第79話 古都エオニア
古都エオニア。
古い石造りの街並みに石畳の道がある古い都、此処こそが神血教会の総本山であり、俺達の調査する場所である。
当たり前だが現在此処はアンコニュの出現を確認した事で封鎖中であり、人の気配は一切ない。
古都を囲う城壁の向こうに居るのは異形の生命体、アンコニュだけだ。
俺達は古都エオニアの外に支援拠点を設けてから調査に赴く。
外に設ける理由は単純に古都エオニアの中でアンコニュが出現しているから。
古都エオニアの何処で出現しているかも分からない状況で内部に拠点を設けた際に、何かしらの緊急時にその支援拠点内でアンコニュが出現したら支援どころでは無いからだ。
勿論古都エオニアの外だから安全と言う事でもないが内部よりは遥かに安全だ。
怖いほど静かな古都エオニアを歩く。
丁度良い、古都エオニアの構成について簡単に話そうか。
古都エオニアは3つの区画に分かれている。
旧市街、エオニアの大聖堂を見上げる大きな噴水広場があるエオニア市街、そして神血教会の総本山であり高台に設けられたエオニアの大聖堂。
旧市街からはエオニア市街へと行ける。
高台にあるエオニアの大聖堂は噴水広場からしか行けない。
そして今俺達が歩いている場所が古都の入り口となる旧市街と言うわけだ。
旧市街と新たに作られたエオニア市街で大きな違いはない。
ただ旧市街の方がほんの少しだけ古いと言うくらいだ。
さて、アンコニュの調査だけど、やり方は奪還時と同様に隅々まで探索する。
と言うか現状それくらいしかやりようが無い。
奪還時に隅々まで探して問題ないって結論になったんだから。
そもそもアンコニュについて分からない事のが多いんだよね。
一体どうやって生まれたのか、力の源が何なのか。
アンコニュは魔力を使わないからね。
まったく、平和になって退役して約束を果たす為にゆっくり探そうかと思ったのになぁ。
なかなかままならないものだね。
「お出迎えのようだね」
俺達の目の前に両手が剣のように鋭く伸びたアンコニュが数体現れた。
ステラ達からの報告通りやはりこの古都でアンコニュが出現しているのかな。
そんな風に考えているとこちらに気付いたのかアンコニュが両手を構え、此方に駆け出した。
迎撃をしようと思った瞬間隣にいたセシリアが俺を強く抱きしめアンコニュから隠すように体を捻った。
「私の夫に触らないで下さい」
そう言ってセシリアが接近してきたアンコニュの一体を魔法で氷漬けにした。
出来上がったアンコニュの氷像はヴィクトリアがメイスで容赦無く粉々にした。
残りのアンコニュもステラやサリーネ達によって容易く倒された。
数年間アンコニュと戦ってきたステラ達は相手を熟知した精鋭。
新種でも無い限りは苦戦しないだろう。
その後もアンコニュと戦闘しながら旧市街を隈無く探索する。
要の地を奪還し魔力を気にせず使えるようになった事で戦術の幅も広がりより早く探索が出来るようになった。
特に路地等の狭い所などはリュミエール隊のお姉さん達が浮遊魔法で屋根の上などを調べ制圧、上から援護してもらいながら進んだり、察知魔法による不意討ちの防止等。
本当、魔法って便利だね〜。
まぁ魔力が合ってこそ、だけども。
そうして旧市街の探索を終え、エオニア市街へと向かう為そこへ続く大通りを進む。
「察知魔法に反応!前からっ、来るわよ!」
オリヴィアさんがそう言い終わると同時に俺達の目の前に何かが落ちて土埃が舞った。
落ちたのか、着地したのかよく分からないが、反応があったと言うことは恐らくアンコニュだろう。
土埃が晴れてその中から現れたアンコニュの姿に俺達は驚愕した。
「ここに来て新種かっ!」
四本腕に4つの剣を持つ人型、背は俺達より幾らか高く頭部は銀色の兜を被っていた。
何故頭だけ兜を被っているのかは分からない。
「気を引き締めていくわよ!」
「分かってるよ!」
ステラの掛け声にサリーネが応えながら2人で前へ駆けた。
その後を続く形でアルドルとエミリーが駆ける。
「ジェームズ!」
「分かってるさ!」
ジェームズに声を駆けるも既にライフルを構えていた。
流石、長い間一緒に戦ってきたからか俺が言うよりも早く準備していた。
俺達は前衛の4人の邪魔にならない様に注意し射撃を始める、銃声と共に放たれた2つの弾丸は四本腕のアンコニュに命中したが奴が怯るんだ様子は無い。
「今までの奴よりも頑丈だってのか?」
「いや、当たった箇所から出血が確認できたから柔らかさで言えばそんなに変わらん、騎士姿のがよっぽど硬いだろう」
しかし確かに奴は怯まず、そして今なお動きが鈍る事なくステラ達前衛をその四本の腕で攻撃している。
二本の剣を上段で構え、エミリー目掛けて力強く振り下ろす。
エミリーの素早さにより2本の剣は空振りそのまま石畳へと叩き付けられた、だが次の瞬間奴は素早く剣を振り上げた、それによって石畳が粉砕し、周囲に散弾の様に石の欠片が飛んだ。
「きゃっ!」
「グルァ!」
狙われたエミリーの驚く声が聞こえる中、俺の頭の上に乗っていたキューちゃんが即座に反応し火球を放って相殺してくれた事で俺とセシリアは無事だった。
後方の人もリュミエール隊のお姉さん達やセレーネさんが防壁を張ったりして無事。
ただ至近距離だった前衛組は防御が間に合わず幾つか身体に命中していた。
特に酷かったのは狙われたエミリーでどうやら石の欠片によって足を負傷してしまった様だ。
エミリーが危険なのは分かりきってる、俺は即座に奇跡を行使しそれを赤い槍の形にして投擲する。
四本腕の胸に突き刺さった槍が爆発。
それによってようやく奴はエミリーから視線を離し、攻撃者である俺を見た。
「エルッ!」
遠くでエミリーが叫んだが問題無い。
だって俺は一人では無いから。
「グルァ!」
此方に向かって動き出そうとした奴にキューちゃんが火球で攻撃、それを奴は飛んで越えた。
俺は即座に距離を取ろうと踏み込む、それよりも早くセシリアが抱えて後方へと走る。
奴が俺達が居た所に着地したと同時にセシリアが魔法で奴の足首まで凍らせて地面に縫い付けた。
だがその氷もバキッと音が鳴る事に小さく亀裂が入っていて奴が抜け出そうと力を入れているのが分かる。
このままだと奴があの氷から抜け出すのも時間の問題だ。
だが奴が氷から抜け出す前にその四つの腕に光の鎖が巻き付いて拘束した。
セラさんの奇跡だね。
数秒後割られた氷、けれど光の鎖に繋がれて動く事は叶わない。
けれどその鎖すらも引き千切られつつある。
「セシリアちゃん!」
「はい!」
直ぐにオリヴィアさんとセシリアによって下半身までが氷漬けにされた。
セシリアに氷の魔法を教えたのはオリヴィアさんだからね、息もピッタリ。
けれど魔法は教えたのに未だに本名は教えていない様です。
そんなオリヴィアさんの本名を知ってるのは俺とセレーネさんくらい。
下半身を氷漬けにされ、腕はセラさんに続きセレーネさんにも鎖で拘束された奴へソフィーとヴィクトリアが接近し容赦無くその下半身をメイスで殴打して砕いた。
そしてステラとサリーネによって心臓部を一突きされ四つ腕のアンコニュは活動を停止。
その後はオリヴィアさんに氷漬けにされソフィーとヴィクトリアに上半身すらも粉々にされた。
その間に俺は地面に座るエミリーに近付いてその足に奇跡を行使して怪我の治療をしていた。
幸いそこまで酷く無かったから良かった。
「どう?まだ痛む所ある?」
「ううん、もう大丈夫だよ、ありがとうねエル」
念には念を入れて負傷した足だけでなく身体全身にも回復の奇跡を施したから問題は無いはず。
感謝の言葉を口にしたエミリーはそのまま俺の背中に両腕を回しぎゅっと抱き寄せてた。
エミリーが無事で良かった。
エミリーの他にも石の欠片による散弾で負傷していたステラ達もユースティアやセレーネさんによって既に治療済み。
程なくして満足したエミリーから解放された後、セシリアと手を繋いでエオニア市街へと向かった。
旧市街からエオニア市街へとやって来た俺達、だがやる事は変わらない。
石造りの街を進み一軒一軒しっかりと捜索をする。
何処にアンコニュの発生の原因があるのか分からないからね。
家の中に潜むアンコニュも魔力を気にせず使えて、温存せずに済む事から察知魔法を遠慮なく使える為何処に居るか分かる。
「此方は大丈夫!」
「こっちも問題ないわよ〜!」
だから以前と違いこうして複数に別れて探索も出来るしその分探索のスピードも数段早い。
それでも時間は掛かるもので気付けば夕暮れ時だ。
俺達は完全な夜が訪れる前に手頃な家に身を潜め、交代で見張りをしながら朝まで身体を休める事にした。




