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Combat・ with・The・unknown  作者: 唯ノ蒼月
序章 はじまりの序曲

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第8話 ひしめき合う仮想の空

フィーニス帝国・プルーネル邸。


立派な屋敷の1室。広間にて2人の男性がテーブルを挟んで向かい合っていた。


「何を言う気だ」


白髪がの男性は酷く怯えた様子で軍服を着た男性にそう伝える。

軍人はその手にフィーニス帝国の国旗と軍服を持っていた。


「すみません……これが私の……私に与えられた任務なんです」


「なんだ……何を言うつもりだっ?」


軍人の言葉を遮る白髪の男性、その声は酷く震えていた。


「貴方の息子さんの……国に対する献身と……そして多くの苦労に」


「まさか俺の考えている事を言うつもりか?」


白髪の男性が再び軍人の言葉を遮る。

彼は怯えているのだ、軍人の伝えようとしている言葉に。


「すみません……本当にすみません……」


「くぅっ……君が言おうとしているのは、はぁ、君はそれが俺の息子だと言うのかっ?うぅ……うっ……うぅ……その軍服が息子のものだって言うのかっ?」


白髪の男が軍人の持つ国旗と軍服を指差し、涙声で聞いた。


「息子さんは国の為に、命を捧げました……」


軍人はそう言って白髪の男に国旗と軍服を手渡す。


「もう聞きたくない……うぅ……わぁぁぁ……」


白髪の男は国旗と軍服を受け取ると抱きしめ、その場に崩れ落ちた。

白髪の男の息子、カインが国の為に命を捧げた、と言う事実は無く実際は自分の夢を叶えたくて半ば強引に試験機に乗りその結果亡くなっただけである。

だが時には真実よりも嘘が必要なの時もあるのだ。


白髪の男も試験機の墜落は知っていた、カインが撮っていた記録魔導具の映像が墜落の衝撃で誤作動を起こし全国に放映されたからである。

だがまさかその試験機に自分の息子が乗っているなんて夢にも思わなかったのだ。


「カインはただ空が好きだっただけなのに……!くぅ……うぁぁぁぁ……」


その部屋には、軍服を抱きしめ涙を流す父親の慟哭だけが響いた。







時は巡り緑が芽吹く季節となり俺は14歳となった、生産中だった戦闘機も完成し5機全てが納品された。

そして俺はたった今その最後の1機の試験運転を完了した。

格納庫に一式を止め、当たり前の様ににこやかな笑顔で手を広げて待つセシリアに向かって飛び降り抱きかかえてもらう。

セシリアは俺を降ろさず抱きかかえたまま隣の格納庫へと向かう。

向かう先はシミュレーションの機械。

扉を開けて壊れ、修復、改修中の試験機の横を通り過ぎシミュレーションの下まで運んで貰ったら降ろしてもらい椅子に座る。


今からやるのはシミュレーションでの対戦。

戦闘機の試運転中に通信でベオが教えてくれた事なんだけど1ヶ月くらい前から連合の選りすぐりがシミュレーションで対戦してるらしい。

なんの為か、それは此処に置いてある5機の一式空中戦闘機のパイロットを選ぶ為である。

シミュレーションの上位5名がそのパイロットに選ばれる。

それでどういう訳か、ベオからやってみるか、と誘われた訳で何故かセシリアやエミリーがやると答えたんだよね。


ちなみにフィーユは魔法使い達のリーダーと言う事でヴィンセント魔法大国に帰国しててエミリーと数名の魔法使い達がこの基地の防衛部隊として残ってくれた、有り難いことだね。

また地上の防衛部隊としてセシリアを隊長としたエルフの部隊も出来た。

セシリアは良くても他のエルフが嫌じゃ無いのかなって思ったけど皆喜んでた。

直ぐにすぐ祖国を取り返せないけど確実に取り戻す為に力を蓄える時間と考えているらしい、また雨風凌げてご飯も出て入浴も出来るから文句は無いらしい。


またステラとサリーネも共同で少数精鋭の地上隊を創設したとかクランクさん越しに聞いた、知り合い全員が部隊を持った中俺だけ部隊が無いがまぁ俺の役目は試験機のテストパイロットだから部隊なんて出来ないだろうけど、仮に出来ても足引っ張る自信しかないよ。


そんなこんなでシミュレーションを始める。

操縦桿を握り緑色の文字で書かれた【START】を選択して引き金を引く。

画面が暗転し、暫くすれば滑走路が映し出された。


【ロストが参戦しました】


画面左上にそう表示される。

上空を見れば数多くの一式空中戦闘機が戦っていた。


Beo《問題なく入ってこれたようだな》


「うん、これから空に上がってあの人達の相手すれば良いの?」


ベオからの通信に返事をし、これからやる事を確認しつつスロットルレバーを操作し発進、空へと上がる。


《ロスト……?》


《亡くなった筈では……?》


《本物かどうかはこれから分かるさ》


空に上がり他の戦闘機達と接近すると通信から他のパイロット達から動揺する声が聞こえてきた。

基地襲撃の映像は誤作動により連合全てに流れた事から【失敗作ことロストは亡くなった】って噂されたくらいだからね、またその真偽は一部にしか分からないし伝わらないからね。

にしてもシミュレーションとはいえこうして通信越しに話せるのは凄いよね。


《もらった!》


早速後ろに1機付いたから旋回し回避行動を取ってみる、シミュレーションの画面に映し出された後方確認用の窓にはしっかりとその旋回に付いて来ている。


《クソッ……試作機なのになんて速さだっ!》


残念ながら戦闘機と試作機に差は殆ど無いんだよねこれが。


「凄い狙われてますね」


Beo《試作機のテストパイロットであり、試作機、一式空中戦闘機でアンコニュと実戦を経験したから撃墜すればボーナスが付くんだ》


「何してんの勝手に?!」


セシリアの疑問にベオとんでもない事実を答えた、真面目に何してくれてんの、無駄に狙われるような事してくれちゃってさぁ。


あまりにも多くに狙われるから高高度から急降下し速度を落とさず乱立する岩山の間に逃げ込む。

その数秒後画面左上に墜落の文字が大量に表示された。


「えへへ、やったね」


「エル今すっごい悪い顔してますよ、お姉ちゃんはそんな風に育てた覚えないですよ」


「君はいつからお姉ちゃんになったんだいセシリア」


セシリアとは別の声に振り向いて見ればそこにはエミリーが呆れたような顔をして立っていた。

少し話をしようと思い、行儀悪いけど画面を見ながらエミリーに話しかけることにした。


「お疲れ様エミリー、訓練はもう良いの?」


「うん、今日はもう良いかな、皆エルの事が気になって集中出来てないし」


「ほむ?」


何が気になるのだろうか、特に気になる様な事はしてないはずだけど。

あれかな、現在進行形でやってるこのシミュレーションが気になるのかな。


「連合中の選りすぐりの猛者を相手にどれだけ暴れるか皆楽しみにしてるんだよね〜整備のおやっさんがシミュレーションの俯瞰視点やコックピット視点とかを広間や食堂の大画面で見れるよう接続してくれたし」


なんか知らない内にネタにされてる件について。

別にそんなに暴れられるとは思えないけどなぁ。


そんなふうにエミリーの話に耳を傾けながらも目の前の戦闘機達を撃ち落として行く。

追ってくる数が多ければまた急降下して岩山の間に逃げての繰り返し。


「「これは酷い……」」


それを見てセシリアとエミリーの2人が同時に呟いた。

別に酷くないでしょ、これも立派な戦術だよきっと。


《この強さ……本物だ……》


《やはり死んだと言う情報は嘘でしたか》


《これ程の強さ……やり甲斐があると言うもの!》


再び通信機がパイロット達の声を拾う。

聞こえてきた声の中には少女の声もあり、パイロットの中に少女も居るようで少し驚いた。

それとなんか相手は逆にやる気が出てきたようだ。


背後を取ってきた相手の射線から逃れる為に旋回や機体姿勢を急激にピッチアップして迎角を90度近く取りつつ減速し再び水平飛行に戻す、ベオ曰くコブラ機動と言うもので相手を追い越させその背後を取る。


《なんだよ今の動き━━!》


喋っている途中で申し訳無かったけど撃墜したことで通信機から聞こえた声は雑音と共に消えた。

こんな所まで再現しなくても良いのに。

再現と言えばこのシミュレーション、Gは再現せずにやってるんだよね、魔法で再現出来るはずだからすれば良いのに。


相手と戦闘しながら観察して分かったけど1人1人機体の武装が異なるんだね。

俺は今まで扱ってた機首の30mm機関砲2門と魔力砲の1門だけなんだけど他の機体は両翼にも機関砲を付けてたり、胴体の下に爆弾を装備してたりしてる。

中には二人乗り仕様の戦闘機で後部座席に機銃が装備されてて後方に向かって攻撃できる機体もあった、ちゃんと2人で操作してるらしく撃墜すれば2人分名前が表示されてる。


「試運転した一式には装備されてなかったけど追加装備出来るって事かな?」


「整備の方達が言ってましたけど、上が試作品を作っているらしく恐らくそれでは無いでしょうか」


試作品の武装をシミュレーションで使うのは良いけどシミュレーションと現実で試作品の武装の効果が異なる事もあるだろうからせめてその武装も試験してから反映すれば良いのに。

というか俺だけなんの追加武装とか無しなんだけど、何かしら使えないのだろうか。


両翼に機銃やら機関砲を追加装備するのはいい案かな、手数が増えてその分の瞬間火力も上がるから。

現に狙われてそれらを一斉に放たれると結構ドキドキするし。


操縦桿を引き高度を上げて雲の中へと突っ込み、雲を隠れ蓑にして後方の相手を撒く。

ちらりと左上のシミュレーションのランキングを確認するといつの間にやら20位内に入っていた。


「確か総勢で100人近くいたよね……こんなに早く上がるものなの?」


Beo《実戦を経験したエルとシミュレーションだけの者では差が開くものだ、戦闘機や試験機に乗ってる時間も圧倒的にエルが多いからな、それにしたって凄いことだ、流石だエル》


ベオに褒められて少しむず痒さを感じつつも操縦桿を操り雲の中から抜け下で戦闘中の戦闘機達に上から機関砲の雨を降らせる。


「2機撃墜ですね、流石ですエル」


セシリアからも褒められた、やったね。


シミュレーションだから弾切れにならないのも良いよね、現実だと弾切れは勿論弾詰まりとかも起こるけど。


そうしてシミュレーションをする事数十分、この中で数名腕のいい奴が居る。


俺と相手が互いに相手の後尾につこうとして旋回を繰り返す間に相手の名前とランキングを調べる。


「1位、クーデリア・オルドリッジ……女の子か」


ランキング1位のクーデリアさんとの巴戦をなんとか制しその背後を取る、ちらりと上を見れば上空から急降下しながら機関砲をばら撒いてくる一機が居た為クーデリアさんを追うのをやめてコブラ機動で機首を起こして弾丸を避けつつそのまま反転する。


「2位、ジェームズ・マルティネス、男の子」


james(ジェームズ)《気付かれたっ!?》


通信からジェームズ君の驚きの声が聞こえてきた、上空からの奇襲が気付かれるとは思わなかったみたいだね。

そのままクーデリアさんとジェームズ君から離れると少し離れた所から此方の様子を伺っていた2機と向かい合う形となった。


「3位のソフィー・アンダーソンに4位のヴィクトリア・ガルシア」


Sofie(ソフィー)《此方に来るっ?!》


Victoria(ヴィクトリア)《焦らないでっ!》


2人の女の子の慌てる声が聞こえる、このシミュレーションを通して仲良くなったのかな?

2人の内比較的冷静なヴィクトリアさんに照準を合わせ機関砲をコックピットに叩き込みそのまま擦れ違う。


【ヴィクトリア・ガルシア、撃墜】


Sofie(ソフィー)《ヴィクトリア?!》


慌てるソフィーさん、今なら容易く倒せるが俺は回避行動を取る。

理由は簡単、ジェームズ君の時と同様に上から狙っているのが1人居るから。

予測通りさっきまでの進路先に弾丸の雨が降ってきてそのまま俺の背後に一機取り付いた。


「5位テレサ・オースティン、上位陣女の子ばかりだね、凄いや」


Teresa(テレサ)《狙いは確かなのになぜ当たらないのですかっ?!》


テレサさんの驚きの声を聞きながら回避行動を取って弾丸を躱す。


《貰った!》


Teresa(テレサ)《邪魔しないでくださいっ!》


6位のカイ・ゾルテック君がテレサさんの背後を取ってくれたお陰で俺は容易くテレサさんから逃れられた。

代わりにカイ君テレサさんに一瞬で撃墜されたけど。

こうしてみるに1位から5位が他と差を付けて強いね。


Kudelia(クーデリア)《貴方達!今だけで良いので!この瞬間だけチーム組みましょう!》


《乗った!》


クーデリアさんの呼び掛けにジェームズ君が応えた、他の3人も了承したみたい。

つまり対多数戦って事かぁ……。


Cecilia(セシリア)《なら私達もチーム戦で対抗といきましょう♪》


通信機からセシリアの弾んだ声音が聞こえてきて、チラリと後ろを見れば既にセシリアとエミリーの姿はない、司令部の通信設備をこのシミュレーションに繋いで現実と同じ要領で支援をするのかな。

司令部の各機能のシミュレーションもやれるからこの戦闘における支援もきっと可能なんだろう。


「俺だけ支援受けるのもなんか駄目な気が……」


Crank(クランク)《1対多数なんだ、支援くらい問題無いだろう。実際に相手するのはエル1人でなんだから》


そう言われるとそうだけど……。


Beo(ベオ)《お前達もそれで異議はないな?》


Kudelia(クーデリア)《望むところです!》


クーデリアさん滅茶苦茶やる気満々なんだけど。


そうして始まった1対5。

俺とクーデリアさん達との通信システムをシャットダウンし互いに声は聞こえない様にする。

これにより俺はクーデリアさん達の通信でのやり取りは聞こえなくなった為どういう連携をするかは不明となる。


5機の戦闘機、その内の一機が背後を取ろうと仕掛けてきた。


5人の中で1番上手いクーデリアさんが俺と戦闘する間残りの4人がどう仕掛けてくるか。


Cecilia《相手2機の高度の上昇を確認、残り2機は同高度で散開し左右に別れエルの後方上空を陣取ってますね》


「上に上がったのはジェームズ君とテレサさんかな」


隙を伺って同時に急降下して機関砲を撃ってくる気かな?

後方上空を飛ぶソフィーさんとヴィクトリアさんはクーデリアさんの援護か。

まずは後ろをピッタリくっついて来るクーデリアさんを撃破しようか。


「クーデリアさんに仕掛ける」


Cecilia《分かりました》


通信でこれから攻勢を仕掛ける事を伝えて他の子達の動機を監視してもらう事でクーデリアさんだけに集中する。


スロットルレバーを全開にして全速力で直進し、少しだけクーデリアさんとの距離を開く。クーデリアさんもそれに気付き直ぐに全速力で追ってくるだろうその前に急速に速度を落としつつ機首を上げる、この時ほんの少しだけ高度を上げておく。


Kudelia(クーデリア)《なっ?!》


開いた距離、ほんの少し上がった高度からの急減速の後転。それにより互いに正面を向き合うその一瞬でクーデリアさんに照準を定めトリガーを引く。


【クーデリア・オルドリッジ、撃墜】


爆風の中を突っ切り後方に居る2人へと向かう。それに誘われたテレサさんが急降下を開始。

この時俺はソフィーさんの少し上を飛んでいた、そして速度を調整しタイミングを合わせることでこういう事が起こるんだ。

テレサさんからの発射される機関砲と機銃の掃射を旋回で避けたその瞬間。


Sofie(ソフィー)《きゃぁ?!》


【ソフィー・アンダーソン、撃墜】


Teresa(テレサ)《嘘っ?!》


ソフィーさんに弾丸の嵐が降り注ぎ撃墜。

そのままヴィクトリアさんの横を通り過ぎて距離を取りつつ後方を確認。

残った3機が集まって編隊を組んだのを見て操縦桿の頭のカバーを外し中にあるスイッチを親指で押す。前面に緑色の文字で【魔力充填率━0%】と表示されるのを確認した。

そのまま魔力充填率が100%になるまでひたすら全速力で逃げ続ける。

その間に復帰したクーデリアさんとソフィーさんが合流を果たした。


【魔力充填率━100%】


「これで終わりっ!」


先ほどと同じ様に急速後転をして照準を合わせボタンを離す。


前面に書かれていた緑色の文字の消失と共に放たれた赤く大きな魔力の塊が目の前のクーデリアさん達を巻き込み、包み込むように飛んでいき消失する。


目の前にいたクーデリアさん達は赤い魔力の塊の直撃を受け爆発、撃墜に成功した。

こうしてクーデリアさん達との対多数戦は俺の勝ちで終わりを告げた。

そして戦闘機のパイロットの選別シミュレーションも終わりを向えたらしく、画面に最終ランキングが表示された。


1位 ロスト


2位 クーデリア・オルドリッジ


3位 ジェームズ・マルティネス


4位 ソフィー・アンダーソン


5位 ヴィクトリア・ガルシア


6位 テレサ・オースティン


7位 シャルル・フォン・フィーニス


8位 カイ・ゾルテック


9位 ギナ・バーンスタイン


10位 ブルク・レーゲン


以上がランキングトップ10名の様だ。

途中参戦で1位を取ってしまったがクーデリアさん含む全員が問題なく認めていた。


またランキングから分かるように2位のクーデリアさんから6位のテレサさんの5名が一式空中戦闘機のパイロットとして選ばれる事となったね。

俺?俺はどこまでいってもテストパイロットだよ。

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