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氷炎の皇剣伝(ブレイド・ストーリー)  作者: Orca Masa
第3章 サマースクール 編
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第1話 アンケートと動揺

まさかの平等院の位置を間違えていました。


申し訳ないです!(訂正済み)

――煌華学園 武術科棟――



 《煌帝剣戟(ブレイド・ダンス)》煌華学園予選の決勝戦から2日が経った。


 フィールドが半壊した第1アリーナは元通りに修復され、あの戦いの爪痕は無くなった。生徒の間でも、あの一件を話題にする人は減りつつある。


 俺の首の傷も完治し、既に痛みも感じなくなっていた。


 《煌帝剣戟(ブレイド・ダンス)》煌華学園予選以前の日常に戻りつつある今日の朝。ホームルームの時間に、ある行事のアンケートを取ることになっている。その行事とは―――


「皆さん席に着いてください。


 それではこれよりホームルームを始めます。


 今日は皆さんも知っている通り、サマースクールの行先の希望アンケートを取ります。」


「リョーヤ、リョーヤ。」


 隣の席から身を乗り出してユリが話しかけてきた。フワッと広がったコンディショナーの良い匂いが鼻をくすぐった。


「リョーヤはどこにするか決めた?」


「う~ん、まだ決めかねているんだよな……ユリはどうするんだ?」


「私は英語がさっぱりだから……やっぱり日本かな? 正確にどこにするのかまでは決めてないけどね。」


「おっ、俺も同じだよ。やっぱり英語できた方がオーストラリアは楽しめると思うからね。


 ちなみに、ユリの実家はどこにあるんだ?」


「私の家庭って転勤族だから、その度に変わるんだけど。今は大阪かな?」


 転勤族……親の仕事の都合で引っ越しが多いってやつか。引っ越しなんて経験したことないから分からないけど、色々と大変なんだろうな。


 特に友人関係、これは有名な話だ。クラスメイトと深い関係になる前に離れ離れになってしまうことが多いせいで、真に友人と言える存在が極端に少ないらしい。


 けれど、今その話は置いておこう。


「そっか、なら京都は近いよな? 行ったことは?」


「もちろん! それに住んでもいたよ。


 でも東京にも住んでいたから、サマースクールでどっちに行きたいかって言われてもね……。」


「なるほどな。」


 そうこうしている間に、目の前の席に座っているリンシンからアンケート用紙が回ってきた。


「リンシンはどこに行きたいんだ?


 確か中国出身だよな? 観光を兼ねてここに行ってみたいって願望とかあったりするのか?」


 すると意外にもリンシンは即答してきた。


「……京都。」


「京都か。どこか寄りたい場所とかあったりするのか?


 確か2日間の自由行動がスケジュールに組み込まれてるから、日帰りで行ける距離なら行った方が良いと思うぞ?」


 そう訊くと、リンシンは財布から10円玉を取り出して(おもて)面を指さした。


「……ここに行きたい。」


 ……えっと、これって……


「びょ、平等院鳳凰堂……だよな? これがあるのは宇治市だぞ?」


「……宇治?」


「少なくとも京都市ではないんだけど……」


「……行き先は京都()とは言ってない。」


「た、確かに。相変わらず鋭いことをいうな……。


 たしか……京都駅から平等院鳳凰堂のある宇治まで、電車で直接行けるから……時間的にも距離的にも行けそうだな。」


 ちょうどいいや。リンシンの行き先は決まってるようだし、せっかくだから一緒に行かせてもらおうかな。


「リンシン、俺も一緒に行っていいかな?まだ行き先決まってなくて、悩んでたからさ。


 それに名所の解説役としても使えると思うぞ? こう見えても日本史は得意なんだよ!」


 フンッと胸を張ると、いつでもポーカーフェイスを崩さないリンシンが珍しく少しだけ笑みを浮かべた。


「……いいよ。」


「私もいい? リンシンちゃん?」


 リンシンは無言でうなずくと、ユリの同伴も認めた。どことなくリンシンから嬉しそうな雰囲気が感じ取れた。


「ありがとな、リンシン!」


 アンケート用紙に「京都」と書き、教卓に置かれた回収ボックスに入れた。




「皆さん提出しましたね? それでは明日のホームルームで集計結果を発表します。


 毎年日本の希望者が多いのですが、ざっと見た感じだとオーストラリアの希望者もそこそこいるようですね。」


 アラムの方を向きジェスチャーで「オーストラリアにしたのか?」と訊くと、アラムは何やらオペラを連想させるような――まるでステージで独唱しているかのような仕草をした。


「オペラ?……シドニーってことか。」


 オペラハウスで有名な所といえばシドニーだ。アラムはそれを言いたかったのだろう。


 となると、しばらくアラムに会えないのか。もの寂しくなるな……。


 そんなことを考えていると、いつの間にかホームルームはほぼ終わっていた。


「それでは1時間目の授業を始めます。


 テキストタブレットの数学 Ⅰ を画面に出してください。」


 そういえば《煌帝剣戟(ブレイド・ダンス)》の予選が終わったから、授業ではこいつを使うんだった。


 1年間公立高校に通っていたから標準的な高校1年次のカリキュラムは終わってるんだよなぁ……めんどくさいなぁ……。




 一通り授業が終わり、帰りのホームルームも済むと、ユリに「これから私服を買いに行くのに付き合って欲しい」と言われた。


「え? いや、俺男だぞ? 女子の服のセンスとかは全く分からないんだけど……。」


「だからだよ! 女子の感覚だけで服を選んだら、男子にドン引きされるような服になりかねないんだもん。」


「いや、流石にそれは―――」


 ないだろう、と言いかけるとリンシンまでもが誘って(?)きた。


「……リョーヤも来るべし。」


「リンシンまで……。


 んまぁ、どうせこのあとは特に予定ないから付き合うよ。ただし、あまり期待はするなよ?」


 と言うことで、これからヒースネスの商業エリアに向かうことになった俺達であった。




――ヒースネス 商業エリア――



 学園前にあるバス停から約20分間バスに乗ると、ヒースネスで一際賑わっているエリアに着く。そこが商業エリアだ。


 ……それはいいのだが、バスの中でずっと言いたかったことがあった。


 それは―――


「えっと……リンシンさん。学園の前で言ったことと同じことを訊いていいかな?


 どうしても『バカにはそう見える』って返答じゃ理解に苦しくて……」


「……何?」


「俺とユリは制服だよな?」


「……うん。」


「じゃあどうしてリンシンは……その……ジャージなんだ? しかも原色真緑の。」


 今この瞬間に引きこもり系女子のイメージを書けと言われたら、正確に書ける自信がある。


 サイズが若干体型より大きめで、なおかつ模様がほとんどない上下ともに単色のジャージ。一体どこでそんな地味なものを見つけてきたんだか……。


「……外着、これしかない。」


「それを外着にすることに深く疑問を覚えるよ!?


 ていうか制服はどうしたんだよ?」


「……洗濯してる。」


「せめて買い物から帰るまで、我慢して着とけよ!?」


「ま、まぁまぁ。リョーヤの言いたいことは分かったから、落ち着いて?


 ここが公共の場ってことを忘れてない?」


 ユリが苦笑いしながら肩を軽く叩いた。どうやら少し動揺しすぎたようだ。バスに乗ってる一般の方からの視線も感じる。


「あ、そうだな……。ごめん。」


「リンシンちゃんも、一緒に似合いそうな服を探そう?


 さすがにその格好は……ある意味目立つから、ね?」


「……うん。」


 う~ん……ジャージしか外着を持っていないということは、ショッピング経験がほとんど無いのだろう。そこはユリが上手くフォローしてくれるはずだ。俺は……のんびりしていよう。

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