表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の塔の魔術師   作者: ちゃい
92/106

留学生

 二年生になって一カ月過ぎた頃、学院に大国①と②から留学生が来た。


 アレックスが去年帰ってほっとしていたのに、その二人は大国からN国の魔王を倒すために送られて来た勇者だという。

 

 大国は同盟国だが、元々N国の魔力が気に入らなかった。

 圧倒的な力で押さえつけた同盟関係でなければ、納得できないし不快だから、いつかなにかで仕返ししたかったようだ。


 そしてN国の宰相様がうっかり上に立ってしまったか、父さんが失敗して力を見せつけたのか知らないが、要するに大国は機嫌をそこねた。


 そこで生徒会長のケントを魔王にして、勇者の挑戦を受けることにしたらしい。わたしは魔王ね、茶番だけど。


 人であれば勇者を応援したくなるが、魔王軍の生徒会は人気があるから、学院中がどちらの応援をするかでもめている。


 「あー、めんどくさい」

 思わず口にだして言ってしまった、父さんからは面倒でもやっつけないでと頼まれているし、まわりのみんなはやる気のない魔王をみて笑っている。


 そんなある日の食堂で勇者たちに出会った。


 「お前が魔王だな、必ず倒してやる!覚悟しておけ」


 いかにも勇者らしい堂々とした体格の騎士二人が、魔王に宣戦布告してきた。


 定食を手に持ってはいるが、見た目のいい金髪と銀髪の騎士で少し尻込みする。


 どっちがどの国の勇者かよくわからないけど、魔剣を支給されて無理やり戦わせるなんて、君たちが魔王のようだね、と思ったがいわないでおいた。


 試合は二カ月後で、その後も毎日何かしらいわれている。


 「どちらも人気と実力があって、勝ち気な性格ですよ」

とローザが教えてくれた。


 「どちらが強いの?」


 「あのレベルで打ち合ったら、決着がつかないか、運で決まるでしょう、魔力はあまりないはずですけど」


 「とにかくこちらが負ければいいんだよね」


 「なかなかプライドの高い騎士だから、そう簡単に納得するかどうか」


 そうか負けるのも難しいな。

 「魔力なしなら絶対に負ける自信があるけど、それじゃ怪我しちゃうよね」


 「魔力より強いことを証明したいのに、魔法を使わないわけにはいかないでしょう」

 どうしよう、剣を振り回したことなんてないのに。


 「私、ケントさんには必要ないと思ってましたけど、騎士科で少し練習しませんか」


 「手伝ってくれる?」


 「もちろんいいですよ」

 ローザ、なんていい子なんだ、二カ月でなんとかなるのかな。


 騎士科で剣を持つところから教えてもらって、毎日素振りをすることになった。

 一週間くらいでやっと、振り回されずに剣を扱えるようになってきたから、次の段階に進む。


 「今日は少しだけ打ち合ってみましょう」

 ローザに言われて、基本通りに剣を打ち合わせてみた。


 ローザの剣は一振りが速くて重い、強い剣士を相手にするから身体強化はしてある。


 でもなんとなくその速さや重さや軌道を魔力で察知しているから、受け流すことができそうだ。

 そうしたら初めて打ち合ったのに、勝てる気がしてきた。


 細かく魔法を入れてみよう、時間を少しだけ歪めて一瞬ローザの動きを止めた後、闇魔法で軽く暗示をかける、負けるのではないかと不安にする波動を出してから、少しローザの動きを制限する。ずるいが魔法を使っていいし、一対一だから何でもできそうだ。


 「ちょっと待って、何かしましたよね?勝てる気がしないんだけど」


 「ごめんね、ちょっと魔法を入れてみた」


 「この急に力が抜ける感じはなんですか?」


 「闇魔法で軽く暗示をかけている、剣士相手に反則だけど」


 「試合中に闇魔法を使えるなんてすごいですね」


 「少し時間を操作するんだ」


 「そんなことできるんですね!規格外ですよ、魔法ですかそれ」


 ローザがあきれている、だから反則だって言ったのに。


 「でもこんな地味な魔法じゃ、使ってるかどうかわからないから納得しないだろう?もっとバーンと魔法を使ってあっさり負けたほうがやられたっぽくない?」


 「そうですね、それなら自爆してみたらどうでしょう」


 「そのほうが簡単だな、そうしよう」

 剣の練習をしてきたけど、いらなくなってしまった。


 一旦そこで話が終わったから、ローザと別れて生徒会室に向かった。


 そうだ、身体強化して自爆したらフィルさんに運んでもらって、エリオットに判定させよう、なんだ簡単。

 炎を出して服もちょっと焦げた感じに演出して、奥に下がったらすぐに転移して逃げよう、完璧だ、にんまり笑ってしまった。


 「生徒会長、ご無事をお祈りしておりますわ」

 後ろにいた、わけのわからない女の子に声をかけられた時、考えながら歩いていたせいで変な笑顔だった。


「わあ、君は誰?」


 改めて女の子をよく見ると、制服の他は全て黒で統一して地味にしているし、何かに取り憑かれているかのような思いつめた暗い表情で、小柄でやせ細った体は病的な感じがする。


 大国から来た勇者よりも怖ろしい気がした。


 「私、未来がみえるんです、大丈夫、勝ちますよ」


 「そ、そう?ありがとう」

 なんだそれ。


 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ