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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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ヴィンティ

少し書きかえました

 「ああ、精霊にさらわれないように守ってくださいってお願いしたことはあるよ、他に頼める人を思いつかなかったから」


 「それだけ?そのための指輪をユーリからもらっただろう、それ以上は必要ないと思わなかったの?」


 「父さんに指輪をもらう前だよ、桜の木の下に魔力を入れた石を置いた、重しが必要だと思って」


 「それはケントの勘違いだ、それから?」


 「青い石のペンダントに魔力を入れて、風の精霊にあげた、何かまずいことになってる?」


 「なってるよ。


 それは精霊にとってケントと契約した、というはっきりした証拠だよ、どうする?二体の精霊の主だ。


 ケントが死ぬか精霊が死ぬまで続くよ、私はケントがこれ以上の力を持つことがいい事だとは思えない、まだ余るほどの力を扱いきれていないからね、でももう遅い」


 「どうしたらいいの?」


 「契約したからには自分が精霊の主であると自覚することと、会ったり使役したりして交流を一生続けることが必要だ」

という、かなり面倒なことになってしまった。


 イーリと一緒に桜の木の精霊に会いに行った。

 今まで放置してごめんなさい、と謝ってから正式に契約しますと宣言した。


 元々サクラとよんでいた精霊は、優しいお母さんのような姿で困った子供の要求をのむように受け入れてくれた、特に怒っている感じでもなかった。


 古い木の精霊でこのあたりの精霊の長老だから、他の精霊たちの取りまとめの係りみたいになっているそうだ。


 わたしのことなどその仕事の一部でしかないようで、がんばってください、と声をかけたら笑っていた。


 次に会いに行った風の精霊は少しすねていた。

 こちらも正式に契約する宣言をしたが、全く相手にされなかったと苦情をいわれたので、本当にすみませんと謝った。


 木の精霊が特別気が長いだけで、普通はこうなって当然らしい。風を扱うときはいつでもよんでほしい、と念話でいわれた。


 「名前をつけてあげなさい、桜の精霊はサクラとよんでいたけど彼女には名前がない」


 「風の精霊だから…じゃあヴィンティでどうかな」

 うなずいたからいいらしい。

 ヴィンティは、この島の中では後からやって来た若い精霊になるそうだ。


 「私はケントと一緒にいたいから、ケントの部屋に住むわ」

とヴィンティにいわれて、わたしとイーリの顔が引きつった。


 「若い女の子と一緒の部屋なんて無理!お願いだからやめて」


 「ユーリに相談しないと」

 みんなで父さんのところへ行って、相談することにした。 

 イーリとわたしとヴィンティが並んで歩いているのがおもしろいようで、妖精たちがころころと回りながらついてくる。


 家の扉で妖精たちが入らないように防いでいると、父さんの声がする。


 「ケント、勝手に精霊と契約して父さんが怒らないと思うか」

 父さんから凍るような空気が発生していた。

 しばらく小言が続き、うなだれてきいたあとで、ヴィンティが一緒に住みたいというのでどうするか考えた。


 やはりわたしと同じ部屋にはできないので、わたしとショーンで一部屋、ヴィンティとエリーで一部屋使うことになった。

 学院にも一緒に行きたがったが、やめてもらった、精霊はどうみても精霊だから連れて歩けない。


 わたしがいないときは、サクラにヴィンティをお願いするというおかしなことになったが、元々この島の精霊や妖精はサクラのいうことをよくきくから問題ないそうだ。

 よかった、サクラさんには感謝している。


 「ケント、女の子にやたらとプレゼントをあげてはいけないよ」

 イーリにまで小言をいわれた。 

 うっかり忘れていたが、テストがあるので長い話をしていられない、まだなにか言いたそうだったけど失礼して、部屋に戻って閉じこもった。


 三日間、とにかく暗記してテストの日になった。

 実技は簡単な傷薬を作るものですぐに終わったが、筆記試験はまあまあかな、結果が出ないとわからない。


 「ケント、どうだった?」


 「エリオットより悪いよ」

 成績のいいエリオットと同じくらいになるようにがんばってきたが、今回はどう考えてもエリオットより勉強していない。


 一人でいろいろ反省していると、教室内がざわざわしてきた。


 「やった!夏休みだ」


 誰が叫んだ後、わー!とみんなが喜んで声をあげたから、夏休みになるんだったなとぼんやり思った、それどころじゃなかったから実感がない。


 「ケントさんはどちらのパーティーに出席なさいますの?」

 突然誰かにきかれてどういうことかと尋ねたら、貴族の避暑地での事らしい。まわりの人たちの会話がみんな避暑地の話でびっくりしている、このクラスはどうなっているんだろう?


 「いえ、全く予定はありませんよ」

 絶対に行きません、夏は母さんの野菜の収穫があるから、毎年農作業をしている、たくさん収穫して販売しなくちゃ。


 父さんはエリーとショーンを連れて、毎年避暑地のパーティーに行っていたらしい。


 「お兄様、私と一緒にパーティーに行ってほしいです!」

とエリーに茶の間で宣言されてから、初めて知った。


 その時すぐ後ろにいるヴィンティからものすごい圧力がかかっていて、目力が怖かった。


 操られるように、わかった、と返事をしたが全く行く気にならない。




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