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瓶詰め
夕日に満たされた部屋できらきら煌めく香水は、無粋な真ピンクだった。ぎらぎらとぎらつく瓶の中の液に、イライラする。
私は言の葉をひと粒、瓶の中に落とした。
「やっぱり嘘つきだったね」
私が零した声を拾って、違う香りに変化していくような。そんな気がしていた。
飲みかけのコーヒー、干した靴下、表紙の折れた本。
削れた口紅、丸印のついたカレンダー、ぱんぱんに溢れたごみ箱。
君のいない部屋。
いつもそう、期待させておいて裏切る。無責任で嘘つき。
窓から差し込む光が香水を煌めかせる。きらきら、きらきら。
「やっぱり嘘つきだったね」
もう一度、微笑んでみる。きらきら、音が光を反射している気がした。
どぎついピンクの水面が私の声を溶かしていく。
いなくなってしまった、最愛のあなたに。
浸されて満たされて憧れて恋焦がれて冷たくて呼ばれたくて。
泣きたくて侘しくて切なくて苦しくて悔しくて卑しくて虚しくて懐かしくて悲しくて狂おしくて甘くて優しくて。
愛しくて。
溶けだしちゃいそう。




