episode2-8
何日かして、鳥の声でシアンは目を覚ました。起きた拍子に頭からタオルがぽとりと落ちた。ここがどこかがわからないので、カーテンを開けようとして、ベッドから降りると、ぐにゃりと何かを踏んだ感触がした。
「うおっ」
慌てて足元を見ると、1人の少女が床に丸まって小さく寝息を立てていた。ところどころに本や、なにやら書類のようなものが散らばっていたが、1番に目を引いたのはその子の長い髪だった。余裕でその子の身長ほどはありそうだ。
「この髪の長さは……珍しいな。もしかしてあの民族か?でも、数十年前に滅ぼされてしまっているはず…」
どうしてこんな状況になったのか、まるっきり理解できないが、とりあえずその子を自分が寝ていたベッドに寝かせて、毛布をかけた。
辺りを見回すと、シアンの着ていた服がたたまれていて、身につけていたものは全て新台の横の小さな机に乗せられていた。とりあえず、剣と身分証だけを手にし、再び身につける。
「んーー」
突然、ベッドにいる女が寝返りをうち、ぱちりと目を覚ました。
「わっ、へ?あっ!起きられたんですね」
飛び上がって寝台に正座している。
「その目………」
開かれた目は黄色くて、日の光で黄金色に見えた。シアンの住むパタトゥライア王国や、ここティスカ王国では目の色は黒色か、茶色であるから、その娘の目の色ははたから見ると、異様としか言えなかった。
「あ……すみません!わたし!あの、どうか…売りとばさないでくださいっ」
娘は震えて、その目の色を隠すようにぎゅっと強く目をつぶり、うずくまった。
「恩人にそんなことはしない…から安心してくれ。お前の名前は?」
シアンのことを信用しようと決めたのかその娘…ディアナは向き直って答えた。




