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 ゾディアック、オマエもか

 帰りがけに、ゾーさんに呼びとめられた。

「聞いたか」深刻な顔をしてサンライズを脇に引っ張って行く。

「ああ、聞いた」

「ヤツ、何て言ってた」

「玄界灘」

「オレにも同じギャグを使った」

「アホだな」

「まったくだ」

 ローズマリーはすでに帰ったのか、社内のどこにもいなかった。今日はまだ上司には話をしていなかったようだ。

「どうする?」ゾーさんは、かなり悩んでいるようだった。

「オレにも責任あるんだよな……」

 なんでだよ、と聞くと辛そうにこう言った。

「前回の任務、できません、って最初断ったんだよ、オレが。ヤツも断った。そしたらノギがオマエにふる、って言ったんだ、そしたらヤツ、『やっぱ、やります』って引き受けた」

 ということは、オレにも微妙に関係しているのか?

「いやいやいやいや」ゾーさんはあわてて手を振り回した。

「ちがうよ、やっぱ悪いのはオレ」何故か、真っ赤になっている。

「オレが受ければよかったんだよ、シゴト」

「でも確かそれで、あの人大ケガしたんだろ?」

 サンライズはローズマリーの言葉を思い出していた。

「さすがに、こないだみたいな失敗をするとねえ……」


 今まではケガをしても案外軽く済んでいたローズマリー(オレは、要領がいい! と常に豪語してはばからなかった)が、つい数ヶ月前、意識不明の重態で現場からドクターヘリ搬送されていた。

 頭部の手術は七時間以上もかかった。

 それでも、元々しぶとい性質なのか、奇跡的に意識が戻り、手足にも後遺症が残らずつい先日退院できたのだった。

 ローズマリーは無事に動く指先を交互にほぐしながら、再出勤早々デスクで一人、反省会を開いていた。

「あれはね、まるっきりど素人の仕業だったよ、ヤキが回ったって言うのかな」

 実際の所、ドクターストップがかかり、特務を降りざるを得なくなったらしい。

 頭蓋内にまだ大きな血腫が残っており、半年はおとなしくしているよう指示されたのだそうだ。


 ゾディアックは、そんなローズマリーに何とも声をかけられず、ずっと日々、胸を痛めていたらしい。

「ゾーさんがやっても、オレがやってもケガしてたかも知れないけど、たまたまそういうめぐり合わせだったんだって」

 サンライズはそう言ってゾディアックをなぐさめた。

「別にシゴトができないと思ったら、断るのは当然『あり』だよ」

 いつも「できません」と断っても何故か色々とやらされているサンライズだが、それでもリーダーならばそれなりに得手不得手に応じてシゴトを選ぶ権利はある、とは思っている。

 ゾディアックは四ヶ国語が堪能なおかげで、海外、しかもラテン語圏での任務が多い。

 それなりに難しいシゴトはこなしているのだからそんなに自分を卑下することはないはずなのに、今日のゾーさんは泣きそうなくらい狼狽していた。

「逃げたんだよ、オレ」

「逃げた?」

 下を向いていたゾーさん、床を見たまま小さな声で言った。

「オレ、総務に移るんだ、今度」

 がーん。今日二つ目のアッパーカット。

 しかも次の言葉が跳ね返って後頭部を直撃した。

「結婚することになってさ」

 結婚を機に特務を降りるメンバーもいるにはいるが、まさかこんなに身近にいたなんて。

「なんだ」焦りつつも、サンライズはつとめて明るい声を出す。

「よかったじゃん、めでたい話だよ」

「それでヤツがケガしたかと思うとさ。悪けりゃ死んでた」

「オレたちさあ、」なぐさめにも何もなってないが、何かというと出るセリフだ。

「特務だってなくたって、誰だってさ、いつかはお迎えが来るんだから……今回は助かったんだからさ、結果オーライだって」

 元気出せよ、ケツひっぱたくぞ、とわざと乱暴に叩く真似をした。

 こんな時に、ライトニングなら「ほぉら、元気出してくださいよぉ」などと言いながら、ちょいと『力で押す』んだろうな。

 それでも、ケツをかばいながらも「やめろ、二つに割れる」とゾーさんは少しだけ笑顔に戻った。

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