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殺戮兵器
ゼアルは、《殺戮兵器》という意味を持つ名だ。彼がこの名を得たのは3年前のことで、その時に元の名を失った。
それは、敵兵約1000人をたった1人で制圧した功績を受けてのことだ。齢13にして、支配地の残党兵を一人残らず殺し、ログーナ王国の権威に関わる戦いを収めたことは、人々の記憶に色濃く残っている。
時の皇帝は、めざましい活躍をした彼に《殺戮兵器》の名を与えたのだ。
《ゼアル》と呼ばれ、人々から恐れ敬われる存在となった彼は、その後様々な戦に駆り出されるようになった。
支配地の残党兵の殺戮、敵国の制圧ーー多くの戦の中で、ゼアルは人々の憎悪をすべて受け止める物としても使われていたのだ。
しかしそれを、彼は辛いとも思ってはいない。
彼には、心が無いから。
心が無ければ、辛いと思うことも無い。怖いと思うことも無い。
まさに、殺戮兵器と呼ぶのに相応しい青年だったのだ。
そうして今も、彼は殺戮兵器として戦い続ける。