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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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冒険者組織

 他国の冒険者組織を調べてみると、驚いたことにN国の組織ほどだめな組織はどこの国にもなかった。

 特に大国の組織は大きくて、国家の騎士団と連携しているところもあり、すばらしい働きをしている。N国のギルドのお爺さんたちでは入れてもらえないかもしれなくて、魔獣退治と子猫の捜索くらい仕事が違っている。


 「N国の組織以外は立て直しなんて必要ないと思わない?」


 「でもジーク様がいうからにはきっとレベルが下がっているのよ、一度行ってみたほうがいいわよ」


 「ユキの実力では役に立たないよ」


 「魔術訓練なんでしょう」

 この甘い認識は、よほど平和な国で育ったせいなのだろうか。神の子供の姉にはすばらしい加護があったのか、神の子供がわたしと同じように苦労していたのか。


 「さあ、行きましょう」

 どこへ?

 ということで究極の選択をするとして、大国なら②のほうがいいか、という簡単な判断で大国②の王都に転移した。


 大国②の冒険者ギルドは王城に近い大きな建物で、Fランクの魔術師なんて相手にされないと思ったけど、仕事を探しに入ってみた。


 「N国のギルドから来たの?魔術師ですって!ちょっと奥へ来てちょうだい」


 小さな城くらいある大国②の冒険者ギルドの建物で、奥といったら王様が謁見するような部屋に通された。


 「ユーリ、私たちでうまくやれるのかしら?こんなに大きな冒険者ギルドで、N国の魔術師の実力を期待されているのよね、詐欺師になった気分だわ」

 ちょっとまって、わたしはユキの保護者ができる、N国の白の塔でトップクラスの実力がある魔術師です、と何回も言いたくないのに言ってきた。ユキが不安になるところなどない魔術師なんだけど。


 「本当にユーリで大丈夫なのかしら」

 なんで?もしかして白の塔が最強の魔術師集団だってことがわからないのかな、大国②でそんな説明をしていられないけど。


 室内には誰もいなくて、扉が閉められたので、部屋の入り口に立ったまま待っていた。


 しばらくすると、玉座ではないが金ピカの椅子に、がっしりした体格でジーク様くらい厳つい顔の戦士が座った。ジーク様のように冗談をいうような人には見えない、本当に実力者で権力者のようだ。あれ、ジーク様も実力者で権力者なんだけどな、何が違うのかな。


 「こちらへきてくれ、大国②へようこそ、N国の魔術師」

 声が重々しい。


 「私は大国②でAランクの剣士をしている、サルマンドだ。この王都ギルドの責任者をしている」

 どうだ参ったか、ときこえてきた気がしている。


 「N国の魔術師がわざわざ来てくれたんだから、仕事をしてもらおう。国境の魔獣退治をしてもらいたい」

とにらみつけてきた、魔の国との国境なら、魔獣が山ほどいるので断りたいが。


 「わかりました」

となぜか隣の人が引き受けた、あー。


 無言でサルマンドさんが首を縦に振ると、奥から屈強の戦士たちが十名ほど現れて一緒に行くことになったようだ。

 女性も一人いるが、皆厳つい顔で無言のまま移動する。さあ、行きましょう、とか言わないお国柄なのか。


 王都ギルドから転移して着いたのは、国境になぜ?というくらい大きな街の、王城よりも大きな城の前だった。ここが大国②の本当の王都だと説明されたら信じるが、さっき王都ギルドから転移したので、ここは国境の街らしい。


 「ベルリハルト城下の軍隊と合流するが、見て無理だと感じたのなら帰ってくれ」


 「わかりました」

 ユキが元気に返事をしたので、城の裏側へ向かった。

 そのユキも城下の軍隊を見て、足がすくんでいる。魔の国まで平原が広がる城の裏側には、十万人くらいの軍隊が本日の出撃を待機していて、カラフルな旗が近隣各地域の軍隊であることを示している。いくつもの部隊が集まっていて、冒険者ギルドもその中のひとつでしかない。


 大国②の国境の軍隊の巨大さに驚く。ベルリハルト辺境伯のうわさはきいているが、これほどまでとは知らなかった。


 定時になり、各部隊が順番に整然と進んで行く。しかし冒険者ギルドなので、わたしたちは各自バラバラになった。なんでか一緒には行かないようなので、最後に残った女性冒険者の後をゆっくり追って行く。途中で帰っても、いなくなっても関係ない戦力と判断されているようだ。


 それならば、ゆっくり行きましょう。

 軍隊と離れた所でユキを丸い結界に入れて浮かせると、女性冒険者がびっくりして振り返ったが、ユキは暴れずにおとなしくしているのでそのまま進む。

 小さな魔獣が走る平原が続くので、軍隊と一緒に魔の国付近までは行かずに、その場で魔獣を倒していく。

 一気に倒してはいけないが、剣士ではないから一匹ずつ魔術で倒す。無詠唱だから、わたしが見た魔物がバタッと倒れていくことになる。

 不気味な光景なのかな?


 「その魔術はどうなっているのだ!」

 初めて口をきいた女性冒険者が叫んだ。


 「女魔術師が浮かんでいるのも、見ただけで魔物が倒れるのもN国では当たり前なのか?」


 「そうだ」

 面倒なので返事をすると、納得したようだ。N国の魔術師とは大国でどんな認識なのだろう、なんでもありなのか?


 そのまま何事もなく進んで行って、大国②は立て直しなんていらない、大丈夫だから帰ろうと思い始めた頃、突然叫び声とラッパの音が響き渡った。


 「危ない、逃げろ!」

と遠くから女性冒険者に声がかかった。来る!


 「ぐぅああおおああお!」

 鳥なのか、獣なのか?両方を合わせたような魔物が、追い立てられて飛んで来た。中型にしては大きいくらいだけど、倒していいのかな。


 女性冒険者の剣が突き上げられると、腕に爪を刺すように襲ってくる、危ないから魔術を放つが倒してはいない、翼と両方の足を縛った。


 ズドーンと大きな音を立てて、魔獣が地面に転がった。と同時に女性冒険者が大きく目を見開いてわたしを見つめた。   


 「助かったよ、ありがとう」

と少し震えた声がした。






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