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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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妖精使い

 とりあえず妖精は手のひらにのせて歩く。

「ねえ、薬草がある場所を知ってる?」


 妖精にきくのはずるいけど、一人でたくさん探すのは大変だから許してほしい。手の上にいる妖精が案内してくれたのは、脇道をかなり入った所にある日当たりのいい斜面で、そこだけびっくりするくらいの花畑になっていた、いろんな薬草がびっしり生えている。


 「ありがとう、これだけあれば十分だよ」

 花畑の中に入って花を摘んでいると、妖精も喜んでくるくる舞っている、かわいい。四人分必要だから、十種類の薬草を四本ずつ摘む。


 「誰だ?何をしている!」

 急に声をかけられてびっくりした、誰かが木の間から現れた。


 「お前は誰だ?」

 妖精とわたしと薬草を見ながら、きれいな銀色の髪のエルフの男性がきいてきた。


 (イーリ大変だ、森の中でエルフに会っちゃった)


 (ケントか、王都の森の中だな?私が知っている薬師の男だと思う、大丈夫だ)

 イーリの知り合いなのかな?


 「ケントです」

 (ケントだよー)


 「それで、その妖精はどうしたんだ?なぜなついている、こんな子供が妖精使いか?あっ!」

 どうしたのかな。


 「ユーリの息子だな?」

 そのまま動きが止まったから、誰かと念話をしているようだ、イーリ?

 それならば今のうちに逃げよう、後ろを振り返らずに全力で走っていくと見おぼえのある道に出た、追ってはこないようだ。


 元の道に戻って、後ろを歩いていた人たちの間に入り、湖までゆっくり歩いていく。妖精は無理やりポケットの中に閉じ込めたけど、出てこないでね。


 (ケントー、出せー、暑い!)

 嫌がっていうことをきいてくれない、しばらくそのまま歩いていたけどわめいてうるさいから、仕方なくまた脇道に入って、かなり奥まで行ってから放してやった、勝手についてきたのに文句を言いながら飛んで行く。


 (ケントー、暑かったぞー)


 「もうついてくるなよー!」

 うるさいのがいなくなってほっとしたと思ったら、すぐ後ろに誰かがいた!


 「ケントくん」


 「わあー!だっ誰なの?」

 びっくりした、なんていう驚きではない、後ずさって尻もちをついたまましばらく立てない。  


 (ケントー、あほー)

 お前のせいだろう。


 「ケントくん、あれは何?」

 びっくりした顔でこちらを見ているのは、わたしの頭の中からは名前が出てこない他のクラスの誰かだ。わたしの名前を知っていて、ひょろりと細くて小さい男の子で賢そうな顔をしている、誰だろう?


 「何と話していたの?」


 「何?何が?」

 動揺して返事がおかしくなった。


 「君は魔法使いでしょう、でもあれは何?」


 「さ、さあ」

 とぼけて歩きだしたが、見逃してくれない。


 「君と話す機会をうかがっていたんだ、私だけではなくて王立学院を受験する仲間はみんな君と話したがっているよ」

 そうですか、あなたは誰?とはききにくい。


 「王立学院の一般の入試はあるけど、貴族が優先されるだろう?どれくらいのレベルなら入学できるのか心配らしいよ」


 「ごめん、そういう知識はないんだ、役に立たないよ」


 「そうなんだ、でも君は変わってるね、魔術学校にも入学できただろう?この学校にいるなんて不利じゃないの?」


 「不利とは思わないよ」


 「みんな少しでも有利に受験しようと努力しているけどね、ところでさ、さっきの何?」

 にっこり笑う、受験と関係ないのにまだ見逃してくれない。


 「エリオットー、どこにいるんだー」


 「ここだよー」

 友だちが迎えにきてくれた、エリオットくんか。


 「じゃあまたね」

 もう話したくないからさっきより速く走って逃げた、今日一日逃げきれるだろうか?

 

 急斜面の上り坂を走っていくと、見晴らしのいい高台に出た。そこが目的地の湖のほとりで、到着したら木かげでお昼休みになるみたいだ。もう多くの人たちが大きな木の下で休憩している。

 でもわたしは誰にも会いたくないから、大木の後ろの低木の茂みに入り、軽く穴を掘って草を敷いて体を隠してみた。うまく隠れるし、ちょうどよく埋まっていい感じになったから、上に結界を張って少し眠った。


 少しうとうとしただけで長く眠っていないはずなのに、目が覚めると上が暗くなっていた。まだ夜じゃないでしょう、よく見るとお尻がのっているみたいだ、考えなしにうっかり結界を解除すると上から誰かが降ってきた、重い。


 「痛いな、どいてよ」


 「探してやっと見つけたから、起きるのを待ってた」

 

 わー、見つかっちゃった、わたしの上にのってにっこり笑ったのは、エリオットだった。






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