恋愛論
「バカじゃないの」
多くの女の子が夢見る日、少数派の少女は言った。
「もともと愛をカタチにする日だってのに、義理チョコだ友チョコだ言って、結局お菓子作りを楽しんでるだけじゃん」
「たしかに……日本人ってイベント好きだよな」
幼馴染みの少年はそう言って苦笑を浮かべた。
「恋人がいるっていう状態を作りたいだけで、一時の気持ちだけで付き合ったりしてさ。本気で好きになったことあるわけ?」
「そう言われてみれば、付き合っちゃ別れちゃしてるもんな。結構適当な奴も多いよな。そんなんばっかでもないんだろうけどさ」
「大体さ、愛をカタチにするっていう考え方がわかんない。モノで表現しないと分かんないような想いなわけ?愛ってそんなに中途半端なものだっけ?」
「んー……。俺もそういうのよく分かんないけど、お互いの気持ちがちゃんと通いあってて、モノなんか要らないっていうのはたしかに理想的かもな」
少年は頬杖をつきながらぼんやりと言った。
「けどさ やっぱり好きな相手から好きだって気持ちをカタチにしてもらえたら、嬉しいんじゃないの」
何となく、ああ、そっか。なんて、思った。
「分かったよ、そーいうもんなのね、現代人って。はあ。ばかばかしい!」
まるで分かっていないのに、分かったと言って流しているような、そんな口調で言ってやった。