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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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図書館の三人組

 ああ、フィルさんの家か、出されたあやしい色の飲み物はおいしかった。

 

 「また一人で帰ったのは許せないが、今日は助かったよ、ありがとう」

 フィルさんが素直に感謝するから、変な感じ。


 「フィルさんは誤解しているようだからいっておくけど、わたしはいつもどこでも待遇がいいわけじゃないよ、貴族じゃないし、魔力量は制御されているから軽く扱われている、それでやっと普通にできているだけだよ」


 「なぜ魔術学校でトップに立たなかった?誰もがあこがれている所に立てるのに。魔力量の制御なんてきいたことがない、力を示しておかないと貴族に見下されるだろう?」


 「そもそも一番重要な事が違っている、貴族や魔術学校のトップに立つなんて大切ことじゃないよ。

 一番大切なのは、自然な循環をしたままでこの世界が回転することなんだ、この世界もこの世界の基準で回る時間も、この世界の上に乗って成長する生物も発生するエネルギーもすべてこの星の中で循環して、高速で回転する乗り物に乗り続けている。

 この大量の魔力はうまく循環させるためにあるんだ、この世界はいつだってくるくる回る中にいる、大きな回転が止まれば全てが終わる。

 不思議な事だと誰もいわないけど、わたしは回る不思議な世界で生きている、それをまもらないと」


 「それは神の領域だ、この世界をどうにかできるのは神だけだろう?」


 「じゃあ何のためにこの大きな魔力がわたしの中にあるんだ?フィルさんの魔力は何のためにある?

 神の力はもちろん働いているさ、でも大きな力を持った人の心が全てこの世界をうまく循環させる事に向かったら、強い力が働くからじゃないかな、ここを壊さないための力だ」

 わー、なんだか自白剤みたいな力が働いている!早く止めなきゃ。


 「それは神の思し召しなのか?何を知っているんだ、そんな簡単な説明じゃよくわからないよ、もっとくわしい説明をしてくれ、私の力は何のためにここにあるんだ?」

 やっと自白剤の効果が切れた。


 「あー、そんな考え方の人が身近にいるって事だよ、わたしは植物やその環境について考えるのが好きなんだ、くるくる回るものにも興味があるのかな」

 そんな変な説明で納得してくれる人ではなかった、うるさいくらい隠している事を話させようとしてくる。


 「もうおそい時間だから、また明日ね」


 「わかった」


 翌日から図書館にフィルさんが来るようになり、恨んでいたことなんてあったっけ?と言い放ち、エリオットと三人でいるようになった。


 なんでわたしのいる場所がいつもわかるんだ?ときくと、図書館の定位置にしかいないじゃないか、といわれたので考えてみるとそのとおりだった。


 「ケントは貴族じゃないっていうけど、ユーリ宰相補佐はこの国で二番目に重要な人だよ、双子は知ってたからケントだけが知らないんだろう」

 なんだって!母さんもよく知らないよ、この国はそんな重要な地位がいつもいない人でいいのか?


 「双子はケントが好きだけど、生まれたときから重要な人だから簡単に関わってはいけない、と思っているよ、エリーなんてケントが好きすぎていつも写真を持ち歩いている」

  

 「わー、そんな決まりはないよ、しかもその恥ずかしい妹はなに?本当なのか」

 嘘ではなさそうなところが怖い、わたしのまわりの小さな世界は、わたしが思っていたようには回っていなかったようだ。


 お互いの認識の違いがたくさんあって、毎日図書館の定位置で話す事が尽きない。

 毎日三人でいたがフィルさんとエリオットがいるせいで、図書館の利用者が騒いで困る、と司書から苦情がきた、わたしたちは簡単に仕切られた個室に防音の結界を張って話していたのに、隣の読書室の静かな所に集まって個室をみていた女の子たちが騒いでしまった。


 王城の図書館だから白の塔にも連絡がいって、一時期白の塔の話題になったらしい、仲のいい三人組は図書館で女の子に騒がれて、司書に怒られたと。


 「母さん違う、フィルさんとエリオットが女の子に騒がれていて、わたしじゃない!」


 「まあ、ケントも?お友だちがたくさんできたのね、よかったわ」

 だから違う!


 一緒にうわさされたら嫌だから、しばらく逃げようとしたがハリエットさんとリリーさんに捕まった、二人はこの状況がおもしろいようだ。


 「本当にこの三人組は、白の塔でうわさになるなんて偉くなったものねー」

 「私たちはまだ話題になっていなかったのに、先に名が知れ渡ったのね、すごいじゃない?」


 そう言いながら、ハリエットさんは三人の頭をなでまわし、リリーさんは三人の背中をぽんぽんたたいた。


 「姉さんたちのペットにフィルさんも加わった儀式みたいで、ぞっとした」


 わたしとフィルさんはそんな事いうエリオットにぞっとする。







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