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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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避暑地のパーティー

 父さんが順番に挨拶してきなさい、というので、エリーとヴィンティに挟まれたままでまわることになった。


 父さん、この二人を連れてって!と心の中で叫んだがわかってもらえないようだ。


 フィルさんのお父さんがよんでいるので、ちょっと怖いけどそこから順番に挨拶することにした。


 「大きくなったな、元気そうでよかった」

 見た目は怖いけど、ジーク様は休学したことを心配してくれていた。

 

 短い挨拶をして順番に偉い人たちに会っていくが、白の塔以外の人はいない。

 それでやっと白の塔のパーティーだと気がついた、だからみんなわたしのことを知っているのだ。


 貴族の集まりだと思っていたけど、みんな白の塔の関係者で魔法使いだとわかったら、ほっとして気が抜けた。


 今まで緊張して疲れたから休憩させてもらおう。


 「エリー、疲れたから休憩してくるよ」


 そう言うとヴィンティが腕から離れてくれた。


 休憩のための部屋があるようなので、そこへ案内してもらおうと廊下に出ると、この白い服が目立つせいなのか急に誰かが話すのをやめた、誰だろう?


 扉を閉めて近くの個室に入ったが、気になる。

 改めてホールの中の人たちのことを考えると、国の要職にある白の塔の人たちが全員集まっている。


 わたしが敵対する側にいるなら、今がチャンスだ。

 ホールごと広範囲に破壊してしまえば、明日から反対勢力がなくなる。

 そう考えるとドキドキする、わたしは本当に今やろうと思えば、全てを破壊することができる。

 むしろ反対勢力にいるなら、今やらなきゃおかしい。

 

 この貴族社会を否定する魔法使いどもを、一掃するチャンスだ、これでまた王制を復活させて貴族のための政治を…


 あ、逆だった、庶民の力で貴族をなくして新しい世界を!なら魅力的なのにな。

 でもわざわざ反対しなくても、もう王様も貴族も飾りのようなものだから、ゆるやかに変化するのを待てばいい、極端な破壊活動をする必要がない。


 このままゆるやかに変化していくなら、それが一番いい。

 自分は何ができると考えたんだろう?


 そんな事を考えたせいか、急に近くで爆発音が響いた、急いで結界を張って待っていると、次々に五回何かが爆発して終わったようだ。


 誰かが殺されたのだろうか?小規模だな、自分がやったなら建物ごと瓦礫の山になっている。


 部屋から出ると廊下に煙が充満していた、犯人らしい黒い影から手がのびて、わたしの腕をつかんだ。


 「止まれ!来るな、人質がどうなってもいいのか?」

 ああ、人質ってこと?このおじさんは貴族かな、味方じゃないようだ。


 ヴィンティがすばやく風を送って、煙が消えた。

 よく見ると太ったおじさんに腕をつかまれている、素手で。あれ、武器持ってないの?


 「きゃー、お兄様!」

 叫んだのはエリーだけだった。


 「なんだケントかよ」

 誰かが言った、悪い?

 全員が犯人を哀れんでいる。


 「この子供がどうなってもいいのか!」


 「ケント、いい加減なんとかしろ!」

 ええ?そこは助けてよ。


 「自分でなんて嫌ですよ」


 「ユーリ!どうなってるんだ?」


 「ケント、こっちへおいで、来れるでしょう、何してるの」


 ああ、太ったおじさんは父さんの球体の結界に入れられて、浮かんでしまった。


 一応このおじさんの主張くらいきいてやろうよ、貴族側の人って何を考えているんだろう。

 いまだにかつての領地や領民の中で自分が支配者側に立てる人間だ、と思っているのだろうか? 


 誰よりもこのまわる世界、つまり星やその外側の広い世界に対してきちんと責任がとれるのか、それとも賞味期限がきれたような古い考え方のままで、害があるだけなのか。


 「毎年この罠にはまる貴族がいるんだ」


 「あのおじさんはどうなるの?」


 「犯罪者だよ、今日やらなくてもいつかやるはずだと思われていた人なんだ」


 これはゆるやかな革命のようだ、少しずつ貴族社会を崩していく。価値が変わったことを理解していないから、流れがわかっていないから、わたしと同じ程度の考えでここを爆破したらいいと思ってしまう。


 時間は流れて先へ進んでしまっていて、後戻りはできない。それを力で戻そうとしたおじさんと力で進めようとしたわたし。どちらもとても危険だ、犯罪者になるのは、ちょっとした考えの違いだけなんだな。

 

 「現状を理解して、常に最善策を進めていくんだよ、失敗したら戦争になるから、その前のその前の手順を間違えないようにするんだ」


 父さんが隣に立っていて、わたしが納得いかないところを説明してくれたけど、それは宰相補佐としてのものだった。


 「感覚的に貴族社会が嫌いなんだ、狭い世界での古い考え方を体が拒否してしまう」


 「それは困ったな、だけど父さんも同じだよ。

 でもそこにしかいられない人もいるから、ゆっくりこちら側へ移動させてあげないとね、それが戦争しないための前の策だよ」


 「あのおじさんはそこから弾き出されて、個人的な感情を優先させてしまった、だから犯罪者なの?」


 「元々少しゆがんた人だったけど、それでも大きな流れにのせてあげられなかったから失敗例だ、こちらのやり方は彼にとってまずいものだったのだろうね。

 でもケントを人質にとるなんて、個人的な感情を優先させていいなら、全く許せる部分なんてないよ」


 わあ、空気が凍る。子供を傷つけようとしたことはたしかに犯罪者だけど、父さんの怒りの方向が突き抜けていて、氷漬けにしそうな勢いだ。


 「ユーリ、ケントより強い人間はこの中にはいないから、ケントに傷はつかないし、もう捕まったから怒るのをやめなさい」


 アレックスのお父さんのユーシス様が父さんに説明してくれている、すみません、ご迷惑をおかけします。

 ユーシス様の別荘が凍ってしまったら大変だ。




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