別荘のパーティー準備
「そんなところへ着て行く服も持ってないよ」
と文句を言ってしまったために、エリーと服を買いに行くことになってしまった。
今まで双子の間に入るのが難しかったから、あえて関わらなくて一緒にいる事もなかったが、同じ部屋に住むようになって初めて、双子でも二人は別の性格なのだと知った。
ショーンの性格は、わたしと父さんの性格が半々くらいで、エリーは父さんより母さんに近いかもしれない。
そのショーンとは、毎日夜寝る前に話をするようになった、兄弟だし性格も似ていて話しやすい。
この特殊な家族についていろいろ考えるところがあって、いつも二人で困ったことを話しているが、
「本当は母さんの手伝いをしてみたかったけど、兄さんの邪魔になる気がして言い出せなかったんだ」
とショーンにいわれて驚いた。
そんなつもりはないのに、自分が独占していたせいでショーンが困っていることがわかったから、夏の農作業くらいいくらでもやってほしい、と言うと、
「じゃあ今年は母さんと農作業するよ、兄さんはやらなくていいから」
とショーンがうれしそうに答えた。
喜んでくれてよかった、それでわたしはこの夏、都合よくパーティーに行けるようになった。
ショーンとは同じ部屋になったおかげで最近は誰よりも仲がいいし、何でも話せる大切な弟だ、農作業は交代の時期だったと思うことにした。
エリーと服を買いに行く日の朝。
「ちびっ子たちの面倒もみてあげてね、行ってきます」
とショーンにいって、笑顔で手を振って出掛けた。
それでどうしてこうなったのだろう?
エリーとわたしが服を買うだけのはずだったが、その店にはフィルさんとローザ、アレックスにエリオットとさらにハリエットさんがいた。
「だめ!ケントは髪が黒いのに真っ黒な服じゃ全然目立たないわ」
店には、ハリエットさんのだめ出しの声が響いている。
「フィルも、自分が一番輝いていると思って似合う服を持ってらっしゃい」
この店の服は無駄に装飾がついていて、どうしても地味にしてしまいたくなるのだが、それがよくないらしい。
ハリエットさんはわたしとフィルさんを着せ替え人形だと思っているのか、何度でも着替えさせるから疲れる。
エリオットとアレックスはもう自分の服を用意してあるから、ローザとエリーの服を選んでいる。
むこうは和やかに問題なく選んでいるようだが、こっちはうまくいかない。
なぜかどの親も生徒会長だからかハリエットさんを信用していて、ハリエットさんにお金を預けて、ハリエットさんの許可がないと服を買えないことになっている。
そのせいでわたしとフィルさんは、何回着替えても終わりがこない気がした、女の子っていつもこうなのかな?
その結果、袖にひらひらしたものが付いた紫の服をフィルさんが着て、わたしはグレーといわれたがほとんど白い服を着ている、思いつくかぎりの全てのところにしてある金色の刺繍のせいで、もう何色とか関係ないけど。
わたしとフィルさんはお互いの服をみて、力なく笑った、紫のひらひらしたのが哀れ、人のことはいえないが。
「それでケントはどこのパーティーに行くの?」
「知らないよ、エリーに無理やり連れられてどこかへ行くらしい」
「へえ、それたぶんアレックスの家の別荘だよ、そうかケントもね、他の人に知らせなくちゃ、楽しみにしてるよ」
フィルさん知らせないで、こっそりついて行くだけだから。
それにしてもこんなに派手な衣装の人たちが集まったら、アレックスの家の別荘ってどんなふうになるんだろう?
当日はかなり恥ずかしかったが、ハリエットさんに選んでもらった服を着て、父さんとエリーとヴィンティとわたしの四人で行くことになった。父さんは普通の出勤するような服を着ているから、ちょっとだまされた気がしている。
エリーとヴィンティは双子のように、お揃いの青いドレスを着て、髪型も髪飾りも同じで可愛らしいが、ヴィンティは普通の人にはみえないようにしているから、わたしたち以外の誰にもわかってもらえない。
「せっかく可愛くしたのに、残念だね」
と言うと
「ケントがわかってくれたからいいわ」
と笑っていたから、いいのかな。
アレックスの家の別荘に転移してきた。
大きな城のような別荘にびっくりしていると、わたしたちを出迎えてくれるために並んでいる、アレックスたち五人の兄弟が見えた。
「ふふっ、きれいな顔で五人が並んでいるのはすごいだろう?」
と父さんが笑っている前で、フィルさんがアレックスを見て笑っていた。
本当に美しい兄弟だから感心する人がほとんどだけど、普段のアレックスを知っていると真面目な顔で立っているアレックスがすごくおかしいのだ。
エリオットとフィルさんに会って少しアレックスの話をしていると、こちらを見て笑っている人がいる、エリオットのお母さんとフィルさんのお父さんだ。
三人で白の塔のうわさになった事を思いだして、離れることにした。
「またケントだけ逃れようとしてる」
と、フィルさんの声がきこえたが気にしない。
やっと一人になったと思ったら、エリーとヴィンティに腕をつかまれた。
「お兄様の場所はここですわ」
エリーがそう言うと、ヴィンティが逃さないようにしっかり腕をつかんできた。
これはこれで目立つ、精霊が見えている父さんがおもしろそうに笑っている。




