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七色の死神  作者: るびーちゃん


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1/1

死神の心予報

とある高校生カップルは、バスケ部エースのモテる男の子と、クールでかつ優しい(時には厳しい)女の子で、すでに付き合って4年が経過。…なのに、まだ一度もキス以上のことをしたことがない!

…と思ったら何やら問題があったようで、。?


そんなふたりがもたらすまっすぐな甘い物語。


──今回は(?)どうやら、受け入れることの難しさ、もどかしさを元に彼女さんの嫉妬がなにやら積極的にもたらしていくみたいですよ?

好きのそよ風が、今、私達の頬を優しく支えるように撫でた。夢ならば、まだ覚めないでほしいと願いながら。──


教室に一人、少し低いツンとした声で

「ねえ香澄かすみいるー? まだー?」

という声が響いた。

そんな声の方に僕は目を向けると

「あ、いた。──」とつぶやくと同時に、明るめな表情が一転、無表情に暗くなった。…わかりやすい彼女である。


「ごめん。”俺”もう部活行かなきゃだ。ほんとごめんね。」

「ううん大丈夫。こっちこそ仕事手伝ってもらっちゃってほんとありがとう。」──そして去り際に、俺にだけ聞こえる声量で「好き。です。」と告げてきた。


なんていう、何も変哲もない会話と、何やら彼に耳打ちをした姿が

私の目の前には繰り広げらられていた。

そして香澄が私のもとへ来るや否や

「悪いな(あかね)、わざわざ教室まで呼びに来てくれて。」と言った。

「ほんと、早く来てよ。遅刻だよ?

香澄はエースなんだからしっかりしなよ?」

「ごめんって。同じクラスの子の仕事手伝ってたんだ。いつもみたいに寝てたわけじゃないんだよ? 許して?」

「…ほんと、お人好しだよねー。

……んで、手伝ってあげた子、誰?

同じクラスであの風貌って、。

…あ。田中さん、だっけ?」

「嗚呼そうだよ。てか、あの子健気だよなー。一人で全部抱えようとするんだから。」

「へえー、健気、ねえ。

彼女はそう言いながらも目が笑っていない。

口は笑っているのに。…明らかな嫌悪感を示している。

まあそんなところも可愛いし、分かりやすくていいんだけど。

「香澄は昔からそうだよねー。そういうのほっとけないタイプだもんねー。」

一拍を置いて、彼女は続けて言う。声のトーンは変わらない。

「…けどさ、そういうの、彼女の前で他の子の話、もうちょっと気遣ってくれてもよくない?」

と、彼女は俺の袖を掴みながら言う。

「……なんて、ごめんね。変なこと言った。

香澄はいつも女の子によく話しかけられるもんね、時折その子の話が出てくるのも普通だよね。ごめん。

…早く着替えてきて? もうすぐ集合時間までそんなないよ?」…そう言って、彼女は先に体育館へ向かった。ポニーテールが揺れる。

そして更衣室の中、そそくさと着替えながら、内心僕は”しまった”と感じていた。

時折茜に他の女の子の話を出すのは彼女を嫉妬させたかったからだが、少しやりすぎただろうか。今まで指摘してこなかったところを突いてきた。


そして茜は、体育館前の扉で少しため息を吐いていた。

「……。」やばい、。…今の私、完全にめんんどくさい女だった。わかっている。彼はただ仕事を手伝っただけ。何も変なことなんてしちゃいない。彼は何回だって告白されてもすべてを断ってきた男だ。…それくらい、彼は私に一途なはず。

けれど、どうしてもあの田中さんのことはよく思い出してしまう。彼女は生徒会の人間だ。こんな私でも顔と名前を覚えている。

…にしても、そういえば彼女は最近、よく彼に話しかけている。ショートカットの黒髪で、目は大きくよく笑う。…香澄は、ああいうのがよかったりするのだろうか?私はその真逆の姿をしている。黒髪でロング。普段はメガネで目も小さく、あまり笑わない。……どうしたらいi、。ってやめやめ。何考えてんだろ私。これでも一応、付き合い始めてから笑顔が増えたと言われているんだ。自信を持とう。


──そして、俺が体育館にようやく出向くと、茜は「あっ。やっと来たね。今日のメニューきついよ?覚悟してね。」と言った。いつも笑顔である。…そう、いつもの完璧な、作り笑い。

それに対して俺は、「あいよ。じゃあちゃんと見ててくれよ、マネージャーさんっ。」と笑顔で言った。

「わかってる。ちゃんと見てるからかっこいいところ見せてよね、エースさんっ」


…今日のメニューは、本当にきつかった。茜が組んでくれてるのはいつも通りだが、マジで今回はきつめ。他の部員もぜえぜえ言う中、俺もまた、いつもの練習に比べると息を荒くしていた。


ピッというストップウォッチの音がする。

いつも取りの計測。

「はい、お疲れ様ー!

みんなちゃんと水分とってねー!」と全体に声かけをする中、そっと香澄に近づき、自前のタオルとスポドリを手渡す。

「お疲れー香澄。 やっぱ涼しい顔してるねー」

「そんなことないよ、今日のはマジできつい。」

「そ? でも今日もかっこいいよ。」…いつもの不意打ち。周りに聞こえないように小声だからか、いつもドキッとさせられる。これは何年経っても変わらない。


──そして時は19時手前。

「ねえ、早く片付け終わらせてコンビニ行こ? 今日は寄り道したい気分だから。」と、少し疲れたような表情で言った。珍しい。茜はいうも部活の仕事をしていてもさほど疲れやしない。何かあったのだろうか。ひとまず、少しでも明るくなるように少しトーンを上げて答える。

「おう。いいぞ」

あらかた片付いたところで、

「じゃあ茜はそろそろ着替えてきな。残りは俺たちで終わらせるから。」

「そ。わかった。」続け様に

「……。」”待ってる”と口パクで教えてきた。

それを見て俺は、"おう"と口パクで返す。


──そして片付けが終わり、皆と一緒に体育館を出る。すると自転車の前には

「…おっそい。何分待ったと思ってるの。」

「うーん、5分くらい?」

「15分だよっ!」なんて、口では文句を言いつつ、私はずっと彼の写真を眺めていたので"待たされた"、なんて欠片も思っちゃいない。

「ごめんごめん。ちょっとあいつらと駄弁っててさ。許して?」

「ダメです!私との貴重な時間が削れたのでダメです!!」

「えー、じゃあアイス奢るからさ、それで許して?」

「まーそれなら?許してあげないこともないけど??」と、上目遣いで告げてくる。…身長差的にそうなっちまうわけだが、4年も付き合っているせいか、この仕草が完全に意識してやっているようにしか思えなくなってしまった。


それから約三分の間、彼女は何のアイスをおごってもらうかですごく真剣そうな顔で悩んでいた。

近くに居るサラリーマンが可哀想である。

「うーん、チョコにするべきかストロベリーにするべきか否か〜!」

「はあ、両方おごってやるからさっさと買おうぜ。そこの人、困ってから。」そう言うと彼女は、ハッとしたように隣をみて”すみません”というように軽く会釈をする。

「あと、両方おごるかわりに俺にも半分くれよ?」

「うんいいよ!」


店を出て、ふと夜空を見上げると綺麗な星月夜が見えていた。

すると彼女はアイスを食べながら、「…ねえ、私が今日ヤキモチ妬いてたの気づいてたでしょ、。」

と言った。声は小さく、この静寂な夜に溶け込むような声色をしていた。

「…めんどくさいって思ったでしょ、。」…その発言は、予想外だった。

「私、明らかに嫌悪感出してたし、。」…ここは、”そんなことないよ”というべきなんだろう。というか実際そうだし。…だけれど、ここで僕は少しだけ意地悪を言った。

「まあ確かに?」と。

「……ごめんね。」と、まるで耳がたれたウサギのようにシュンとしている。

「でも私、ほんとしんどかったんだからね、。?

もう二度と言わないで欲しい。

…いや、。言ってもいいけど、その分きちんと私に構って?」…それを聞いて俺は、「わかった。」と言いながら茜の髪をわしゃわしゃする。

「わ〜! これやられると髪ぐしゃぐしゃになるんだけど!」そう言いながら、どこか笑みを浮かべているように見える。

「これすれば許されると思ってんでしょ、。」

「ハハっ、バレた?」実際思っている。しかしながら、彼女もそれをわかった上で受けている。つまりは共犯だ。


自分の髪を触り、ふと香澄の方を見上げると、香澄の顔が迫ってきた。目を瞑り、まるでキスをするかのように。それを見て私は、思わず目を瞑った。

…無論、俺が目を瞑りながら顔を近づけたのはわざとである。さっきのことをやっていると、もう少し欲が出た。…されど、本気でしようとは思っていない。なにせ、僕らはもう4年付き合っっているというのにも関わらず、一度もキスをしたことがない。…怖いのだ。そのあとが。

そして僕は彼女の髪を整える。


しばらくの間、星月夜の逆光に照らされているだけの茜が、そっと目を開いた。

「…帰る。」それだけ言って、その背中を僕に向けながら帰り道を辿る。

「…はじめてのキス、してほしかった、。」

ポツリと、そう呟きながら。

…それなりに、いい雰囲気だと思ったのに。

"今日こそは"なんて考えてたのに、どうして”いつも”途中でやめてしまうのか、なぜ唇が重ならないようにしてくるのか、まだ私にはわからない。…寂しい。

すると香澄は

「…キスしたら、茜はどうなるの?」

少し変な問いなのは確かだが、そろそろ聞かずにはいられない。いやむしろ、なんで4年も経っていて、今まで聞いてこなかったのか僕が知りたい。

「その…まずは嬉しい。ただ、その、、

…歯止めは、効かなくなりそうだなーとは、思う。」…だって、4年もお預けだし。

それを聞いて僕は、嬉しいような、、悲しいような、、。強いて言えば、損得で考えるのならば、得な情報を得たのは確かだった。


──先々に進む茜に追いついて、再び並んで帰宅する。

そしてそのまま互いの家に入る。

彼女は「…それじゃあ、今日のことはちゃんと覚えておいてね。」”何が”とは言わない。また、”おやすみ”も言わない。

……ちなみに、家は隣同士である。…王道のラブコメすぎるな。


僕が玄関に入るや否や、

「おかえりー。」とだけ、僕の母さんが発した。

「ただいまー。」と、気分が落ち込んでいるわけでもなく、かといって舞い上がっているわけでもない。なんなら、普通とも言えない。そんな形容しがたい空気感で返事をすると、

「私、ちょっとこれから茜ちゃん家に行ってくるね。」と言った。

一応、これは普通のことである。

茜ちゃん家。つまりはお隣の茜の家に行ってくるとのことだが、それぞれの親は互いに片親。向こうは母親が、こっちは父親がいないので、まるで”再婚相手”かのように接している。互いに忙しいので、僕たちのように頻繁には会って話していないのだが、互いに昔の悲劇のことを考えると、とても仲良くやってるようである。


そして、僕が珍しく母さんが作ってくれた晩御飯を食べた後、小一時間ほどソファでだらけていると、玄関が開いた。もう帰ってきたのか?と思っていると、

「ねえ香澄。今日はこっちで寝るから。」と茜が言った。…これもまた、普通のことではある。小学生の時から一緒に過ごしてきた僕たちだが、未だに茜とは同じベッドで眠ることがよくある。あるときは僕のベッドで。またあるときは茜のベッドで。その辺は、付き合い始めてからも特に変わっていないのだ。…まあ、恋人らしいことと言えばよく互いに甘えるようになったぐらいだから変化がないと言えばない。それが、僕たちの関係だった。


──そして、私が先にお風呂に入り、続いて香澄がお風呂に入る。

その間、私はいつものようにベッドでごろごろとスマホを眺めていた。ちなみに、見ていたのはYouTubeなどではない。香澄にはこっそり作った”香澄専用の写真フォルダ”である。

無論、小学生の頃のものからある。

いつも寝る前にそれをみて、ニヤニヤしながら眠っている。といっても、やはり”目の前にある”ときに限ってはそっちを見ているが。


そして僕が風呂から上がり部屋に入ると、いつものように”写真を見ていた”茜が目に映る。茜はいつも即座に画面を切り替えるため隠したがっているようだが、残念ながらいつも一瞬だけ見えてしまっている。…バスケ部エースの動体視力を舐めるなよ?……まあこいつもすごいんだけど。

そして、僕たちはいつものように眠りにつく。今日はあんな事があったとはいえ、客観的に見ても僕らの関係はかなり深い。ゆえに、特段気まずくなったりはしない。…それだけ、4年も続けられるほど、安定した心地いい関係なのだ。


──翌朝

「おはよーそろそおおきてー香澄〜」といういつもの茜のコールが聞こえて目を開ける。

すると、いつもよりもなぜか、間近に顔があった。

「起きて。朝御飯食べよ?」

「うーん。」といつものように眠たげに言う。続けて、「二度寝させて、。」というと、

「ダメ! 起きないとキスするよ!」と言ってきた。

「はいはい。起きますよー」と言い、僕は顔を洗いに洗面所へ向かう。

すると、茜はすぐさまベッドに倒れ込み、僕の枕を抱いた。ついでに、”僕の”スマホも触る。これもまあいつものこと。

ほんと、僕が最も近いときは甘々である。普段のクールはどっからきているのやら。

洗面を済ませ、着替えるために部屋へ戻る。

そして、もちろん僕も甘える。ドアの開閉音で凪はこちらを向くと、そこに僕は軽く抱きついた。……これくらいなら、僕も全然できる。というか、せっかく付き合えたのだからこれくらいはできないと寂しいものだ。

”んふふ”とニッコリと笑う。学校では出さない顔を。そしてすぐに起き上がり、僕は着替える。

「じゃあ、下で待ってるね。」と言い去ろうとした。その時僕は、

「茜、スカートめくれ上がってるぞ。」と言った。そこで少し頬を赤らめて彼女は確認する。

…結果は、めくれてなどいない。はじめから。

「めくれてないじゃんっ!」と、少し頬を膨らませて下に降りていく。

…茜は、今の発言で頬を赤らめた。僕の発言に、もしもが考えられたから。これはとどのつまり、僕のベッドで枕に抱きついた、以外のことをしたという裏付けになる。まあ今回も恐らく、僕のスマホを見ていたんだろうな。なぜだか知らないが、茜は僕の物に触れたがる。特にスマホは。


そして朝食をとっているとき、「今日の放課後、自主練で仕返しするから。」と、少しニヤニヤしながら告げてきた。…どう仕返ししてくるのか、あらかた予想はつく。だから、「はーい。じゃあ今日はよりかっこいいシュートとか決められるようにしてやるよ。」──


そうして、下足室にて。後輩部員の早乙女さおとめが話しかけてきた。

「エース先輩〜! おはようっす。そういや、

今日の練習試合の相手ってどこでしたっけ?」

「嗚呼、それなら──」被せるように、茜が答える。

「それなら、朝日高校。

去年のインターハイ予選ベスト4の強豪ね。

去年は特にディフェンスが固くて中々回り込めないかたちだったから、今日はそこね。詳しくはまた部活の時にみんなにも伝えるから。」

「うへえ、マジすか、。気合い入れないとじゃないっすか〜。こりゃあ骨が折れるなー、。」と多少文句混じりに後輩はこの場を去っていった。

「さすがの対応だな。」というと茜は、

「別に、マネージャーとして普通だし。」とさっきまで僕に向けられていた甘い表情が一転していた。さすがの切り替えである。お見事。


──そして昼休み。いつものように中庭で茜と弁当をつついていると、そこに田中がやってきた。

「あっ! 見つけましたっ!! あの!

昨日は、本当にありがとうございましたっ!

それで、”告白の件”も重ねてお礼なんですけど、──」とまで言って、茜がむせた。…まあ、そりゃそうなる。なにせ、今の言い方じゃあまるで俺が田中と恋人になったかのように聞こえる。

「……た、田中さん、。

どういう、こと? 告白って、。」…おいおい田中のやつ、やってくれたな、。なんて考えながら田中の方を見ると、、

「嗚呼、それに関してはですね。”香澄さん”、私の”友達になってください告白””を受け入れてくださったんですよっ!もう嬉しくて嬉しくてクッキーこんなにも焼いちゃいましたよっ!」と満面の笑みで答える彼女。

「…へ? とも、だち、。?」と落胆している茜の質問に対して

「…? はい。友達です。」と彼女は少し不思議そうに答える。そして、彼女は何か察したような表情はは見せて続け様に、

「安心してくださいっ!私は別に香澄さんと恋人になりたいとかじゃないですから。学校ではほぼ孤立している私を気にかけてくださった縁で友達になってもらっただけですのでっ!!」と、またもやパーっとしたはじける笑顔を見せる。続けて「てか、私彼氏いますから。」と流れるように言った。

「そ、そう、。」と、少し冷静を取り戻しつつある茜がそう言った。

「そういうことなので、茜さんもこれからよろしくお願いしますっ!」と言って、去っていってしまった。

そしてその時、茜はぷくっと頬を振らませて僕にこう言ってきた。「…私、昨日すごく不安でいっぱいだったんだけど。」と。…確かに、今になって思う。あの光景は見られたら誤解を生むだろうし、何より昨日、コンビニに行く発言の時に、少し暗いように見えたのだ。ならば、ここですることは一つ。

「ごめん。僕が迂闊だった。告白は告白でも友達関係の申し出だったから報告を忘れてたよ。」

「ううん、大丈夫。…そもそも、いつも香澄が告白される度にしつこく確認しちゃってるのが悪いんだもん。」

優しく微笑みながら、僕は言う。「…じゃあ和解ってことで。この話はおしまい! おーけー?」

「うん。おーけー。

残り、食べよ? あっあと田中さんがくれたクッキーも。」


──そして放課後。今日は朝日高校との練習試合が始まる。茜はいつものマネージャーモードになり、淡々と今日の作戦を語る。


「──いい? それじゃあ皆、頑張ってきてね。」そして、そっと俺に告げる。「…今日のお返し、ちゃんと覚えててよね。」と。それに対して俺は、「わかってる。どっちも全力でやっから。

あと、この試合でもかっこいいところ見せたいし、ちゃんと見といてくれよ?」と言う。

俺がコートに向かうとき、「…うん。頑張って。」と、俺にだけのエールを送る声が耳に響いた。


──試合開始直後から、今朝茜が言っていた通り、ディフェンスがまるで朝日に輝くダイアモンドのように硬かった。

全員が主に攻撃をしかけていたが、ディフェンスに阻まれ続けあまり入りやしない。点差は広がる一方だった。いくら香澄が動けても、チームメイトが置き去りではディフェンスが全然になってしまい今回の相手には厳しい。”ディフェンスに特化ならオフェンスに特化する。”その動き方は、少々難しいということをこの練習では皆が思い知らされていた。


そして、残り試合時間が残り10秒となった頃、

皆が疲れてiて、点差的にももう勝つことは不可能。そもそもが練習試合なので皆も命を削るように動く必要はないと完全に足が止まっていた。

──しかしそんな中、香澄だけはまだ、最後に手にしたこのボールを必死に足とともに動かしていた。なぜならば、

…俺はまだ、、俺が思うかっこいいところを見せていない、。!

故に、俺だけは最後の最後まで動く。

そして、相手は強豪だからか、たった一人の俺相手にも,極端に手加減することなく相手してくれていた。

そして俺は、”最後かと思われた”シュートを一発、決まればスリーのところで放った。…が、外した。あのディフェンスをかわすために放ったあの角度は悪く、リングに弾かれてしまった。

……しかし、それでも俺は走った。コートに立つ皆はもうただただ立っていた。なにせ、もう3秒もない。今から走っても意味などないから。

だけど、香澄は違った。

必死に走って弾かれたボールを取り、空中でそのまま”もう一度だけ”シュートを放つ。フォームもへったくれもない、不格好すぎるシュート。途中でbブザーが鳴った。試合終了の知らせ。

だがまだ最後のシュートを全員がまっすぐの目でそれを見つめていた。その時、リングのネットが揺れた。…入ったのだ。あの、不格好すぎる最後のシュートが。

一瞬の静寂のとき、ブザーの音と、ボールが跳ねる音だけが響いた。その直後、俺たちのメンバーは騒いだ。”さすがエースだ!”と。

ただその騒ぎの中、俺は見逃さなかった。

彼女が、茜が、片手にペンをギュッと握りしめながら、”…かっこよすぎ”と口を動かしていたことを。

その後、茜はマネージャーとして皆に「お疲れ様ー」と言いながらタオルやドリンクを渡す。

そして、最後に香澄のところへやってきてタオルとドリンクを渡すとともに「お疲れっ。」と躍動感のある声で言った。

「すごかったね〜ほんと。あのとき外しちゃたの見てすごくドキドキした。」

「俺もマジで焦ったよー。

あれ入んなかったら今日の自主練きつくなっちゃうからねー」と茶化しつつ俺は汗を拭った。

「けど、入ったとはいえ不格好すぎたな〜」と言い茜にタオルと渡す。

「じゃあ俺、仲間の片付け手伝ってくる」と言って俺は茜のそばから離れる。

そしてそのとき、茜はこっそりそのタオルを一瞬堪能していた。

田中はこのとき、完全に見てはいけないものを見てしまった。手を口で覆う。…初心か。

むろん、茜はその事に気づいていない。タオルに顔を埋めて、一瞬目を閉じて香りを堪能した。…変態か。


そして片付けを終え、二人だけの自主練が始まった。

「それじゃあひとまず、ミドルの精度をあげよ。」

「おう」と俺が返事をして何本か決めた。一応言っておくと、茜も相当うまい。だからこそ相手は身長が低いとはいえ嬉しいものは嬉しい。

そして、転がったボールを拾い上げて茜は言う。

「…十本勝負しようよ。

一本交代でより多くシュート決めれた方の勝ち。負けたら勝った方の言う事を何でも一つ聞くってことで。おーけー?」

「おーけー、乗った。」…結束、俺が四本、茜が三本で俺の勝ちだった。

すると茜は「…ずるいー、。」と顔をしかめた。何がずるいのだ、正当だっただろうが。

「…んで、何をお願いしてくるの?」

「…じゃあ、失礼して、。」と言い、流れるようにおでこにキスをする。…数秒、彼女は耳を赤らめて立ち尽くしていた。そして、”にへえ”とした笑顔を見せてきた。一応、口づけではないものの、キスをしたのは初めてだった。前からこんなゲームはやっていたが、その都度何かしらものをおごらせることが大半だったのでこの形式をとったことにも驚きだったのだろう。すると、

「え…あっ……ありがと、。」と口をパクパクさせながら言っていた。

「えーと、すまん。帰るか。」というと茜は、「…うん。」と小さく頷いた。


──そして夜、僕らはいつもの距離感を取り戻し、普通に楽しくゲームを遊んでいた。

「うわ! ちょっ! 今の当たってるでしょ!! ねえ香澄ー!」

「ハハっ。」と。僕は笑いながら茜の頭を撫でる。

ついでに「もう寝るか?」とも言った。

「…うん。寝る。」と少し悲しげにそう言った。

そしてベッドに潜ると、「ね、抱きついてもいい?」と珍しく茜から甘えてきた。

「いいけど、僕はもう眠たいから寝るよ?」

「えー」と口では文句を言いながらも、茜の口角は上がっている。寝ていようがひっつく、という意思表示だろう。



────しばらく時が経ち、二人とも眠ることなくベッドに仰向けでいると、不意に茜は「…今日の、、練習終わりのとき、、、あのとき、。

…その勢いで、もっとしてほしかった、。

……そのまま、押し倒されたかった、。」と言ってきた。

それを聞いて僕は、確かにそのシチュエーションもいいなーとは思った。「…けど、」と言いながら、僕は彼女を押し倒すかたちにして、

「……確かにそういうのもを憧れるけどさ、茜のそういう顔、もしもでも見られたくないから、そこがネックなシチュなんだよね。」と言った。すると茜は、ゆっくりと口を開けて、何もも発さずに、まぶたとともにゆっくりと口を閉じる。茜からみれば、今は完全に無防備。おまけに視界も影に落ちている。一秒という短くも長い時が過ぎてから、茜はやっと

「…ネックって、なにそれ」と、笑みを浮かべながら、まるで懇願するかのように声を漏らした。

そこに僕は、右手を彼女の頬に当てながら

「要約すると、今なら誰にも見られないよねって話。」

頬に当てられた彼の手に私の手を添えながら

「…しよ?」と、とろんとした目で僕に告げてきた。──だから僕は…。……僕らは、初めての口づけをした。

一度してからは、もう遅い。

二人とも、、リミッターは外れた。何度も繰り返した。途中変化を加えてみたり、…それこそ、服を脱がせたり。


──やがて、僕は彼女が下着姿になったところで手を止めた。…震えながら。

そしてかわりに、口を開いた。

「…ねえ、僕と、どこまでしたいの?」


──空気が少し変わった。「…この先も。」と茜は答える。さっきまで、私の言葉で始まったのだ。嫌なわけがなかった。

…されど、彼は告げる。これから先の、最も大事なことを。

「…正直僕は、これより先のことは気持ち悪いと思っていた。……昔、僕は小さかった頃、実の姉に襲われたんだ。…もちろん性的なことで。今でも鮮明に覚えてる。あんなに親しんでた人が、めちゃくちゃ大好きだったお姉ちゃんが、気持ち悪い獣と化してた。…確かに、今思えばブラコン気質だったけど、まさかあんなことを実行するだなんて思いやしなかった。

…今はもう、離婚して、父親に引き取られていったからここにはいない。それでも、あのときの記憶は、僕の脳に、大好きだったお姉ちゃんとの思い出とともに絡みついて、トラウマと化して取れない。」


──空気が一変した。今この場には、甘いとは違う、何かがずっしりと漂っていた。

「だから、もう一度聞くよ。

…僕と、どこまでしたい?」

じっと、一切の余所見をせずに、香澄の目を見つめながら、乱れた呼吸を整える。

私は、香澄のこのことを全く知らなかったわけじゃない。小学校からの付き合いだ。けれど、ずっと昔から抱えていた、大事にしていた、まるでピースが欠けたようになくなっていたアルバムの、失われた期間の思い出が、今ここで初めて、繋がった。

「…私は、キスとかハグとか、手をつなぐとか、そういう触れ合いで、十分だよ?

香澄が嫌なことはしない。絶対に。」

「…ほんとに、、、それでいいの?

僕だって、茜だって、そういう欲はんないわけじゃないでしょ?

だからさっきまで僕は、。茜なら、

……茜なら、、、トラウマを、きっと超えられると思って、君に手を出した。

…だけど、やっぱり怖かったんだ。茜は、どっちかと言ったら男勝りな性格でしょ?だから、余計に、あのときの、姉のことが強烈に思い浮かんでしまう。」

「それでいいんだよ。」──部屋の、時計の刻む音だけが、静かに鳴っていた。

茜は起き上がり、ブランケットを羽織る。

肌を隠すのではなく、ただ単に寒くなってきただけである。…そして、一拍の時を挟んでから、茜は言った。

「…トラウマを、超えなきゃいけないものなんてある? …ないよ。

だから、いいんだよ。もちろん私も、香澄も、そういう欲はある。だって私たちもう4年も恋人なんだもん。だけど、だからこそさ、我慢できる。そうでしょ?

だって、私たちもう十分なんじゃん。無理に十二分に欲を満たす必要はない。」


…茜の心臓は、まだ高鳴っていた。だけど、それでも、彼女の自制心は凄まじいものだった。

「香澄が、触りたい時に、触りたいところを触ってよ。私もそうするから。…それで、私も十分だから。」

茜の顔は、まるで欠けていたピースが揃ったように透き通っていて、解けた顔をしていた。

きっと、不安でしかなかっただろう。なにせ、4年間もの間、お預け状態だったのだから。

そこで僕は、彼女のブランケットをどかした。

むろん、下着は脱がさない。…そんなことを、今する必要は皆無なのだから。

抱いたまま横になると、「あったかい。」と、ぽつりと、そんな子供みたいな感想が、茜の口からこぼれた。


──翌朝、はだけた様子の2人は目を開けた。カーテンの隙間から差してくる、柔らかな赤い笑みとともに。

茜が先に起き上がって、こう言った。

「起きてー香澄。 寝てたら今日一日が損だよー?」と。安らかな笑顔で。まるで、最低なあれを忘れたかのように、されどきっちり覚えている様子で。


──続けて、茜は言う。

「朝ごはん、フレンチトーストでいい?」

「うん。…あっ、ヨーグルトも欲しい。」

「了解。プレーンでいいよね。」と言って、、茜は部屋を出て階段を下る。

続け様に、当たり前の生活の音が流れた。


一人まだ部屋にいる俺は、じっと、一切の余所見をせずに、ドアを見つめて、ぼそっと呟くように言った。

「…どうか神様、今日は味方してください。」と。。──

お読みいただきありがとうございますっ!

最後の方、ちょっと「おや?」となるシーンを持ってきましたが、安心してくださいっ!普段バッドエンドばかりの私ですが! 今回は! 絶対に! ハッピーエンドにしますっ!(じゃなきゃ私が嫌です)ってことで、次回以降はもっと関係が深まったり甘い物語を展開していく所存ですので、良かったら反応等、よろしくお願いしますっ!

それではまた。

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