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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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魔術学校

 「今度からケントを学校へ送るよ、心配しないで」

 そう言うと、お父さんがぎゅっと抱きしめてくれた。ちょっとうっとうしいけど、お父さんにもっと甘えたほうがいいといわれたばかりだから、うっかりそれを受け入れてしまった。


 翌朝いつものように朝食をとって、まだよく目が覚めていないちびたちが泣いたり大声でわめいたりしている中で仕度をして、双子と一緒に学校へ向かおうとしていると、お父さんがわたしの手を握ってきた。びっくりして振り返ると


 「今日から城内へは行かないよ」

という。どうするのかと思っているうちに、魔術学校へ転移してしまった。


 宰相様はわたしが入る予定で作った学校だといっていたが、お揃いの貴族みたいな制服を着た子供たちが、きらびやかな彫刻付きの校舎に入って行くのを見ると、場違いで居たたまれない。


 校門は魔法陣に転移してくる親子連れでごった返している。貴族みたいな先生が立っていてお父さんと双子に挨拶しているから、逃げたくなって門を出るとお父さんが走って来た。


 「ケント、一人で行っちゃだめだよ、あぶないから」


 嫌だけどまた手をつながれてしまったので、まわりの人たちがじろじろとこちらを見ている中で、お父さんの知り合いが貴族風の挨拶をしてくる拷問に耐えながら、小学校へ向かった。


 魔術学校と小学校はわりと近いが、お父さんと手をつないで登校する小学生はいない。これはうまく甘えられなかった罰みたいで恥ずかしい。

 お父さんは毎日笑顔で送ってくれるが、呪いたくもなるだろう、一度うっかり攻撃したが笑顔で消されてしまった。


 小学校では、王城に勤務している父親と一緒に登校するようになったわたしに興味があるようで、魔法使いに対する警戒がなくなった。


 ここにきてやっと普通に話してくれる、と喜んでいたが


 「ケント、王子に会わせろよ」

という無茶振りから、王子様にプレゼントを渡してほしいというお願いや、王城にある宿舎に行きたいとか、王宮に入りたいなど、急に今まで話したこともない人たちが集まってきて、下心のあるお友だちになってくれるみたいだ。


 王子様へは先生が子供たちの手紙を届けるというので、お礼の手紙を書くことになった。

 何と書いていいかわからないのはわたしだけ?父がご迷惑をおかけしまして…かな、宰相様たちがかな?そんな事しか思い浮かばない。


 後日ケイン王子から、とっても楽しい一日だったという返事がきて、一緒に行った女子たちが喜んでいた。その他に


 (ジーク様とユーシス様と怖い宰相様がケントに会いたがっているから、いつでもいいけど早く白の塔に来てくれ、意地悪されて困っているんだ、でもユーリさんには絶対に言わないで、怒られるから)

というケイン王子からの、切羽つまった秘密の手紙もわたし宛てに届いたがお父さんが破り棄てた。


 「ケインによく言いきかせないとね」

 にっこり笑うお父さんの顔は宰相様のように冷たくて怖い。


 毎朝お父さんと、さらに弟妹だから双子とも一緒に魔術学校へ行くことになるが、ちびたちと違って双子は扱いにくい。いつでもエリーとショーンは二人でいるし、学校も違うからあまり仲良くはない。

 環境の違いだから仕方ないけど、エリーにお兄様とよばれるとものすごく腹立たしいし、ショーンの優等生ぶったところも貴族の影響を受けていてなじめない。

 家はどうみても農家だし、この島は田舎だ。それに魔法は生まれつきあったもので、努力したわけじゃなでしょう。


 魔術学校は上流階級の子供が多くて、誰もがトップに立てる人になるための訓練をするような生活をしている。授業は熱心で、勉強してよい成績をとるのが当たり前みたいだ。

 わたしはいつも授業中ぼーっとしているし、のんびりしていて競い合うような学校でもないから、魔法以外の勉強での成績が双子よりよくない。もしかしてそのせいで少し見下されてるのかな?普段あまり会話がなくて頼られていないから、兄らしいところをみせる機会がない。

 お母さんの手伝いは一番熱心にしているから、双子にはそこを見てもらいたいが農業には興味がないようだ。お母さんのすばらしさもわかっていないなら、しっかり教えてあげたいけど。


 たぶん双子に尊敬されるような兄にはなれないから、まだわけのわからないちびの妹ミリーと弟ビリーには年上らしく手を振って出かけようとすると、かわいい笑顔で手を振って見送ってくれた、ありがとう、お兄ちゃんも学校でがんばる。


 好きになれない魔術学校に転移して、双子と話しているお父さんを振り切って逃げると、あれ?急に目の前に結界が。見回してみても誰かがいるわけではない。それなのに魔物がいる、わけじゃない、幻術?幻術なんてびっくりするよ。

 きょろきょろと見回すがわからない、でもこれで終わりみたいだ。


 本当に嫌な学校だな。


 


 

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