重みある言葉
一言にかかる重さは何グラム?
小さい頃から周りの人が伝える『言葉』に、手応えを感じていた一文紬。
彼は無意識に、言葉の重みを体内から感じとる力があるらしい。
繊細な性質だからだろうか、一言一言にとても敏感な少年なのだ。
休み時間、紬がいつものように席で本を読んでいると、突然静寂を破る音が響いた。
〈ガシャアアアン‼〉
教室にいた生徒たち、全員が音がした場所へと目線を向ける。
教卓から一輪差しが落ちたらしく、それの破片、水、百合が一輪、床に散らばっていた。
どうやら近くで雑談していた二人の男子が、ぶつけて落としたようだ。
「大変……!」
紬が席を立ち上がろうとした時、周りの生徒たちが動きに入った。
ある生徒は雑巾とバケツを取りに走り、ある生徒は箒とちり取りを取りに走り、ある生徒は袋を取りに走った。
他の生徒たちは破片を入れやすいように袋の口を広げたり、破片を包む新聞紙を道具箱から出してきたりと、各々自ら進んで動いた。
紬も雑巾で床を吹き上げ、誰からともなく片付けを済ましていった。
「軍手あるよ。
破片を包む時、はめて」
「花は別の容器に移したよ」
「破片、捨てに行くから先生に声かけて行くね」
片付けを手早く済ませ戻ってきた先生へと事情を話した後、生徒一同声を揃えた。
〈ごめんなさい〉
『ごめんなさい』の意味は色々ある。
一輪差しを落とした事、日直の人が一輪差しを移動させずにいた事、予測しないで放置していた事、沢山の『ごめんなさい』の言葉は、紬の体内に重く響いたが、その重さは幸せになる元だった。
中身がある言葉は∞