表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/425

お盆の迎え火や送り火や盆踊りも無事終わったら夏休みももうすぐ終わりだな

 お盆を過ぎて海にたくさんのクラゲが出る前の鴨川への家族旅行が終わったら、今度はお盆の行事へ参加することになる。


 なお、8月10日に日本専売公社の事業継承を目的とした専売改革関連法が公布され、来年に民営化されることが決定発表されていて、俺は父さんにいずれ民営化されるMTTの株は買っておいたほうがいいことは伝えてある。


「ああ、そうするつもりだ」


「でも、2月に買っても9月までには売っておいたほうがいいよ?」


「それはまたなんでだ?」


「アメリカで株価がやばいことになるはずだから」


「そうなのか」


「俺の予想だとね」


「わかった、覚えておこう」


 多分“前”はここで大損をしていたはずなんだよね。


 うちは江戸時代ぐらいから代々船橋に住んでいて、曹洞宗の菩提寺も比較的近くにある。


 なのでお盆休みに実家への帰省をすることがない代わりに、親戚などと一緒にお墓やお寺に行ったりしてお盆行事に参加することになる。


 8月の13日に日が暮れたら迎え火をする。


「絶対に途中でろうそくを消さないようにしないと駄目よ」


 母さんにそう言われて俺はうなずく。


「うん、わかってる」


 俺の所では仏壇のお飾りとお供えをすませたあとで、お墓まで行って、キュウリと割り箸などで作った馬の精霊馬(じょうりょうま)をお供えして墓に飾ったら、盆堤灯に火を灯してそれを消さないようにしながら家まで歩く。


 これはご先祖様が家まで迷わないようにということでやっているらしいが、墓と家がかなり近くないとできないよな。


 仏壇に精進料理のお膳を一日朝昼晩三回用意したりもする。


 このお墓まで提灯を持って送り迎えをしたり、精進料理を用意するのは曹洞宗独自のものらしい。


 キュウリの馬は「馬に乗って早く来てくださいね」、ナスの牛は「帰りは牛に乗ってゆっくり帰ってくださいね」という意味合いがあるらしい。


 2020年ぐらいには馬や牛じゃなく、二式大艇とかジャンボジェット、鳳凰とかドラゴン、タイムマシン、ナスのドムやキュウリのザクなどのモビルスーツなどやバイク戦艦など多種多様な物が作られていたりしてカオスだったが。


 場合によってはご先祖様や故人をお迎えする盆棚もしくは精霊棚(しょうりょうたな)とも呼ばれるものを準備する場合もあるようだが、うちは仏間にでかい仏壇が2つあるのでそれはやらないらしい。


 盆棚はちゃぶ台に真菰まこもやござを敷き、仏壇をきれいに掃除したうえで、位牌を盆棚に移し、お花や故人が好んだ食べ物などをそれに供える。


 ときには盆棚に精進料理やキュウリと割り箸などで作った馬やナスと割り箸で作った牛を供えることもあるらしい。 


 一般的には家の門口や玄関で素焼の焙烙にオガラという麻の茎を折ってつみ重ね、それに火をつけて燃して、玄関に提灯をつけ迎え団子や鬼灯(ほおずき)を供えてお迎えの準備をするが一般的には、これを迎え火というらしい。


 その後先祖代々の墓に行って、キュウリと割り箸などで作った馬のお供え物をするようだ。


 お盆行事のやり方は地域などによってかなり違うらしいけどな。


 15日には蓮の葉に「乾物」「生菜」「洗米」をお供えする。

「乾物」は干ししいたけ、高野豆腐、ひじき、わかめなど、「生菜」はなす、きゅうり、とうもろこしなど、「洗米」は文字どおり洗ったお米でこれを蓮の葉に包んだ「蓮飯」を墓に供えて、お寺の法事供養にも参加して新しい卒塔婆をもらってお墓に供えて綺麗に掃除をする。


 16日には家からろうそくをつけた提灯を持ってお墓まで行き、お墓で火を消して、ナスの牛を供えて送り火を行う。


 それが終われば盆踊りだ。


 17日の晩には浅間神社の夏祭り盆踊り大会があって、境内に老若男女が集まって櫓を組んで輪になって踊る。


 俺は斎藤さんを盆踊りに誘ってみた。


 家の黒電話から斎藤さんのお家の電話に電話をかけるがちょっと緊張するな。


「あ、もしもし前田といいますが……」


 電話に出たのは斉藤さんのお母さんだった。


 これだから固定電話は怖いんだよな。


「あら、前田さんの息子さん?

 ちょっとまってね。

 娘に代わるから」


 受話器が電話台に置かれたあとでしばらくして斎藤さんが出た。


「前田くん、こんばんは。

 わざわざ家に電話をしてくるなんてどんな用件かしら?」


「あ、うん、今晩の浅間神社の盆踊りに一緒に行かない?」


「……そう、構わないわよ。

 でも浴衣を着たりするから少し時間をちょうだい」


「うん、ありがとう。

 浅間神社前のバス停に18時待ち合わせでどうかな?」


「それなら十分間に合うわね。

 それでいいわ」


「お母さん、浴衣ってどこにあったっけ?」


「あら、浴衣着てどこに行くの?」


「浅間神社の盆踊り、斉藤さんと一緒に」


「あらあら、それじゃあちゃんとしたものじゃないと」


「いやいや今から買うとか無理でしょ?」


「それもそうね、でもちゃんととってあるわよ」


 母さんが箪笥の奥から出してきてくれた浴衣を着て、下駄を履いて俺は浅間神社に向かう。


「頑張ってらっしゃいねー」


「なにをだよ」


「いろいろ」


 そう言って母さんは笑っている。


 高台にある神社の境内に続く石段の脇やその前に派手な屋台が並んで人もだいぶ集まっている。


 上からは本踊りではド定番の東京音頭が聞こえてくるな。


 俺はちょっと早めにバスに乗って神社前で降りて、バス停の脇で斎藤さんを待っていた。


 浴衣を着た親子連れや大学生くらいのカップル、俺と同じような中学生や高校生などが笑いながら石段を登っていく。


 やがて、バスが到着してその中から斉藤さんが降りてきた。


 桃色の浴衣に涼し気な紫陽花が描かれた浴衣、髪を結い上げ、首筋やうなじが見える姿はこれで新鮮なものがある。


「遅くなってごめんなさい。

 だいぶ待ったかしら?」


 実際は結構待ったがこういう時にそういうのは無粋だ。


「大丈夫、俺もついさっき来たところだよ」


 それにしても人数がすごいので、前に進むにも一苦労だ。


「斎藤さん。

 はぐれないために手を繋いでもいい?」


「そうね、それがいいかもしれないわ」


 俺は左手を差し出し、斎藤さんは右手で俺の手を握った。


「まずは境内まで上がって踊りを踊ろうか」


「ええ、そうしましょう」


 石段を上りきった先の境内には櫓が組まれ、地元の人間が輪になって踊っている。


 その中に俺と斎藤さんは加わって、踊りを踊る。


 盆踊りはそんなに難しいものではないし、なんとなく一体感のようなものを感じるけどまだ若い人間も結構混じってるな。


 だんだんこういった行事に参加する若い人間が減っていって、地元の婦人会のおばちゃんや青年団のおっちゃんばかりになっていったりするんだけど。


 ある程度踊りを楽しんだらその輪から外れてまた斉藤さんと手をつないで、屋台を見て回ることにした。


 金魚すくい、亀すくい、ヨーヨー釣り、お菓子釣り、スーパーボールすくいなどのすくい、釣り系、ヒヨコやウサギなどの生き物系、ポップコーン、フランクフルト、焼き鳥、チョコバナナ、クレープ、お好み焼き、たこ焼き、いか焼き、かき氷、焼きそば、あんず飴、わた飴、ベビーカステラ、焼きとうもろこしなどの食べ物系の屋台、射的に輪投げ、型抜きにくじ、紐引きなどの商品目当て系やお面やなんだかよくわからないひかるおもちゃ?などの屋台などもある。


「綿菓子なんかこういうときしか食べられないよな」


「そうね。

 こういうときの屋台ぐらいでしか見ないものね」


 そんな感じで俺たちはわたあめを買った。


「わたあめ、美味しいけど意外と食ベにくいわね」


「確かに。

 口で溶け切らない感じがなんとも」


 それから俺は射的に挑戦。


「さて取れるかな?」


 残念ながらコルク玉で落とせたのはキャラメルだけだった。


「キャラメルかぁ、買った方が安かったかな」


「そういうふうに言ったらなにも楽しめないと思うわよ」


「それは確かに」


 イカ焼きを買ったり、クレープを買ったりカキ氷やあんず飴……と言っても俺はみかん飴だけど、それらを買って食べたりしている間に夜も更けてきて家族連れや子供などは減ってきた。


「そろそろ帰ろうか」


「そうね、あんまり遅いとお父さんが心配するでしょうし」


「お母さんは?」


「お母さんは多分心配しないと思うわ」


「そっか」


 俺と斎藤さんはバス停まで手をつないでいき、バスに乗って駅前まで戻るとそれで別れた。


「それじゃまた」


「ええ、またね」


 家族旅行や盆踊りが終わったら改めて受験に備えて勉強しないとな。


 高校に入ったらそんなに遊んでる余裕はなくなる予定だから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ