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いろいろな勉強のためにもパソコンがほしいな

 家に帰った俺は母さんとある相談をすることにした。


「母さん、ゲームの開発の練習のために、俺専用のパソコンがほしいんだけど、買ってもらえないかな?」


 母さんはたしなめるように言った。


「あら、ホムコンなら買ってあげたでしょ」


 いやいやと俺は首を横に振る。


「ホムコンじゃなくてパソコンがほしいんだ」


 母さんの頭の上には?マークが出てるように、僕の言ってることの意味がわかってないようだ。


「パソコン?

 マイコンのことかしら?」


 ああ、そうか。


 この頃はパソコンじゃなくってマイコンだっけ。


「あ、うんそうそう、マイコンのMECのPC-9801シリーズの最新のやつがほしいんだ」


 でも価格が高すぎて 店頭ではほとんど売れなかったらしいけどね。 


「それは幾らぐらいするのかしら」


「本体が80万円くらいで、モニターが20万ほどかな」


 母さんは値段を聞くとうーんと唸る。


「100万円は遊びに使うにはちょっと高いわね」


 まあ普通の感覚だとそう思うだろうね、でも僕はあえてお母さんを説得しようと言葉を続けた。


「遊びに使うんじゃなくてゲームを実際に見て、僕もゲームを作って売るための練習にほしいんだ。

 大学を卒業したらゲーム会社に入って独立したいんだけど、そのためにも今からBASICとか覚えておかないと」


 本当はIBNのPC/MTやパイナップルのNacintoshも、もう出てるからそれらもそれぞれほしいけどこの頃のパソコンは高すぎるからね。


 PC-88シリーズの最新機種でもいいんだけど88シリーズは1987年(昭和62年)にシャープナーのY68000が登場するとその座が揺らぐんだよね。


 こっちでも同じ名前かどうかはわからないけど。


 そして前の98シリーズは1990年代後半の、国内PC市場でのPC/AT互換機とのシェア争いに負けるまで主力だったけど、1983年に発売されたPC-8801mkIIは旧機種なんで、動作速度やグラフィックの描画などが遅く、アクションゲームには不向きなんだよね。


 もっともPC-8801mkIIなら20万くらいだけどゲームをするために買うにはこれも高くて、MSXならもう少し安いけど1986年に松元電器から発売された『FS-A1』は2万9800円で販売されて大ヒットを記録。


 ホビーパソコンはその後MSXがほぼ独占して、1989年くらいまでは毎月数えきれないほどのゲームが発売されたんだけど、任天堂のスーパーファミコンが出てしまうとそれに押されていって、パソコン市場は当時「国民機」とまで言われたNECのPC-9801シリーズが圧倒的シェアを持っていたし、スーファミ以上の表現力を自作ゲームにという点ではシャープナーのY68000シリーズがいちばんだったからMSXは中途半端になってしまいその後は勢いを失っていってしまうんだね。


「お父さんとも相談してみましょう」


「うん、わかったよ」 


 で、土曜日の半日出勤で早めに帰ってきたお父さんに俺は言った。


「お父さん、将来のためにマイコンを買ってほしいんだけどだめかな」


 お父さんは少し考えたあとに言った。


「マイコンか、まあワープロと同じようにこれからは仕事でも必需品になっていくだろう。

 だから、使い方を覚えておくに越したことはないな。

 それから営業には必須だから自動車の免許も早くとっておいたほうがいいぞ」


「あ、うん、ありがとう。

 バイクの免許もあったほうがいいのかな?」


「身分証明書としても便利だし、あるにこしたことはないと思うぞ。

 もちろん暴走族になるようなことがあっちゃ困るけどな」


「うん、わかった、高校に入ったらそっちも考えるね」


 そして翌日の日曜日に父さんと僕はパソコンを買いに秋葉原に行くことになった。


 家の近くだとパソコンを扱ってる大きな電気店がないんだよね。


 秋葉原に着いたらハードマップを探す。


 ハードマップは1983年に秋葉原1号店がオープンして1984年には新品や中古を含めたパソコン販売をしているその後もずっと秋葉原に残るはずのパソコン専門店だ。


 そして建物を見つけるとその店内には色々なパソコンが置いてある。


「ほう、たくさんあるもんだな」


「そうだね。

 あ、店員さん、MECのPC-9801の最新のやつはありますか?」


 僕が店員さんへそう声を掛けるとそそくさと店員さんが寄ってきた。


「はい、ありますよ。

 CRTモニターは別売りですがそちらも一緒にお探しで?」


「はい、モニターもください」


「ありがとうございます。

 お代はお父さんがおもちですか」


「ああ、ここは小切手は使えるかな?」


「あ、申し訳ありません、

 現金のみになります」


「そうか高額商品なのに面倒なのだな。

 まあいい、一応用意してある」


 父さんは帯封されたままの札束を無造作に取り出した。


「あ、ありがとうございます」


 店員さんが恐る恐るという感じでそれを受け取ってるけど、どうも父さんの金銭感覚がちょっとおかしいような気がするのは僕だけだろうか?


 もっとも帯封は一見するとただの紙だけど、銀行から渡された場合は銀行のロゴマークや結束担当者の印鑑や日付が入っていることによって、紙幣の出所を証明する効果もあるのでそれが高額拠出の証明となるため、高額取引の際は金融機関などの帯封があると信用されるというメリットもあるみたい。


「高い買い物だし、ちゃんと将来のために役に立てろよ」


「うん、ありがとう父さん。

 ちゃんと将来の役に立てるよ」


 あとゲームソフトとしてフロッピーディスクのサラダの国のポテト姫とザ・ブラックオニックスを買ってみた。


 この時期はまだカセットテープの機種も多いけど、フロッピーどころかハードディスクもあるからそれなりに快適。


 この頃はブームのアドベンチャーゲームの初期ヒット作のサラダの国のポテト姫はコマンド入力式なんでなかなか難しい。


 そしてザ・ブラックオニックスは弓矢とか魔法が使えないとはいえ、RPGはやっぱり面白いね。


 あ、ちゃんと仕事に使えるようにと父さんはワープロソフトの松もつけてくれたし、ドットプリンターも買ってくれたけどね。


 そしてちゃんとゲームを動かしてるプログラムも勉強しないといけないし、ワープロソフトなんかを使って書類を作れるようにもしないとね。


「先はまだまだ長いけど、時間はあんまりないし頑張らないとね」


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