第82話 終末世界
「エル!無事ですか!?」
崩れかけの大聖堂の中、その砂の上を駆けてセシリアが近付く。
「うん、大丈夫」
セシリア達も一緒に居ることに安心しつつ、そう返事をする。
場所は先ほどと変わらず大聖堂の内部、だがその様子は酷く荒廃しており先ほどと全然違う。
ひとまずこの大聖堂から外に出ようと入り口を見れば完全に砂に埋もれてしまっている。
他に出れる所は無いかと見たところ、入り口近くの窓の上の方が割れていてそこから出れそうだ。
幸い積もった砂が足場になっているので難なく出れた。
「何が起こったの……?」
外に出て、周囲を見渡して俺達は再び驚愕した。
砂に沈んだエオニア……いや世界そのものが滅び、砂に沈んでいたのだ。
そんな世界でもちらほらとアンコニュの姿は見える。
「幻……では無いわね、確かに存在しているわ」
魔法に長けたオリヴィアさんがそう言うなら、此処は間違いなく現実だろう。
アンコニュに見つからない様にゆっくりと俺達は動き出す。
目指すは怪しい穴のあった大聖堂の鐘の塔。
とはいえ、大聖堂のその殆どが砂に埋もれている訳で自分達の居た大聖堂の入り口から大凡の位置を割り出さなければいけなかったが。
そうして砂を踏みしめて移動すると丁度鐘の部分だけ露出した塔の残骸を発見、そしてその背後に例の穴があった。
砂で埋もれた事で鐘の塔と謎の穴が陸続きになっていた、これなら近付けそうだ。
「見て下さいっ!アンコニュが!」
ユースティアの指差す先を見ればあの謎の穴へアンコニュが入っていくのが見えた。
「あれがアンコニュが出現していた原因か」
となると此処は俺達の居た世界とは別世界…?
「原因は分かったけれど、解決方法が未だ不明……」
ステラの言う通り、まだ解決する術が見つかっていない。
そもそもどうやって閉じるかと言う話。
取り敢えずは周囲のアンコニュの排除を……
━━━エル
「っ!?」
「エル?どうしたのですか?」
名を呼ばれ、勢い良く振り向くもそこにはリュミエール隊のお姉さん達が居るだけ。
聞き間違いなんかじゃない、確かに聞こえた。
夢の中でただ優しく抱きしめ傍に居てくれたあの人の声が。
「っ!?エルッ!!」
居るんだ、此処に。
きっと、此処で待ってるんだ。
俺が殺しに来るのを。
俺の身体はまるで何かに弾かれたかの様に動き出し、砂に埋もれた鐘の塔の残骸の斜面を転がる様に下り、大聖堂からエオニア市街へと向かう。
砂に埋もれたとは言え、全てが全て埋もれたわけではないけれど大部分が埋もれた事でかなり短距離で市街を駆け抜けれる。
エオニア市街から旧市街をへと進み、そのまま外を目指す。
迷いそうなものだけど不思議と何処へ向かえば良いか分かる。
導かれているのだろうか。
そしてちらほら居たはずのアンコニュはその姿を忽然と消していた。
邪魔にならないだけまだマシか。
遠くに見える枯れ果てた聖樹を正面にひたすら走り続け、そしてようやく辿り着いた。
砂に埋もれ、枯れ果てた聖樹を背景に鎮座する完全の赤毛の獣。
「約束、果たしに来たよ」
その言葉を聞いた赤毛の獣はゆっくりと身体を起こした。
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セシリアSide
「っ!」
突如走り出したエル。
私達もその後を追おうとしましたがエルと分断するかのようにアンコニュが立ちはだかりました。
「セシリアちゃん、此処は私達に任せてそのままエルを追って」
「ですが……!」
「夫の背を守るのも妻の務めよ、私達はこれから帰るための退路を守るから」
「……分かりましたっ!」
魔女さんとセレーネ様の言葉に甘え、私は単独でエルの後を追います。
セレーネ様が居れば暫くの間は魔力に困りませんし魔女さんも居ることから守りは堅牢でしょう、しかしそれでも余り時間は掛けられません。
既に私とエルの間に居たアンコニュは魔女さんの魔法によって一掃され、阻む者は居ません。
疲れを知らぬ様に今なお走り続けるエルに引き離されないよう砂の上を走り続け、ようやく止まったエルの隣に立ちます。
「あ、セシリア……」
「はぁ……はぁ……エル……後でお話しましょうね……」
「は、はい……」
約束が大事なのは分かりますが一人で突っ走るのは良くありません。
ですので後でその事を皆と一緒に説教です。
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オリヴィアSide
「行ったわね」
エルを追いかけ走るセシリアちゃんの後ろ姿を確認しつつこちらに迫るアンコニュに向け氷の礫を放ち倒す。
セレーネ様は既に奇跡の行使を行い周囲を浄化し土地の力を取り戻させ魔力を発生させてくれている。
神の結晶苗木が出来るのだからそれを生み出したセレーネ様に出来ない訳無いわよね、けれど自身は絶えず奇跡を行使し続ける為疲労はどんどん溜まるでしょう。
まぁ最悪の場合はライフルに切り替えて戦えば良いし、今の内に防御陣地も形成した方が良さそうね。
「さぁ貴方達!此処が正念場よ!」
「「「「「「おぉ!!!!!」」」」」」
戦場に響く鬨の声、士気は問題なさそうね。
私やリュミエール隊の娘達から放たれる魔法の音にアンコニュがどんどん引き寄せられてくる。
恐らくだけれどあの謎の穴が私達の世界へと繋がる唯一の出入り口、つまり私達は退路を確保する為あの穴を確保する必要がある。
けれど人手が足りない、ならばどうするか。
「苦手とか言ってられないものね……」
人員を増やせば良い。
今から作るのはゴーレム、有難いことに材料は自分達の足元に腐るほどある。
魔法で砂を人型に生成し、剣や弓、槍等も生成して武器を持たせる。
そうして何体か作ったら謎の穴の方へと行かせれば良い。
ゴーレムには予めアンコニュを相手するよう情報を与えて置いたから自動でアンコニュを相手してくれるわ。
その後も何体か作り私達の周囲とセシリアちゃん達の方へと向かわせる。
「一度謎の穴を確保しに行くわよ!」
「分かったわ!」
砂のゴーレムだけでは確保は厳しい、その為私達が謎の穴付近まで移動、制圧して防御陣地を形成しつつ退路を確保することにした。
謎の穴周辺の確保は難なく終えたので後は防御陣地を作りつつ砂のゴーレムを量産しセシリアちゃん達の退路を確保する。




