ネージュ様
強い風が吹いている。わたしはユーシス様に抱えられるように王宮から連れ出され、N国の軍艦で竜の島へ向っている。
ネージュ様や子供たちにどうやって謝ったらいいのだろう?
「ユーリは私の友人だから」
と言っていつも助けてくれた人を、わたしは生け贄にしてしまった。
うつむいたまま、竜の家の前でネージュ様に迎えられた。なぜだか、わたしがなぜ悲しいのか?と怒られるだろうけれど涙が出ていた。
ネージュ様に手を引かれて家の中に入り、花の香りがするお茶と甘いお菓子をすすめられた。
涙を拭くためのハンカチをていねいに顔に押し当てて、子供をあやすように背中をたたいてくれた。
竜のほこらはやわらかい光を放っている。
「リゲルも竜もあなたを王と認めて、友人として迎えている。
ユーリの友人としてリゲルは王宮に残ることにしたのよ、ネーデリアのためではない。ユーリは友情を受け入れなさい。
リゲルは優しい人だから、友人を泣かせたくはないでしょう」
背中に手を当ててしっかりした声でネージュ様が言う。
リゲル様はわたしを守るために自分を犠牲にしたのだった。なんという友情なのだろう。
わたしが今まで思っていた友情の軽さに愕然とする。
リゲル様にさらにはネージュ様にも守られていて、泣いている自分がとても弱くて情けなくなった。
「竜のほこらからリゲルの様子が伝わって来るから、私はここで竜の島を守っていくわ。ユーリはどうするの?」
ユーシス様はネーデリアでの仕事をすべて終わらせて、報告のためにN国へ戻り、その後別の小国へ行くことが決まっている。
わたしはどうするのだろう。
「ユーリのやりたいようにしなさい、リゲルもそう願っている」
ネージュ様が少し落ち着いたわたしとユーシス様に昼食をすすめてくれたので、リゲル様がここにいるかのように、和やかに島の様子や子供たちの話をして食事をした。
島の人たちがわたしのために食材を持ってきてくれていた。
食事のお礼を言って笑顔でネージュ様と別れることができた。
竜の島はどこまでもわたしに優しい。




