにきたんですか?」


「うん、前の依頼の報酬は使いきっちゃってね」


「またキャバクラ通いですかー?」


 冒険者ゴミは所詮無職(ゴミ)。後先を考えず散財する者も多い。そういった者はランクを問わず年中忙しく飛び回っている。


「ははは、耳が痛いよ。ペチカちゃんはまた魔石を買うつもりかい?」


「いや、今度は使い道を決めていないんですが、とりあえず貯めておこうかなと思いまして」


「それは立派な心がけだね! 感心感心」


 他愛もない話で盛り上がる二人。冒険者は無駄話が好きだ。なぜなら依頼の人数が集まるまで暇になるからである。

 結局、規定の人数八人が揃うまでの二時間、二人はだらだらと報酬を賭けたトランプをしながら時間を潰していた。



 そして集合時間。依頼を受けた冒険者ゴミたちはたいてい目的地近くで落ち合い、そこで初めて作戦を練ることになる。


「一人足りないけど、時間ですし始めてしまいましょうか。一番、ペチカです。ポジションはどこにでも入れます」


「二番、ハルトだよ。ポジションは前衛を希望するよ」


 まずはペチカが率先して挨拶とポジション宣言の流れを作る。この流れはテンプレのようになっていて、これがスムーズにいかないチームはたいてい酷いことになる。


「五番、ゴーミュよ。ポジションは前衛」


 この瞬間、ピリッとした空気が流れた。


「七番、ゴ・ミだ。ポジションは前衛……」


 そして全員が自己紹介を終えたこの瞬間から、火蓋が切られる。


「ゴーミュさん、すいませんがポジション移動してくれませんか? バランスを考えると一人後衛に行ってくれると助かります」


 ペチカが全体の顔色を伺いつつ遠回しな表現で牽制する。まだ自分のポジションを表明する前のこのタイミング。慣れている者はこの意図をすぐに理解した。


「嫌よ、私は装備を考えると前衛がいいと思うわ。移動なら他の人に頼んで」


 ゴーミュのこの反論によって、空気にヒビが入る音がした。

 ペチカの頬を嫌な汗が伝う。ハルトは頭を抱えた。


 ゴーミュのランクはC。この依頼に要求された最低限のランクだ。そして最低限とは最適という意味ではない。


 ゴーミュ以外は皆がこう思っている。「こいつ弱くて足手まといなんだから、大人しく後ろに下がってろよ」と。

 ただそれを口にすると荒れるので、あえて口にせず穏便に済ませようとしているのだ。


 こういった事例は報酬のいい依頼にはよくあることで、これをどう捌くかで冒険者ゴミの質が測れるとも言われている。


「いや、ハルトさんは最高レベルのアタッカーですし、ゴ・ミさんはゴブリンに対して弱点属性を突けますから……」


「なら私もヘイト管理ができるわよ。それに、最大ダメージには自信があるわ」


 ペチカは斧を抜いた。ハルトがそれに気付きこっそりとペチカをなだめる。

 この流れは最悪である。一人の問題児にかかりきりになり、結局何も解決しないまま作戦も立てられず出発時間になる危険性がある。


「よしわかった! 前衛は三人でいい! それよりこれからの作戦について考えよう!」


 ハルトが強引に話を進めようと声を張り上げた。株でいうところの損切りである。これ以上言い争っても解決しないとの判断だ。だがそれもうまくいくとは限らない。


「いや、そうはいかないぜ。このCランクが前衛にいて困るのは俺たちなんだ。はっきり言うぜ、足手まといは下がってな」


 ゴ・ミが立ち上がった。ペチカとハルトは揃って頭を抱えた。火に油を注ぎやがったよこいつ。


「なんですって! 誰が足手まといよこのハゲ!」


「何度でも言ってやるよ! 雑魚の癖にしゃしゃり出て空気悪くすんなこのCランク!」


 殴り合いの喧嘩が始まった。これはもうどうにもならない。終わりだ。



 そして出発時間を迎えた。空気は最悪だ。


「こうなったら私とハルトさんの二人でなんとかしましょう」


「ああ、そうだね……」


 一応S級が二人もいるのだ、希望はまだある。そう信じて歩き出した。

 そこに迫る人影が一つ。


「遅れてすまない。八番、ゴミューダ。ポジションは前衛だ」


 ペチカはゴミューダの首をはねた。

 ファンタジーですがゲームものみたいな世界観です。

 ゲームでの経験が元になってたりします。

 ブクマと評価とポイントが好きです。

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