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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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魔術科

 帰り道はエリオットとその友だちのステファンに、腕をつかまれて連行されている。今日を逃したら話す機会がないと思っているようだ、いつも教室にいるのに。


 「ケントのお父さんは白の塔にいるだろう?うちのお母さんも白の塔にいるから、ずっと気になっていたんだ。うちは貴族じゃないからこの学校にいるけど、宰相補佐の息子がなんでここにいるの?」

 お父さんの知り合いの子なのか、面倒だな。


 「最初はなんとなく気になっただけだけど、今はものすごく君に興味があるよ、魔力があるだけじゃなくておもしろいものがついているね、あれって妖精なの?」

 当たりだよ、絶対に認めないけど。


 「それだけじゃない、ケントは魔術学校を卒業してないのに、王立学院の魔術科に入学が決まっている特別な子だってうわさになってるよ」


 「うわさになってるって?」


 「魔術学校でうわさになっていて、みんなどんな子か知りたがっているんだ、ねえ、友だちにならない?」  


 「嫌がってもついてくるんでしょう?いろいろしつこく質問しないならいいよ」


 「やっぱり教えられないことがあるんだね?おもしろいよー」

 こっちはおもしろくないよー、無理やりエリオットが友だちになった。


 エリオットはクラスが違うからか、教室でやたらと魔法の話をするような子ではなかった。王城の図書館で一緒に本を読んだり、暇をつぶすのに付き合ってくれる親切な友だちになってくれた。


 「お友だちができてよかったわね」

とお母さんにいわれると最初は微妙な気持ちがしたが、だんだん慣れてきた。


 秋の遠足が終わりエリオットにも慣れて、落ち着いた日々を過ごしているうちに寒い冬になった。


 いよいよ受験が近くなり、まわりの人たちがそわそわしはじめた頃に、王立学院を希望する人を集めた説明会があった。薬学科、医学科、騎士科、魔術科の教師が来てくれて、学校の説明をしたあとで、各科への質問に答えてくれる。


 説明会には二十名くらいが参加したが、それぞれの専門科に分かれてみると魔術科は一人だけで、わたしのために教師が来てくれていた。

 

 「ケントくん、こんにちはカークです、今日会えるのを楽しみにしてましたよ」

 黙っていたら怖い魔術師に見えたけど、にこにこと笑う優しそうな先生だ。

 

 「それでは魔力量を測定します」

 ふふふ、と不気味に笑いながら測定器を設置すると、いきなり手をつかまれて測定器に押し付けられた。


 「やっぱり測定できませんね、ユーリの子供だ、ふふふ、君はもう合格です、とても優秀な生徒になるでしょう、何か質問はあるかな」


 「もう合格したんですか?入学試験を受けてなくてですか?」


 「ああ、別に受けなくてもいいでしょう、それで何か困ったことでもあるの?」


 「え?」

 それではまたね、とカーク先生はあっさり帰って行った。


 それで入学試験なしに王立学院に入学したらしい。

 意味不明な合格通知と入学案内が届いたから、どんな権力を使ったのかお母さんにきいてみた。


 「お父さんが裏口入学をお願いしたかもしれないの?」

 お母さんはびっくりしているが、お父さんか宰相様ならあり得るかな?それとも他の人たちのせい?よくわからないままになっている。


 いつものように小学校に通って、図書館でエリオットに会ったりしているうちに卒業式が終わった。


 だからよくわからないまま他に行く所もないから、毎日魔術科の魔法陣研究室に来ている。入学式にもよばれていないから、なんとなくここにいる。


 自分で勝手に考えていただけなんだけど、制服を着て同級生と一緒に入学式をして、魔術科に案内されて授業を受ける気がしていた。そんなこと誰にもいわれてはいないから、違うことになっていても仕方ないのかな?


 わたしはカーク先生の助手として、同級生になるはずだった人たちの授業を手伝っている。本当は一緒に椅子に座っているはずだった、と思っているのはわたしだけだ。

 

 どういうことなのか気になってカーク先生にきいてみたら、普通の生徒ではなくて、助手をしながらの研究生という扱いにしたそうだ、助手の手当てももらえるし授業料もいらない親切な扱いにしてくれたという。


 「ケントに何を教えたらいいのかわからないよ、君も特に質問しなかったでしょう?魔術学校からの資料もないから、こっちもどうしたらいいのかと悩んだんだよ、気に入らないの?」

 いいえ、すみませんというしかないでしょう。なんだか納得できないけど、友だちとおしゃべりしながら実験したり、楽しく遊んだりすることはなくなった。元から友だちはいないし、そんなに楽しい毎日になるはずではなかったが。


 「先生、これ壊れてますけど」

 同級生になるはずの人になぜだか先生とよばれ、備品が壊れたのを直している。

 

 「先生!床にこぼれました」

 貴族のおぼっちゃまは自分で床を拭かない。先生と名前のついた雑用係だと思っているでしょう?


 「先生、炎が消えません」

 もう先生ってよばないで、自分でやってよ。

 




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