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捏造の王国

捏造の王国 その22 長官大変です!非公式“国際大運動大会でのニホンの歩き方”が出回ってます!

作者: 天城冴

来年にせまった国際大運動大会の非公式ガイドブック”国際大運動大会でのニホンの歩き方”を目にしたシモシモダ副長官他副長官トリオは、その内容の身もふたもなさに驚愕。なんとかもう少しましな公式ガイドブックを作成しようとするが…

連日熱中症で倒れる庶民が出る今日この頃。すでに8月初旬になり、参院選もおわり夏の暑さが堪えるようになったが、ガース長官はいまだ本調子が戻っていなかった。

「はあ…(まさか地獄、いやそんな。ああ、あの奪衣婆の台詞が)」

と、官邸での執務中も外の緑を見つめてはため息をつくガース長官。

そんな長官の様子をみていた三副長官の面々。

「ガース長官、まだ具合が悪いようだな。やはり年のせいか」

「シモシモダ君、だから僕たちで長官を支えるんだ、そうだろタニタニダ君」

「そうだけど、シモシモダの言う通り、長官も年齢が年齢。アトウダ大臣のところで次の長官選びを」

「はあ?何を言っているんだ、タニタニダ君、我々は副長官なんだぞ、俺たちの中から誰か選ばれるべきじゃないか」

「そうかもしれないけど俺は、そのう、まあ実績もろくに(アトウダ大臣についてもいいんだけど)」

「だからこそ実績をつくるんだろう。長官の代わりが務まると証明しないと」

「ど、どうやって」

尋ねる二人にシモシモダ副長官はパソコンの液晶画面をみせた。

「ほら、これ、こんなものが出回ってるんだ!」

と、指さす先には

"Walking in Japan at the International Convention 国際大運動大会でのニホンの歩き方”


「えっと、つまりなんだ、来年の国際大運動大会を観にニホンを訪れる観光客にむけてのガイドブックか、それなら別に」

「そうだが、タイトルだけで判断するな、ニシニシムラ君、内容が内容なんだぞ」

「あー何々“Attention when a Japanese man is called out” ニホンの男性に声を掛けられたときの注意?え、何、どういうことだ、“たとえ襲われたとしても、目を開けたり、声出したりしたら性行為への同意とみなされ、性犯罪と認定されない恐れがあります。酒を飲むことに同意する、部屋に二人でいることも大変危険です。これらの行動に同意した場合、暴力を振るわれても、性行為を強要されても、犯罪として起訴されず、逆に性行為に対する同意とみなされます。特に相手が有名私大の男子学生、ドヨタなど財閥関連企業、大手ゼネコン、総理官邸、国会議員につながりのある男性だった場合は要注意です!”ってなんだ」

「つまりだな、ニホンでレイプ、痴漢、性犯罪の加害者は不起訴か罪が軽すぎると世界に知れ渡ったということだ。世界レベル、下手したら近隣アジア諸国よりも性暴力や性犯罪を見逃し加害者に甘い。特に財界、政界とコネのある奴は見逃されやすいってことだよ」

「そ、それで、どうして」

「他国ではこういうことは通常は犯罪だ、もちろんニホン以外の国ではキチンと裁かれる、先進国では特にな。ニホンにくる観光客は当然ニホンもそうだと思ってる、しかし…」

「あー、つまりニホンはそうじゃない。縁故主義でコネのある奴はやりたい放題、女性蔑視で困っている女性を見ても手伝いもしない、前後不覚の酔っ払いは泥酔無罪になるから女性は気をつけろと」

「男性もだよ、ニシニシムラ君、特に白人以外の人種差別は結構あるぞとの警告もある、さらに」

「な、なんだ、シモシモダ君まだあるのか」

「こ、これはもう、くそ、反論できないのがつらい」

「な、なんて書いてあるんだ」

と、ニシニシムラ副長官とタニタニダ副長官が覗き見て、脳内翻訳をはじめた。

“本国ではいまいちの男性諸君!ニホン女性を口説け!特に欧米人は有利だ!他の国でも紳士という自信があるならやるべきだ!重い荷物を持つ、ベビーカーを運ぶのを手伝うなど、ごく当たり前のことでさえ、彼女らは感動してくれるんだ!エレベーターに乗り込もうとするときにそっとドアを抑えて待っている、なんて些細なことでさえだぞ!彼女の家に首尾よく招待されたら、食事の支度を手伝うだけでも効果ありだ。なんたって皿を洗うだけで大感激されるんだぞ!ニホンのCMで僕はその場面をみたんだ!有名な洗剤のメーカーだ!しかも彼女らは『男を立てる』んだ!僕等が多少失敗してもさりげなくフォローをして恥をかかせないようにしてくれるんだ!家事育児も万全だ、ちょっと手伝っただけでありがたがられる、素晴らしいぞ、ニホン女性は、各国の料理をマスターした女性すらいるんだ!ちょっとした記念日に花や贈り物をするだけでも効果ありだ!ぜひチャレンジだ!”

「うわあああ、ま、不味いぞ。世界中の男どもがニホン女性にプロポーズしたら、ますますニホン男性の独身率が増えるじゃないか!」

「それだけではないんだ、これには女性編もある。まあマシな男もいるとされて認知されていることが救いだが」

「ひょっとしたら、ニホンのマシな男女が外国人に持っていかれるってことか、ダメダメ男女は見捨てられ…」

「特に女性はその可能性があるだろう、なにしろレイプ魔だろうが、集団暴行だろうが不起訴、痴漢を繰り返しても首にもならない警察官、泥酔させられレイプされても裁判官は合意とみなすという国だぞ。外国語ができるマトモな女性ならこんな国から出ようと思っても不思議はない」

「でもシモシモダ君、そういう男性陣が僕らに票を入れてくれるんだよ」

「それが情けないんだよ、ニシニシムラ君。しかし本当のことといえば本当だし」

「と、とにかくなんとかしよう」

「そうだな。非公式ということだし、ニホン政府として、新たに外国人向けガイドブックを無料配布するとか」

「ぶ、文面はどうするんだ」

「うーん、それは。なにかいい文章を考えようタニタニダ君」

「そうだな、シモシモダ君、ニシニシムラ君、なんとかしよう」

あれがいいか、いやこれではやはり誤解を招く、ニホンの微妙な言い回しを相手にどう伝えればいいのか…。

三副長官は徹夜でガイドブックの文章を考えたが、しかし

「だ、だめだ、なかなか難しい」

「やっぱり思い浮かばない」

「ど、どうする、もう朝だ。長官が来る」

逡巡する三人の前にガース長官がやってきた。

「何をやっているんだ、君たち、夜更かしは健康に悪いぞ」

「す、すみませんガース長官。実はこんなものが…」

「な、なに"Walking in Japan at the International Convention 国際大運動大会でのニホンの歩き方”、ふむふむ…これはマズい。早速、有識者を集めニホン公式ガイドブックの作成に取り掛からねば」

ガース長官はきびきびと関係各所に連絡を取り始めた。

「ああ、タニタニダ副長官、アトウダ大臣ほか閣僚の方々にも連絡を。ニシニシムラ副長官は総理に、シモシモダ副長官は会合などの調整をお願いする」

「はい」

三副長官は勢いよく返事をして、仕事にとりかかった。

 ガース長官はGASS缶コーヒーを飲みながら

「うむ、やはり適度に忙しくせねばならん」

仕事への意欲を再確認していた。


どこぞのお国でもオリンピックとやらが開催されるそうですが、気温、治安他いろいろ懸念されております。まあ意地をはるより現実を鑑みた冷静な判断をしていただきたいものですねえ。

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