episode1-6
シアンとヴィアがまだ眠っている早朝、城の城壁にもたれかかる2つの影があった。
「シアン様はまだ準備を終えられてないんだよな……どうすればいいと思う?フィオラ」
雲の隙間から漏れ出る朝日を眺めたままエクルはつぶやいた。
「シアン様なら当日の朝までにはきちんと準備なさるのでは?」
フィオラがエクルの方を向くと、目線があってしまったので、2人は一緒に穏やかに笑った。
「そうか、そうだよなーー、よし!じゃあもう一戦交えようか!」
「うん」
傍に置いていた剣を持ちエクルは立ち上がった。フィオラもまた同じように立ち上がり、エクルと向かい合う形をとる。
定位置について、剣を構えた瞬間にエクルの顔つきが変わった。国内一の剣士。エクルと対峙した相手でなくても野次馬でさえその呼び声に納得してしまうほどだ。
剣と剣がぶつかる金属音が辺りに響く。エクルは執拗にフィオラの右側を攻めた。ふっと目を細めたフィオラを見ても、エクルの猛威は止まらない。ついにフィオラの手から剣が離れて、振り払われた剣が落ちる音を聞いた。
「勝負あり……だな!」
エクルは先ほどまでの頑なな表情を吹き飛ばすかのように満面の笑みで微笑んだ。
「エクル……。左も狙っていい」
「ああ、次からそうするな!」
左目が見えないからって敵は容赦なくかかってくるから訓練するつもりなら敵に成り切って戦え。というフィオラの不満を汲み取ったように返事をした。