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氷炎の皇剣伝(ブレイド・ストーリー)  作者: Orca Masa
第2章 《煌帝剣戟》予選 編
40/57

10000PV突破記念番外 金儲けの手段

――煌華学園 学生寮――



 桜の花が散り始めてきた4月下旬であるこの日。俺たちは授業の代わりに行われている訓練を終え、食堂で夕食を取っていた。


「ところでリョーヤ。リョーヤの作る氷って、どれくらい冷たいの?」


 ユリが藪から棒に質問してきた。どれくらい冷たいか、か。


「-50度は軽くいくかな? けど-70度まではいかないくらいだね。」


「うーん、あんまりイメージわかないかな……。」


「えっと―――」


 そばにあった水の入ったコップを手に取ると、中の水を凍らせる。そのうち周りの水蒸気が冷やされて、霧のようなものが発生した。


「ドライアイスが水に入ると、どんな反応を起こすと思う?」


「……白いのが勢いよく出てくる。」


「色々と誤解を招きそうな言い方だな……。


 まぁ、正解だな。あれは二酸化炭素ではなくて、ドライアイスによって冷やされた空気中の水蒸気が凝縮と凝固されてできた、細かい水滴とか氷の粒なんだ。」


「なるほど! 本来二酸化炭素は目に見えないから、冷えても見ることはできないのね! 勘違いしてた!」


「でも俺の氷はドライアイスではない。なのにドライアイスと同じような現象を起こしているだろ?」


 水には入っていないが、周囲の空気を冷やしていることで水蒸気を水や氷に変化させている。その点ではドライアイスを水に入れた時の現象と同じだ。


「つまり、俺の氷はドライアイス並の冷たさってことさ。」


「なるほどなるほど。


 おっ! いいこと思いついた!」


 アラムが手を叩いてニヤニヤし始めた。……万国共通、悪巧(わるだく)みをする時の顔だ。


「リョーヤの氷を商品化しよう!


 夏の日差しが暑い日、リョーヤの氷を特殊なタオルに包んで持ち運べるようにする。そうすれば、いつでもどこでもヒンヤリとした感覚を満喫できるって寸法さ!


 大ヒット間違いなし! 億万長者も夢じゃない!」


 ……ろくでもない提案だった。てか、俺で金儲けを考えるなよ……。


「それ、夏しか売れないだろ。


 冬の収入はどうするんだ?」


「ふふふ。そこも考慮済さ!


 ユリ!」


「は、はひ!?」


 ユリは驚いて口に入れようとしていたカレーを落としそうになった。


「冬場はユリの幻獣の出番さ!」


「わ、私の?」


「そう!


 一家に一匹、あなたの暖炉になる百合印の幻獣!

 まるで春のうららかな陽気のような暖かさを、いつも貴方のそばに。


 このキャッチフレーズならいける!」


 ……どこかの企業の広報部にでも入れよ…。よくキャッチフレーズがすぐに浮かぶよな……。


「私の幻獣が……暖炉に……あは、あははは」


「……ユリの目が小銭になってる。」


「なんかの忍者マンガに出てきた気がするな、この目。」


「……私は?」


 リンシンの目が輝いている。まさか、リンシンまでもが金儲けを考えているのか?


「リンシンは……うん、ジャパニーズ扇風機代わりになると思うよ。」


「……扇風機?」


「そうさ。


 真夏の溶けるような暑い日に、リンシンの風を受けて涼む。

 独身の男性からの需要が殺到するぞ!」


 ……ちょっと待て? その言い方だとまるで―――


「……私、その人の家に出向くの?」


「もちろん! 交通費やらなんやらでサービス1回分の料金はそれなりに弾むけど、相応の価値があると僕は思―――ぐはぁっ!」


 一瞬でよく分からなかったが、リンシンの延髄チョップがアラムの首にヒットしていたように見えた気がする。……恐るべしリンシン。


「……知らない男の家、イヤ。」


 リンシンから拒絶のオーラがドロドロと流れ出てる……。そんなにイヤなのか。


 とその時、隣に座っているユリの方から熱気が伝わってきた。


「あっつ! なにが―――って、えええぇ!?」


「ほらー、ケルベロス。高級松阪牛のステーキ食べたいでしょ?


 だからよそのお家にいって、いっぱいお金を稼ぐのよぉー。おほほほほほ……」


 ユリが……紙ナプキンで扇いでる。あれはお札のつもりなのか? って言うか、ケルベロスが困ってるからもう止めてあげようよ!?


「何の話をしているんだい?」


 振り返ると、空の皿が乗ったトレーを手にしたアッシュさんとカレンさんが立っていた。


「能力を使って金儲けを考えているアラムの話を聞いていたんです。


 ……まぁ、当の本人はのびてますけど。」


「なるほど、僕もそんなことを考えた時期があったな。」


「アッシュさんは水を操るんでしたよね?


 どんなことを考えたんですか?」


「そうだなぁ………。


 お金を稼ぐよりも、誰かの役に立ちたいって思っているからね。水不足で悩む地域に赴いて、水を提供する活動をしたいって思った時期があったね。」


 おぉ、流石アッシュさん。どこかの誰かさんとは違って、社会貢献をしたいと思っていたのか! やっぱりすごい人だな。


 なんて思っていると―――


「そんな事全く考えてなかったでしょ?


 1年生の時なんか、クラスメートの股の辺りに能力で呼び出した水をかけて遊んでたじゃん? 『やーい、おもらし小便小僧ー!』なんて言ってたせいで、何度校長室に呼ばれたんだっけ?」


「……えっと、カレンさん? それはどういう?」


 カレンさんはため息をつくと、アッシュさんを横目で睨みながら語り始めた。


「私たちは実家が隣同士で幼なじみなの。だから大体のアッシュくんの事情は耳にしているの。


 私がこの学校に来た時には、先に入学していたアッシュくんはすでに有名人だったわ。……やんちゃ坊主としてね。


 能力の才能があるのにイタズラばかりするもんだから、校長室に何度も呼び出されたってことも聞いた。


 そんな人が社会貢献を真剣に考えていたはずがないでしょ?」


「か、カレン、それは誤解だよ。


 僕は確かにイタズラしてたけど、社会貢献は本気で―――」


「サマースクールで飲み物が無くなっちゃったクラスで一番かわいい子が、『水ちょうだい』って言っても知らんふりしていたあなたが?」


 カレンさんが低めの声で言うと、アッシュさんは「うっ―――」と言ったきり固まってしまった。図星なのか……。


「ほら、社会貢献なんて最初から考えてなかったんでしょ?」


「カレンさんは、能力で一儲けしようと思ったことありますか?」


 カレンさんは「私?」と言うと、急に笑顔になった。な、何だ?


「思ったどころか、とっくにしてますよ?」


「…え? 既にしているんですか?」


「もちろん。小さな映像制作スタジオで、CGを使わないリアルな映像制作のお手伝いをしてますよ。


 時給1500円で。」


 ……まさかのカレンさんはすでに金儲けをしていたとは……。しかもそれなりに時給高いし!


「それに、校則では制限付きですけど許可が出てますよ?」


「え?」


 カレンさんが校則第40条を生徒手帳に表示させた。


『生徒は社会貢献の一環として、その能力を活用したアルバイトやボランティア活動に参加することを許可される。なお、反社会的活動(テロや暴動等)や世の中のバランスを著しく変える恐れのある活動は、これに含まれない。』


 ……まじかよ。

 呆気にとられて声も出せない。まさか能力を営利活動に使っていいなんて、よりによって校則で許可されているとは……。


「ただこれの関連校則が数年前に改正されて、補足第5条にはこう記されています。」


 カレンさんの生徒手帳に表示された校則を読むと―――


『能力を使った営利活動について


 経済的な理由による学園長からの特例措置を除き、能力を使った営利活動による利益は、その半分を学校が徴収するものとする。なお、この条文に記されたのは、健全な学生生活を送る上で必要と思われる措置であり、日本国の許可を得ている。』


 長ったらしい文章だが、要するに半分は学校に持っていかれるということだ。しかも合法的に。


「となると、カレンさんの給料は―――」


「時給750円です……。」


 カレンさんの顔が暗くなってしまった。気の毒に……日本の最低賃金の加重平均額より低いバイト代しかもらえないなんて。


「お金……もらえないの?」


 なぜかユリが涙目になってるし! 何でそこで泣くんだよ!?


「そんなにお金が欲しければ、普通のバイトをすればいいだけじゃないのか?」


「……無理、私不器用だから。」


「リンシンには言ってないよ!? ってか、稼ぐ気あるのかよ!」


「ならこうしよう!


 みんなで授業も訓練もほっといて、バイトの掛け持ちをすればいいんだよ! 何個も掛け持ちすれば、月収50万だって夢じゃないはずだ!」


「それは良い提案だアラムくん! 一緒に億万長者を目指そう!」


「アラムいつの間に!? それにアッシュさんも下らない提案に乗らないでください!」


 ……もう何が何だか。誰でもいいからこの状況をどうにかしてくれ…。


「えっと……今健全な学生生活を送る上で重要な事を放棄することを宣言したのは……どこの誰ですか?」


「!?」


 気が付くと背後で船付先生が仁王立ちしていた。先生の眉間にシワが寄って、眉が痙攣しているように見えるのは……気のせいでは無さそうだ。


「アラムとアッシュさんです。」


「リョーヤ! キミは僕らの崇高な目的を邪魔するのかい!?」


「崇高……ねぇ。それは学生生活よりも優先されるほど崇高なのね……。


 しかもそれに同調しているのが校内ランキング1位のアッシュくんだなんて。」


 船付先生の声が一層低くなった。これは確実に教育者の地雷を踏んだな。


「どっちがいいですか?


 学園長と生徒指導室で優雅なティータイムか、校内全フロアの掃除を2人だけで1週間みっちりするか。」


「うっ……お茶をもらいます。」


 2人は船付先生に背中を――物理的に押されながら、生徒指導室へと連行されて行った。



 後日、アラムに学園長と何を話したのか尋ねたが、その度に顔を真っ青にして震えるだけで何も語ってくれなかった。


 だが噂によると学園長は教育論を語り出すと、半日はお茶を飲むことはおろか、トイレにも行くことができない程熱くなるらしい。


 ……これに懲りてアラムも変なことを言わなければいいんだけど。


 そんなことを望んでも、彼の性格上その通りにはならなさそうな予感しかしないが………。

10000PV突破ありがとうございます!


第1章第1話の投稿から2ヶ月が経ちましたが、氷炎の皇剣伝、いかがでしょうか?

(番外編がごちゃごちゃ感あるのは……ご勘弁を……。)



先日、読者の方から文章の書き方について意見をいただきました。


この作品は、基本的にWeb小説読者の様々な意見を参考に文章を構成、執筆しています。読みづらい点もあるかと思いますが、意見は参考にさせていただくつもりです。


ご理解の方よろしくお願いします。



これからも氷炎の皇剣伝をよろしくお願いします!

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