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プロローグ
累々と死体の転がる草原にひとり、青年が立っていた。沈みかけた太陽の、血のように赤い日差しが流れるなか、彼はくろぐろと影になって見えていた。
全身を敵の血に染められ、その美しい銀髪も、血で赤黒く固まっている。
彼はゆっくりと、手に持った長剣を腰に収めようとして、ふと右のほうを見やった。
死体の海から、鎧が立ち上がった。ぜいぜいと苦しげな息が、彼の耳にも届く。
「ログーナの、殺戮兵器め……貴様も、ここで死ぬが、いい」
苦しげに呟いた兵士の言葉を、《殺戮兵器》は聞いていなかった。死体を踏み越えて歩いた彼は、無機質な表情で鎧を纏う兵士を見る。
「覚悟、しろ」
ぐらりと揺れながら、兵士が剣を振り上げた時。その瞬間には、彼はもう消えていた。
じゃく、じゃくと、血を含んでぬかるんだ地面を歩く音が、兵士の背後で聞こえる。
一拍遅れて、兵士の首が飛んだ。
殺気すら無い一撃は、またひとつの命を刈り取る。
彼が剣を収めた途端、太陽が完全に沈み切り、あたりが暗くなった。