学院の日常
一カ月も休学してしまったが、家族に力をもらった指輪をつけて学院に戻って来た。
久しぶりだから慣れるまで大変だ、アレックスが騎士科に転科したがまだいたのだ、帰ってよ。
そして今、騎士科の三年生の先輩方に囲まれている。
「そこのチビ、怪我したくなかったらどいてろ、邪魔だ!」
そこのチビであるわたしは体が弱いので、後方に避難した、一カ月も病気で休学したのだから。
「ケント、何やってるの?一番の戦力でしょ」
アレックス、余計な事を言わないで。
そんなアレックスだけど元々力のある魔法騎士で、大国③では学生だけどギルドの冒険者と共に、発生し続ける魔物を狩っていたらしい。
毎日冒険者と砂漠へ遠征していたが、N国は平和で普通の学院生活が送れるから女の子と遊んでいてもいい、と勘違いして留学してきたそうだ、だからあの変な行動だったのだ、しかしまだ阿呆は治っていない。
わざわざ三年生とケンカして、世話役を前面に押し出すなんて。
「ケント、チームだろう?」
うるさいから、アレックスを球体の結界に入れて浮かせた、強化してあって丸いから動けない、子供のころ父さんによく入れられたものだ。
「先輩、申し訳ないです、好きなだけ攻撃してください、多分みんなこいつが悪いんです」
とりあえず気がすむまで攻撃してもらうことにした、アレックスはどうなっても知らない、自分でなんとかするだろう。
火の玉、水の玉、氷や石が放たれるが、さすがに剣で斬ろうとする人はいなかった、結界はかなり強化してあるから先輩が怪我をするかもしれなかったが、このままなら大丈夫だろう、治癒魔法も使えるし。
爆発したような煙が上がり続けてまわりが見えなくなったが、二十分くらいで魔力が切れそうになって、あきらめてくれたようだ。
「すみませんでした」
頭を下げて謝っていると、先輩たちは帰って行った。
アレックスは出すと面倒だから浮かせたまま移動する、騎士科の練習場から生徒会室まで運んだ。
「どうしてこうなった?」
アレックスが囲まれた理由はまだきいていなかった。
「魔法の使えない騎士は、貴族で威張っていても冒険者以下だって」
「言ったんだな?あーもう!貴族なんて放っておけよ、この国はまだ王様がいるし貴族もいるんだから無駄に煽るな、アレックスの家は元々貴族だろう」
「だから威張っているだけなんて許せない」
「貴族に絡んでもめ事をおこすと、生徒会が迷惑するんだよ、わたしは今体が弱いんだ、余計な仕事を増やすな」
「あれ?ケントは体が弱かったっけ?」
「そういう事になっている、くわしくきくなよ」
なんだそれは?と文句をいわれながらフィルさんのところに来た。
「ケント、ご苦労様」
フィルさんが笑っている、これでやっと日常に戻る、嫌々参加した生徒会だがこのメンバーは嫌いじゃない。
最近はフィルさんとエリオットとわたし、そしてやっとエリオットと仲良くなったアレックスが加わって四人でいることが多い。
まだエリオットとアレックスはライバルらしいが、何の?
そこへローザがお茶をいれて持ってきてくれた。
「ケントさん、エリーがやっとお兄様と触れ合える、と喜んでましたよ、よかったですね」
その変な言い方やめてください。
「エリーはずっとお兄様が大好きでしたから、とてもうれしいんですよ」
「あの子は今ちょっとおかしいから、あんまり話をきかないでね、こっちは急に絡んできて困ってるとこだから」
「ケント、妹は大切にしないと後がこわいぞ」
「お兄様、余計な事を言わないで」
そんなローザをエリオットとアレックスがきらきらした目で見つめている、が気にしないでおこう、フィルさんもあえて関わらないようだ。
ダンスパーティーでローザは主役だった、きれいに踊る姿をみてない人はいなかっただろう。
お茶を飲んだ後はすぐに帰宅した、テストが近いのだ。今までは余裕があったけど、一カ月休学してからすぐのテストではあせる。ずるいかもしれないが、イーリに付き合ってもらう約束をしてある、早く帰って勉強しなくちゃ、緊急事態だ。
家に帰り、イーリの書斎に来た。
「ごめんね、忙しいのに、おじゃまします」
「いいよ、ケントに用事があったし、じゃ始めるよ」
エルフで学者のイーリの書斎にはたくさんの資料が置かれているし、薬学の知識も研究者並みにある。
一カ月分の授業内容をわかりやすく教えてくれるし、さらにくわしい事まですらすら答えてくれるからありがたい。
後は暗記するだけになったから、お礼をいって席を立った。
「待って、ケントにききたい事があるんだ、正直に答えてくれ」
何だろう、イーリが知らない事?
「ケントは精霊と契約したね?しかも二体だ、覚えているかな、風と木の精霊だよ」
契約した?




