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episode1-7
城内が騒がしくなってきて、朝の始まりを耳で感じていた2人は互いに上体を起こし、その身を城壁からひきはがして立ち上がった。
「では、いきますかっ」
「うん」
エクルの掛け声にフィオラは静かにうなづいた。間延びした声をフィオラがする日はこないのだろう。エクルはいつもそんなことを考えている。
「エクル?行こう?」
「ん?ああ」
惚けてるエクルに声をかけて、少しうなづく。そして、自分たちの主人の元へと、歩みを進めた。
***
「では、陛下!行って参ります!」
シアンとヴィアの声が城内に響いた。
「うむ、粗相のないようにな。まあ、ありえんだろうが……」
「はい、用心します」
シアンは苦笑いして答えた後、馬車に乗った。ヴィアが後に続いて乗り、シアンの向かい側に座った。
「シアン、よろしくお願いしますね」
「はい、姉上」
兄弟の掛け合いとは果たしてこのようなものだっただろうか。いや、この2人にはこれこそがそれというものなのである。
馬の嘶きが響き渡り、ようやく隣国ティスカ王国へ向かうのだった。