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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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新しい家

 ユーシス様とは翌日の夕方に会うことができて、結婚の報告をすると


 「ユーリおめでとう、幸せになってね」

 まるで本当の兄のように喜んでくれた。しかしユーシス様が悪いわけではないが


 「ユーリ、ユーシス様ってすっごく素敵な人ね、お顔が神がかっているわ」

とユキも世界中の女性たちと同じ反応で、うれしくない。わたしをみてそんなに喜んでくれたことないのに、別世界の人を鑑賞したって喜んでいるが、自分が別世界の人だ。


 今日一番うれしそうなユキと少し不機嫌なわたしは、中央の島に帰って来た。


 城に住んでいると不便なので、新しい家を畑の近くに建てたい、と前からユキにいわれていたので、二人で住むための家を考えている。設計図ができれば、材料をそろえて魔法で組み立てられるのだが、お互いの希望を出し合うと普通の家よりもかなり大きな家になりそうだ。


 「魔術の練習室や魔石の保管庫を広くしたいんだけど」


 「あら、魔石なんて食べられないわ、食料の加工品の保管庫のほうが大事でしょう、この島の野菜や果物は特別なのよ」


 「この島でできる魔石の価値をユキだけがわかってないなんて…」


 「魔術より、子供用の部屋じゃないの?」


 「どちらもいるのかもね」


 何カ月も悩んでやっと家の設計図が形になりそうな頃、急にユキも魔力量が多くなって体が少し発光してきたから、どうしようかと相談された。


 「街中でこんなに光ったら恥ずかしいわ」

 わたしはずっと恥ずかしい姿ですごしてましたけど、やっぱりユキも体が光るのは恥ずかしいって思っていたんだね。


 「魔力制御がうまくいかないけど、どうしたらいいの?」

 わかりません、がんばってとしかいえない。


 そんなある日、イーリがわたしたちに話があるからと深刻な顔をしてやってきた。


 「大事な話があるから、二人とも私の言うことをよくきいて。

 普通であればおめでたいことだけれど、大変だ。ユキが妊娠していて、異常な魔力量の男の子が生まれてくる。誰にも制御できない世界最強の魔法使いが数カ月後に生まれてくるはずだ、どうする?」


 「ユーリと私の魔力を持つ、誰よりも強い男の子なの?」

 深刻な顔のイーリの隣で、ユキがうれしそうに笑った。


 「大丈夫、ユーリの子供なんだからひどいことにはならないわ、私が大切に育てるから」

 ああ、そうかもね。わくわくしているユキと違って、イーリはものすごく不安な顔をした。


 その日から毎日のように、そんなとてつもない魔法使いをどうやって導いてやったらいいのか、とイーリが相談してきた。


 「どんなにすごい魔法使いでも、ユーリと私の子供でしかないのよ、きっと臆病で間抜けなところがあるわよ」

 ユキが相手にしないで笑っているから、イーリのほうが可哀そうになってくる。わたしはユキよりも少しは考えている。


 「とりあえず、子供部屋は強化しておくから」


 「そんなことは当たり前だ、そうじゃない!まったくこの夫婦は危機感がないな、もっと考えることはいろいろあるのに」

 

 イーリ、ごめんなさい、わたしたちは魔力があるだけで賢くはないんですよ。


 「わかった、ユーリとユキはあてにならないから自分で考えておくよ」

とあきらめられた。


 設計図をイーリに修正してもらったので、それに合った材木などの材料をそろえて、いよいよ家を建てることにした。


 この島に家を建てることをドラゴンたちが許可してくれたので、ついでにいろいろ相談してから準備した。


 子供が生まれてくる家なので、最強の魔法使いが順調に育つような場所と方角も選んでもらって、龍脈の流れもチェックして、一番星回りのいい日に祝福してもらって組み立てる魔術を発動した。


 くるくると材料が浮かび上がり、基礎の部分から順番に材料が積み上がっていくのを三人で見守った。


 魔法って便利だなぁ、と思いながら、安全に過ごせるように、邪気が入らないような光魔法を発動し続けている。さらに家が壊れないように強化して、無事に完成した。

 

 「すごいわ、魔法の家ね」

 組み立てるところをみているとそう思うけど、中に入ると木組みの大きな田舎にある農家みたいで、屋根裏部屋までの天井が高いこと以外は特別なところがない。

 がんばって何カ月も考えた特別な家だけど、見た目はごく普通の家だ。


 「ユーリ、こんなに大きな家が魔法でできるなんて、魔術師と結婚したおかげね、今までで一番魔術師の価値がわかったわ」


 がらんとして何もない家にユキの声が大きく響いた。

 やっと魔術師の価値をわかってくれてありがとう。




 

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