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白の塔の魔術師   作者: ちゃい
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異世界クラブ活動

 異世界クラブはわたしとエマの活動だったが、エリーとショーンも家族だから入れるように、と父さんから命令された。 

 さらに城内の宿舎で活動するときは四人の子供が異世界の予言をみることになるが、国家機密に関することを子供だけで簡単にしてはいけないと注意された。


 「過保護で有名なユーリ宰相補佐のお子様の警護なんてつまらないと思っていたが、エマさんの魔法はすばらしいね、感動したよ」


 それで騎士団の副団長で騎士科の講師もされている、レイナード先生が護衛につくことになった。茶色でくせの強い巻き毛も美しくみえるきれいな顔をした、騎士科でものすごく人気のある先生だ。


 「ケントくんは嫌そうだけど、私はカーク先生の弟子の中では悪くない魔術師だと思っているよ」


 「兄さん、先生は学生時代騎士科と魔術科でトップの成績だったんだよ」

 騎士科のショーンが誇らしげにいう。騎士科の魔法騎士は得意な攻撃魔法以外の勉強を熱心にしないから、魔術科の生徒には魔法で勝てないのが普通だ。魔術科でもトップとは、騎士科なのに誰よりも強い魔法使いだったのだ、恐ろしい。


 「それはすごいな」


 一度ローザとエリオットが来たが、予言の勉強の特別講師をみたローザが叫んだ。


 「レイナード先生!騎士科の全員がお待ちしているのにこんなところにいらっしゃるなんて、ユーリ宰相補佐の命令ですか?ぜひ騎士科に来てください」


 「わかった、誰か暇な若い者を行かせるよ、待っていてくれ」

 先生、ローザは先生を待っているんですけど。それでローザは怒って帰ってしまった。


 「頼むから学院の講師になんか戻さずに、ここで使ってくれ。これは新しい魔術だ、魔術師なら誰だってこういう研究がしたいだろう、私は幸運に恵まれたと感謝しているよ」

 レイナード先生はうれしそうだけど。


 宿舎とは別に、特別会員のイーリとの活動もある。

 宿舎では主にエマが予言でみせる異世界の歴史を、順番に書いて資料にする活動をしているが、イーリの書斎ではもっと進んだ活動をしている。


 まずイーリの住んでいる九階ではなくて、十階の中央に仕切りを入れて部屋を作って、異世界と交流しやすくした。


 「ユーリのおかげで安定した回転をするこの世界と、不安定な速い回転のユキがいた異世界の未来は、今行き来できるくらいに繋がった道のようなものがあると仮定しよう」

 一回死なないと通れない道だけどね、通りたくはない。


 「そのきれいな回転から、不安定な速い回転に向けて力をかけると、ちょうどタイミングが合う場所同士があるはずなんだ。エマがケントを未来視した場所になる」

 あの銀色の建物がある場所かな。


 「その未来の時間の異世界は、ここの今の時間とちょうど合うように何かに設定されたと思わないか?」


 「叔父さんが神様に助けて、と願ったからかな?」

 

 「そうだ、異世界のまだ汚染が進んでいない時点になると思う。そこから浄化を始めたら間に合うだろう」


 「え!行きたくないよ、死ぬでしょう」


 「わかってるよ、この世界の大切なケントを浄化くらいで失いたくないさ、そうじゃなくて、少しずつ進めていこう」


 「どうするの?」


 「この世界の今ここで瞬間移動魔法を発動すると、異世界の回転の速い未来からここに来る時差のために、時間をさかのぼって小さな物体がちょうど今ここに届くかもしれない。だからまず未来の小さな物を集めてみようと思う」


 「魔法でできるかな?」


 「できると仮定してだから、わからないよ」


 瞬間移動魔法をイーリのいう方向に向けて、正確に発動してみた。


 「本当にできたら驚くだろうね」

 そうイーリが言ったすぐ後に、突然ドゴッと音がして、薄く光る何かの破片が現れた。


 「わあ!なんだこれ?」

 イーリの方をみると驚いた顔をしているが、しっかり毒性があるか確認している。イーリは顔より大きな破片をつまみ上げると、やった、と小さな声でつぶやいた。


 あ、もしかしてそれは見覚えのある、銀色のつるつる光る壁かな。


 「イーリ、エマの予言でみた異世界の壁の破片に似てるよ、どうしよう元に戻す?」


 「そんな器用なことができたとしても、壊れた壁の破片が突然出てきたら困るだろう」


 「そうだね」


 「でも次にこちらから送ることができるか試してみたいんだ。こんなにうまくいくと思わなかったけど」


 「壁を?」


 「違うよ、ケント、浄化能力のある物体だよ」

 ああ、そうか。


 「浄化装置をいきなり送るの?」


 「それじゃぶつかって誰かが怪我をするだろう、とりあえず魔素を吸収しやすい植物の種を少しだけ送ってみようか」

 

 そう言ってイーリが渡してくれたのは、ものすごく小さくて黒い数粒の種だった。手に取ってわかるけど、これはうまくいかない気がする、受け取った時点でいくつか吹き飛んだもの。







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