表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の塔の魔術師   作者: ちゃい
29/106

ハーシィ嬢の結婚

ハーシィ嬢視点です

 ユーシス様には、残してきた写真からすべてがばれてしまった。

 夜会の日、深夜になって私の部屋へやって来たユーシス様は、すべて知ってしまいました、と言った。


 あー、子供の頃からの夢は。私が結婚するという甘い望みは。

 あらゆる夢が砕け散った気がして、がっくりひざをついた。


 「祖母が言っていました、あなたのお祖母様から許可が出ましたと。

 いいですね、ハーシィ様?私はあなたを家に持って帰って、好きにしていいそうですよ」


 はい?まだそんなこと言ってていいんですか?私はずっとあなたをねらっていた悪い女ですよ?


 「なんだか反応が薄いですね、まぁいいです。それでは明日、私の家へ行きますから、今日はもう休みましょう」


 ユーシス様は上着とズボンを脱いで、私のドレスやコルセットを取り外した。手早い。

 あっという間に下着姿のまま二人でベッドに入り、抱えられたまま眠った。


 ユーシス様は、私の体に腕をまわしたまま眠っている。

 固まった、眠れますか?これ。

 むりむり、写真で見ていたよりずっと素敵で美しい。ドキドキしすぎて一晩中顔を見てしまった、ありがとう。


 そんなまったりとした早朝、まだ暗いうちに宿を連れ出された。 

 転移魔法陣に乗り、N国の馬車に乗せられて、夜明け頃、写真で見たことのあるユーシス様の城のような自宅に到着した。


 そのまま寝ぼけて、朝食を少し食べたような気がする。朝日が上る美しい町を見下ろす、三階の私用の部屋。


 なぜそんな部屋が私用にあるの?という所に連れて来られて、ふらふらとメイドさんに、お風呂を用意されるがままに入れられた。


 そしてなぜだか、見たこともない私用の服を着せられた。 

 全く知らないぴったりとした下着や靴があり、何着も色や形を変えてドレスがあり、それに合わせた宝石や小物があった。


 「今日のために私の祖母が、数年前から少しずつ用意していました」

 高級そうなドレスを着た私の所へ、ユーシス様がやって来た。


 「さあ、行きましょう。何も言わずに寝ぼけていては、本当に好きにされてしまいますよ。いいのですか?」

と心配してくれた。

 「もちろん、いいのですよ!」

 「そうですか」


 うれしそうなユーシス様と一緒に馬車に乗り、N国の役所で結婚証明書を受け取ったので、私も名前を書いた。


 その後、ユーシス様のお祖母様の家へ向かった。

 「まぁハーシィちゃんいらっしゃい、とってもうれしいわ。

 そのドレス、よく似合っているわね。どう?ユーシスのことは気に入ってくれたかしら?」

 「はい、とっても!」

 「私もうれしいのよ」


 よいお祖母様ですね。 

 この方がずっと写真を送ってくれたのだ。ユーシス様と二人でお礼を言って、また馬車に乗った。自宅へ向かっている。


 ユーシス様のお父様は出勤の準備をしながら、こんな所で何をしているのだ、ときいてきた。

 ユーシス様がこの方と結婚します、と言うのをきいてそうか、と言ったまま出掛けて行かれた。


 そのまま出て行こうとしたユーシス様を、お母様が引き止めた。

 「きちんと結婚証明書をもらって、書いてきましたから」

と言うのをきくと、

 「女の子をさらってきて嫁にするなんて、いつの時代の人なの!」

と怒っていらっしゃる。


 「ご実家のお父様のお許しがなければダメよ」

と当然な流れになってきたので安心した。


 父は絶対に反対しない、私が嫁にいってやるのだ。泣いて喜べ!と心の中で思った。


 ちょっと困った顔をしたが、ユーシス様は旅行用のカバンをつかむと私の手を取り、馬車に乗り魔法陣に乗りまた馬車に乗り、お昼前には父を説得してしまった。


 翌日実家で結婚式をして、夫婦となり、ユーシス様の自宅に戻って来た。


 夕方になっていた。その夜から私たちは夫婦となったので一緒に生活している。


 さすがに段取りが早すぎるわ、とユーシス様の御家族は皆さんびっくりしていらっしゃる。やっぱり早いですよね、これ。


 「ところであなたは誰?」

となったが、お祖母様にきくようにとユーシス様に言われていた。説明まで省くのか、早い。


 そのままお互いの一週間の休暇中、ユーシス様のお家で二人でだらだらとまったり過ごした。

 なんにもしない毎日なのに、このために急いだ、とユーシス様が幸せそうに笑っている。あなたを好きにしていいなんて言うからいけないんだ、と。


 夫だけれど、ふっと不思議な気がする。

 これは一週間だけの夢か、ちょっとした結婚イベントのゲームなのか。


 とにかく退職するまでは、また元の生活に戻る。二人で暮らせるようになるには、まだ一年以上はかかるのだ。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ