表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の塔の魔術師   作者: ちゃい
23/106

研修生

 ネーデリアではお互い精一杯だったとわかっているから、ユーシス様には何も言われなかった。結果ほぼうまくいって、ネーデリア国は立ち直っている。


 わたしはもうユーシス様に見放されたのだろうと思っていたが、そういう感じでもない。

 しかしネール領の役立たずが、最後に大切な貿易担当者を眠らせて、回復できぬまま帰国するのだ。

 ネーデリア国内のことはユーシス様一人でがんばっていたし、わたしがよい仕事をしたところなどどこにもない。


 あの後何事もなかったかのように、白の塔に戻って来た。

 ユーシス様は宰相様とジーク様に報告をしている。三人はとても仲がよく、会える時はいつも三人で集まるようにしているらしい。今回はわたしに関する楽しくない話題もあるだろうけれど。


 サシャは結婚退職していたが、中央塔隣りの居住塔に住んでいるので、毎日お昼に来ているそうだ。


 わたしとサシャの代わりに二人の研修生が入っていた。

 ヒマな先輩が午後から面倒を見てあげなさい、となぜかユーシス様に命令されている。

 こんなわたしに一体何が教えられるというのだろう、謎だ。


 彼らは14才と15才のお子様で、何にでも興味があるので何を教えてもいいらしい。

 14才の女の子ナーシャと15才の男の子ケインという。


 サシャとわたしが比較的おとなしかったので、宰相様たちはやんちゃな彼らを持てあまし気味なのだ。

 「ま、ユンタよりずいぶんマシかな」

とジーク様は言う。


 わたしはネーデリアを引きずっている。ここでは必要ないのに黒髪三つ編みでメガネをかけ、90%魔力を抑えている。

 ユーリでいたいくらいだが、誰もがユンタと呼ぶ。ユンタという別人のネーデリア人がN国へ来てしまったようだ。


 それでお子様は変なお兄ちゃんに興味津々だ。

 「ユンタ先生N国人なの?その変な髪型なに?全然似合ってないんだけどー。メガネ必要なの?」

とナーシャ。


 「ユンタ先生魔力少ない外交員なの?俺より弱い?ちょっと戦ってみたいー」

とケイン。


 「ユンタ先生の本名はユーリでネーデリア人だ。弱いからお前と戦うことはできない。でもそれは秘密だ」

 「なんだ弱いのか、変な外交員」


 「でも宿題は出せる。明日魔石を30個作りなさい、先生をバカにした罰だ」

 「ネーデリア人の宿題なんかやりたくないー」

 「じゃ50個だ。ネーデリア人をバカにした罪は重い」

 えーやだー、戦うーやっつけてやるー、と叫んでいる。


 「ユンタ、いい加減にしろ」

 ジーク様に怒られた。わたしが悪いですか、ジーク様?


 「ユンタ、お前じゃないんだから、奴らは魔石10個でちょうどいいくらいだ。これからまだ増えるし、白の塔では十分やっていける魔力がある。適当なことばかり言ってないで、きちんと教えてやれ」


 「ユンタ先生はユーリ先生なの?本当は強いの?」

 「ああ、強かったら今日から誰がなんと言おうとユーリ先生と呼んでくれる?」

 「わかったよ、ユーリ先生」

 「ナーシャも?」

 「わかった」


 「それでは強いわたし、ユーリ先生がジーク様を術式で縛ってみせましょうー」

 「ユンタ!いい加減にしろよ」


 白の塔を追い出されてしまった。

 本当に強いのー?とケインに何度も言われている。もうちょっと弱かったらよかった、とユーリ先生だって思っているさ。


 図書館にやって来た。今までわたしがやっていたように、術式を覚えて練習するのが一番いいだろう。


 あやしいユーリ先生は術式の本を借りて練習室へ向かう。室内と三人に強化結界を張る。

 「さあどうぞ、術式の練習をいくらでもやってくれ。でも術式をいじってはいけないよ。城が壊れるからね」

 「ユーリ先生の術式を見せてよ。強いんでしょう?それに術式をいじって城なんか壊れないよ。やったことあるし」

 なんだと、いけないよケイン。


 「そんな危ないことは二度としてはいけないよ。本に書いてある術式を使いなさい」

 わたしは水の術式で天井からシャワーのように水滴を落とす。その後角度を考えて光の術式を使う。

 結界で濡れないことを確認する。大丈夫、ほら虹ができた。

 反応が薄い、だめか。


 えーと、炎の玉を小さくして、強い硬いものにする。10個その辺に浮かせて固定する。安定したら風の術式で弱い風を循環させる。

 部屋の中がどんどん乾いていく。どうだろう?


 「えーと、先生」

 「なんでしょう、ナーシャさん?ユーリ先生と呼びなさい」

 「ユーリ先生、これどうなってるの?よくわからないけど、とてもすごいことはわかる。でもあんまり強いって思えないんだけど」

 「ユーリ先生は攻撃できないの?これすごいけど、なんかすごすぎてよくわかんないし、強そうじゃないよ」


 こんなに基本的な術式ばかりなのに?攻撃なんて危なくて普段使わないよ。

 うーん、なかなかうまくいかない。じゃ、またあれでいいのかな?

 水の術式で大量の水を浮かせて強い炎で一気に 

 「ドッカーン!!」

 おお、いい音が出た。部屋は壊れていない。


 「きゃーっ!」

 ナーシャの悲鳴がきこえた。

 「うわーっ!」

 ケインが叫んだ。


 「ユンタ、指導するんだ。怖がらせてどうする」


 わたしは指導者として問題があるらしい。

 ナーシャとケインにまで涙目でにらまれてしまった。一体わたしにどうしろと?


 ジーク様にまた怒られてしまった。

 お前がいるだけでナーシャとケインの三倍は疲れる、ということだった。

 「もう帰ってくれ」


 ジーク様がそう言うので、ユーシス様のところへ戻されると嫌な顔をされてしまった。

 「本当に災難が歩いているように見えてきた」

 ユーシス様、誰が言ってましたか?それ。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ