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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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生徒会

 騎士科で出会った女の子、ローザさんは優秀な生徒で、お父さんに魔術科で助手として働かされていることが伝わっていた。


 「ケントはまだ子供なのに働かせるなんてひどいね!カークには反論できないくらい説明してあるから、今日から心配せずに楽しく学校へ行ってね」


 お父さんの反論できないくらいの説明が怖くて、家から出ると少しカーク先生が心配になった。


 王立学院に着くと、ドロシア先生の部屋によばれて新しい制服を渡された。


 「ユーリが怒ると怖いのね、ケントにその制服をプレゼントするわ、魔術科にはもう行かなくてもいいけど、他に何か勉強したいことがあるかしら?」

 お父さんは怒ると怖いんですよ、いつも正論で言い返せないから従うしかない、え、魔術科に行かなくてもいいの?


 「薬学科はどう?将来白の塔に入りそうな子が多いのよ、お友だちもいるでしょう」


 「ああ、そうですね、薬学科にします」

 そんな理由で簡単に入れる所ではない気がするが、薬学科に途中入学することになった。

 

 薬学科に案内されて、途中入学だと紹介された後、エリオットと一緒に授業を受けられるように隣の席にしてもらった。

 その時は普通に案内されただけで気付かなかったが、これがかなりの特別待遇になると後から知った。


 お昼に食堂で、エリオットといつものように隅に座って定食を食べていると、誰かが大声で話し始めた。


 「魔術科の助手の先生が、役に立たないから薬学科の生徒になったらしいぞ」


 「ああ、知ってる、魔術学校も出ていないのに入学した、偉い人の息子だってさ、今日から薬学科に来た人だ」


 「魔術科じゃ先生ってよばれてたのにな、そんな人だったなんてがっかりだ」

 わたしのことのようだ。


 「ケント、違うって怒鳴ってやろうか」

 エリオットが怒りだすからびっくりする。


 「やめて、評判が悪いのはいつものことだ、どうしてもわたしの評判は悪くなるんだから気にしないで、多分こういう運命なんだと思うよ」

 小学校のときも、なんとかしようとしたことが全て裏目に出て、不思議なくらいわたしの評判は悪くなったのだ。


 「かわいそうに、これからは私がついているよ、心配しないで、勉強も教えてあげるし…」

 最初はありがたくエリオットの話をきいていたが、面倒になって適当に返事をしていた。


 「そう、じゃあ今日の夕方さっそくサロンに行こうね」

 そうしたら、知らないうちに何かが決まった、サロン?


 夕方になり少し日が陰ってきた、騎士科の練習場を通り森の中に入るから大丈夫かな、と思いながらエリオットについて行くと、そこには大きな温室と古い物見櫓があった。


 森の中は立ち入り禁止だからほとんどの生徒が知らない場所になるけど、ここが現在の生徒会の役員室になっていた。

 温室の扉を開けると、植物園の中のようにたくさんの花が咲いていて、強い花の香りがする。

 花が咲き乱れる温室の奥にある、薔薇のように真っ赤なソファに白金色のくせ毛をうねうねと広げて座り、お茶を飲んでいる女生徒が生徒会長のハリエットさんだと教えてもらった。ハリエットさんの隣に座っているのは、長い黒髪で銀縁の眼鏡をかけた副会長のリリーさんだ、座っている姿は二人ともお人形のように美しい。


 「あれは私の姉だ、ケントはろくなこと言わないから、短い返事だけして長くしゃべるなよ」

 エリオットが助言してくれた。双子の兄だからここに入る資格があると思われてしまったらしい、向かい側にある椅子をすすめられたので座った。


 「エリオットのお友だちのケントさんね、初めまして、ユーリ宰相補佐のご子息なのね、ここは白の塔の関係者が多いから安心なさって」

 はい、とだけ答えた、ハリエットさんとエリオットのお母さんは白の塔の魔女ヨーカ様だそうだ。

 リリーさんは白の大魔女のお孫さんで、ローザさんとその兄のフィルさんはジーク様のお子様、その他に知らない人の子供だと、十人くらいの人を紹介された。


 はあ、とか気を抜くとへい、みたいな短い返事をしていたら、後ろからエリオットに背中を強く押されたのでよろけた。


 「なにするんだ!」


 「うまく声が出ないのかと思って」

 しゃべるなって言ったくせに!でもエリオットがにらむから引き下がる。


 その後、温室の中に置かれたガーデンテーブルに案内されてお茶とお菓子をいただいた、繊細な模様のティーカップに戸惑っていると、工芸品のような美しい形のお菓子がだされて困った。

 こんな所にはもう来たくないな、と思ったので、かじっていいのかわからないお菓子を口に入れた後、一気にお茶を飲んでもぐもぐしたまま退散した。


 失礼したことはわかっていたから、もう二度とよばれないならそれでいいし、これ以上落ちる評判もないから悪くいわれてもいいと思った。


 生徒会のことはすっかり忘れて日常に戻ると、薬学科で生徒として薬草の勉強をするのが楽しくなっていた、簡単に決めたけど、これしかないと思うくらい自分に合っている。

 今までこんなに勉強したことがないくらい、毎日熱心に薬草のことをイーリにきいたし、お母さんの薬草畑で採集を手伝ったりしていると、こんな仕事をする将来の自分も悪くないなんてことをいろいろ考えていた。


 だからある日突然、エリオットが誇らしげに報告してきたときはびっくりした。


 「ケント、生徒会の役員に決まったよ」

 なんで?





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