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どーでもいい話
「ねえショウちゃん。俺の夢を聞いてくれないか」
サトルが友人の少年にそう振ったのは、雨のせいで真夏の昼間とは思えないほど暗くて寒い日だった。
「はあ。夢」
「うん、すげえどーでもいい夢だよ」
「寝てるときに見る方か」
「いや、起きてるときに見る方」
サトルが教室の窓をちょっとだけ開けて、外を眺める。水溜まりに次々と落ちて広がる波紋を、つまらなそうに見つめていた。
「ショウちゃんとね、どーでもいい話すること」
「……うん?」
思わず聞き返すと、サトルは親切にもう一度言ってくれた。
「あんたと、どーでもいい話するっていう、夢」
「はあ」
思わず間抜けな返事が出た。サトルが気にせず続ける。
「俺がどーでもいいこと言って、ショウちゃんがどーでもいいな、って言うんだ。それで俺も、どーでもいいねって言う」
「それが夢かよ」
「うん」
はあ。
あほらしい。
なんてどーでもいい話なんだ。
「どーでもいいな」
「うん、どーでもいいね」
低気圧がけだるい。
どーでもいい時間が、さああという静かな雨音に包まれていた。