episode1-4
「は?それはどういうことだ⁉︎」
早朝、フィオラから伝えられた言葉にシアンは動揺を隠せないでいた。
「ですから、陛下からのご命令です。ヴィア様と共にティスカ王国へ行き、それぞれ見合いをしてきなさいとおっしゃっておりました」
「見合いの話は聞いていたが、何故姉上も一緒なのだ。しかも俺が文句を言いたいのはそこではない。側近がお前たち2人だけとはどういうことだ!」
シアンはフィオラを責めるようにまくし立てた。フィオラはそれに動ぜず話を続けた。
「頭の痛いことに、この前ティスカの次期国王ギャリゴ様がこの国を訪れた際にヴィア様に一目惚れされたそうです。そして、側近の件ですが、あちらの王子が望んだこととは言え、彼の国とこの国は今冷戦状態にあります。身分を明かして参内となれば、恨みを持っている輩が必ず現れるでしょう。ですから、そういった方々の奇襲を受けないために身分を隠す必要があるのです」
「だから、人員は増やせないと」
「はい」
「そういうことなら………承った」
シアンは苦い顔をしながらも、膝に手をつき勢いよく立ち上がり、扉の側で惚けた顔をしているエクルに向き直った。
「エクル、お前も命令聞いてたんだろ。期日はいつになる?」
「それが、とても言いづらいのですが……」
「なんだ?」
「明後日にございます」
は?シアンの頭の中にはその言葉しか浮かばなかった。陛下のご命令を昨日大まかに聞いたとはいえ、3日で隣国へ行く準備をしろというのはさすがに無理があるとエクルでもそれを悟っていた。
「ヴィア様は、すでに準備を整えられました」
「まさか、その見合い話受けるつもりではないよな?」
シアンの発言を聞いてフィオラは顔をしかめた。
「時と場合による……と」
シアンは不満でいっぱいだった。姉上は何を考えているのか。こうなるとため息しかつけない。そもそも彼女は結婚なんて人生の一過程にしか、考えていないのだろう。女にとっての結婚ってもっと重要なものではないのか?疑問ばかりが頭の中を巡る。