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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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魔力検査

 王立学院魔法陣研究室にユキと一緒に来てみると、ドロシア、カーク、ハルの三人が揃って待っていた。


 「まあ、彼女がユーリの?はじめまして、魔法陣研究室長のドロシアよ、よろしくね、あなたが思っているより大変な事もあるでしょうけど、がんばって」

 何があるって?


 「それではさっそく、魔力量をはかりましょう」

 いつもの怪しい雰囲気で、カークが測定器を用意した。


 「ユキさん、測定器の上に手をのせてみて…すごい、やっぱり異世界人は違うな、1000000だからそれ以上かも」


 「大変!どうしましょう、ユーリと同じくらいあるなんて」


 「ユキには他にもおかしな魔力があるんだけど、何だかわかる?」


 「さあ、よくわからないわ」

 

 「光魔法が使えるのかな、なんとなくわかるけど。触れていいなら調べますよ」

 いや、待って、カーク。


 「それなら保護者はわたしだから、わたしが調べるよ」

 ユキにいいかな?と確認すると、うなずいたので始めます。


 まず、両手を繋いで、手や指先から出ている魔力を感じてみるが、光魔法の変わった力を感じるだけで何だかわからない。

 そこで、おでこをくっつけて、頭の中をのぞくくらいに調べてみる。  

 「大きく目を開けてね」

 わかるかどうか、やってみないと。おでこをくっつけたまま目をのぞき込んで探索しているが、変な力が見えそうで見えない。


 きゃーっ、とドロシアの声がして、ユキが背中をどんどん叩いてくる。


 「もう少し調べないとよくわからないな」

 まわりを見ると、みんな顔を赤らめてびっくりしている。


 「そんな調べ方ないよ」

とハルが言う。

 

 「でも、もう一回やったらわかりそうなんだけど」


 「だめ!もうやらないわ、恥ずかしすぎる」


 「ユーリ、女の子にいきなり何するの?普通は手だけよ、もうやめて。仲がいいのはよくわかったから」


 ドロシアに反対されたから止めるけど、魔力検査だよ。結局よくわからないまま終わっただけではなく、しばらくユキが口をきいてくれなくなった。


 その日は動きやすい作業用の服を買って、町中の店をみて、食事をして帰った。あんまり不機嫌だったから、ユキに似合いそうな緑色の魔石のネックレスをプレゼントしたら、思ったより喜んでくれた。


 もっと島の中をみてほしいし、ユキの魔法の実験もしたいのに、カークがどうしても魔法の授業が必要だというので、王立学院に特別生として通学することになった。


 「保護されてから、宿舎のわたしの部屋に住んでいたことにして通学しよう」

と言うと、ユキは喜んで納得してくれた。N国の宿舎は、ユキの国の一流ホテルに似ているそうだ。

 「家具や内装がすごく素敵だから、本当にここに住みたいくらいよ、島よりいろいろ便利だから泊まりに来てもいいかな?」


 もちろんいいけど、ユキは一人で転移できないから一緒に泊まることになるよ、わかってる?島の城では別々の部屋に住んでいるから、いつも一緒にいるわけじゃなくて、近所の人くらいの距離がある。


 翌日、カークの授業を受けに来た。

 

 「ユキさんは魔法陣を使わずに、無詠唱で覚えましょう」


 「無詠唱で!かっこいい、やります」

と力強くユキが答えたが、魔法のない世界から来たばかりだから何も出てこない。


 「本を読んでいたのになんで?」

 何の本を読んでいたの?

 ユキは顔をしかめてうなったりしているが、体力で出てくるわけじゃない。手を添えて、ユキの魔力が体をめぐるように、わたしの魔力をゆっくり、少しずつ流して様子をみた。


 「力を抜いて、魔力が体を循環するイメージができたら、指先からそっと外に放ってみて」

 ユキの魔力とわたしの魔力を混ぜたものを、ユキの指先に少しずつそっと集めた。


 「火の玉を一個出してみて」

 ユキの指先から魔力を少しだけ出す。


 「わっ、できた!ユーリありがとう、私にもできた、すごい」

 初めて魔法を使って、ユキが喜んでいる。


 「ユーリが手伝いすぎてるから、ユキさんはもう一度一人でやってみて。ユーリはその邪魔な火の玉を消して」

 はい、カークに怒られてしまった。


 「私は光魔法が得意なので、浄化を教えますよ、ユーリは魔素を発生させて。部屋の空気をきれいにするイメージで、魔力を放ってください」


 もう魔素が出ているけど、ユキにできるのかな。手を添えて、すばやく浄化の魔法を放つ。あ、うっかり部屋中を浄化しちゃった。


 「ユーリ、それやりすぎだから」

 カーク先生の冷たい声がして、今日はそこで終わった。


 王立学院から城下町を歩いて王城へ帰る。


 「不思議、町中にいると光らないし、ユーリが普通の男の子に見えるわ」


 「いつも普通だよ」


 「普通の男の子は異世界人なんて保護しないでしょう?私も働いた方がいいと思うの、この通りのお店にアルバイトの貼り紙があるから、行ってみてもいいかな」


 「だめ、異世界人は大切だから保護されるんだよ、心配しないで」

 がんばって魔術師の重要性や、N国での地位を説明するけれど、信用されていないようだ。本当の事を説明すればするほど、大げさに言っているようにきこえてしまう。


 「ユーリは何才なの?私は今年で24才よ、十分大人だわ」


 「え、ユキの方が年上?23才だよ、全くお姉さんにはみえない」

 

 「なんだ年下なの?」

 これじゃどう説明しても納得してもらえないから、今日はあきらめた。説明するにしても、魔術師としては誰よりも力があってN国では認められている、と自分で言ってるなんて変な人かもね。






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