生徒会長
誰がというわけではないが、誰かにみられている。
ふと気づくと誰かがみていた、誰か一人をつきとめても終わらないし、なにか言って解決するものでもないが、どうやって気にしないでいられるのかわからない。
不特定多数の人がいつでもどこでもみている。
なにをみているのだろう?見た目は黒目黒髪の地味なままだ、気にしたくない、だけどはっきりわかるから気になる。
「もう、なんなんだろうー!」
「ケントが悪いんだ、今まで人に隠れてばかりいたから。みんな新しい生徒会長がなにするのか知りたいし、ケントがどんな人なのか興味があるんだよ」
エリオットがおもしろそうに笑う。
「今、ケントさんに関する情報があることないこと混ざったまま流れていて、黒の王子のことなら何でも知りたいっていう人がいるんです」
「そうそう、ケントは黒の王子ってよばれているらしいよ」
「いやぁー、やめて!恥ずかしすぎる」
エリオットが勝ち誇った顔でいうが、ききたくなかった、あまりの衝撃にめまいがしてきた。
続けてローザが説明する。
「憶測で話がひろがっているだけですけど、アレックスとまちがえて異国の王子だとか、すでに魔術師として登録済みで白の塔に所属しているとか、両親が異国の宰相と姫だったとかですね」
自分から全て否定してまわりたいが、それでどうなる?落ち着け、冷静になろう。
「あー、ここにいる人は信じてないよね?」
「ケントの家のことなら、ケントより知ってるかも」
エリオットが言うとフィルさんがうなずく、なんでそんなに知ってるの?
「私は黒の王子っていいと思いますよ」
ローザがわけのわからないことを言う。
「黒の王子ってイメージ通りで素敵ですよ、嫌がっても元々本人がつけるものではないのであきらめてください」
恥ずかしいから嫌なんですけど。
「他のうわさだって、真実を公表してしまっていいんですか?よければ訂正してきますよ、でもお母様のことはうわさ以上の真実になりますから、騒ぎが大きくなるでしょう」
ローザが脅迫するような顔でにらむ。
「こ、これでいいです、すみません」
気にしないことだよ、とフィルさんになぐさめられた、フィルさんもなんとか王子なんだろうか、エリオットは?
納得できないからカーク先生のところに来た。
「ユーリがいろいろ言ってくるから、変な話で来ないで」
と嫌な顔をされたが、はいそうですね、というくらいなら来ていない。
「カーク先生の個人的な意見でいいんですが、魔力量には絶対的な価値があると思いますか?」
「ふむ、他の人とケントに対してでは返事が違ってくるな。
まず現在宰相よりもユーリの方が魔力量があり、さらにケントが一番魔力量がある。
価値があるというのが宰相になることなら、違うね。
戦闘能力を個人で比較するなら、ケントと宰相ではケントの方が強い。わかりやすくいうなら、剣を極めた人と国を滅ぼすほどの力を一対一で戦わせることに意味がないくらいケントは強い。
でもそれをしないからユーリとケントは宰相には勝てない、勝たないようにしているから。
つまり今のところ魔力量に絶対的な価値はない」
「でも国のためには、宰相が交代してもっと視野の広い人になる方がいい。
ユーリは宰相より広い世界からものを考えられるだろう?勘違いではないと思うが」
カーク先生がにやっと笑う、いろんなことに気づいているのか、いないのか。
「だからきみの家族は国の中央にいる人たちから注目されている。
息苦しく思うだろうが、気にするな、ユーリがいるんだから。私はユーリの力を期待している人たちを知っているし、その中の一人だよ」
わー、話がそれて大きくなった、それ以上はききたくない。
「家に帰ります」
「あんまり来ないでね」
ええ、カーク先生の説明の方がびっくりした。
家に帰ると母さんが、ちょっと子守りして、と声をかけてきた。
幼児がうごめく居間にころがると、次々に乗ってくる。
「うおっ、おにいたんだー」
ぱすっ、と火と水が放たれるから吸収する。前より攻撃魔法が早くなっていて危ないから、球体の結界に入れて浮かせよう。
「きゃははっ」
喜んでいたが、しばらくふわふわ動かしているうちに疲れて眠そうになってきた。
結界から出してやると、ごろりと床にころがった、ぐったりして眠りそうだ。
「母さん、ちびたちが眠るよ」
「はいはい」
こんな家を注目してるなんて、変な感じ。




