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Combat・ with・The・unknown  作者: 唯ノ蒼月
序章 はじまりの序曲

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第7話 基地襲撃

蒼髪の女性にお姫様抱っこで基地へと連れてってもらう最中、どうやってあの数のアンコニュを倒したのか気になった。


「どうやって倒したの?」


「倒してはいないわよ、防壁を張って時間稼ぎしただけ、私にあの数の異形を短時間で倒す術は無いもの」


俺を抱えながら走りながら彼女は答えた。


「あの、もう大丈夫だから降ろして━━」


「駄目よ」


少し息が乱れているのを見て疲れていると思ってそう申し出たんだけど拒否された。

そんなやり取りをした直ぐ後に女性の息が整っているのを見た。


「えっどう……え?」


「ふふ、私の得意な回復の奇跡よ」


「……奇跡?魔法じゃなくて?」


「奇跡とは魔力を使用する魔法とは違い魔力を一切用いない物、魔法とは別物よ」


魔法以外にも奇跡と呼ばれる物があるのかぁ知らなかったな。

しかもセレーネさんの場合は魔力を使わないらしいし。

魔力で思い出したけど、アンコニュに支配された地域は支配されてない地域に比べ魔素が殆ど無いと言っても良いくらい少なかった。

得意分野である魔法を用いた迎撃が出来ないからエルフ達はやられたんじゃないだろうか。

その上アンコニュは魔力以外の方法を用いた光線を放ってくるから一方的にやられたんだろうね。

アンコニュの謎が深まるばかりだ。


女性が俺を抱えながら走り遂に、基地へと帰ってきた。

基地は絶賛アンコニュ達に襲撃されてて試験機が離着陸する為の滑走路は穴だらけ、これでは着陸は難しいだろう。

お陰で試験機は基地上空をふらふらとあっちに行ったりこっちに行ったりしてアンコニュから逃げてた、あれでは何時まで経ってもアンコニュは減らないよ。


取り敢えず俺達もセシリア達と合流したい、女性に危険を承知でお願いしようか。


「格納庫に、真ん中の建物に入って!」


「ええ!」


俺の指示に抵抗無く走り出す女性、もう少し戸惑うとかないのでしょうか。

生活棟と2つの格納庫の内、今飛んでる試験機の格納庫の扉が空いてるのが確認できたことから彼処なら立ち止まること無く中に避難できるだろうと思って指示を出した、その結果は予想通り立ち止まる事無く格納庫内へと入れた。

格納庫内へと向かう際もアンコニュが空から光線撃ってきて着弾点が小さく爆発するからすっごいドキドキした。


格納庫内に入ると人集りがあり大声で話している、聞くに何やら揉めているようだ。


「エルを見殺しにする気ですか!」


「もう生きちゃいませんよ!一人で時間稼ぎしたんですから!」


「所詮は失敗作!姫様が気にする必要は━━」


「それ以上彼を、エルを侮辱するのであれば幾ら同胞と言えど唯では済ませませんよ」


話を聞くため女性に人集りに近付いて貰う、するとセシリアが剣の切っ先を仲間であるエルフの喉元へと突き付けていた。


「俺がどうかしたの?セシリア」


「エル?!無事でよか━━」


俺の声に勢い良く振り返ったセシリアが驚きに絶句した。

あ、そうか今だに俺は見知らぬ女性に抱きかかえられてたんだ。


「エ、エル!?ち、血が?!?」


ごめん、全身が自分の血やら返り血やらで真っ赤に染まってたの忘れてた。

そりゃ絶句するよね、エミリーのケモ耳も嬉しそうにぴょこぴょこ動いていたのがピンっと伸びてピクリともしなくなってたからかなり驚かせたのだろう。


「怪我は大丈夫、この人に治して貰ったから」


女性に降ろして貰うとセシリアが即抱きしめてきた、顔が胸に埋もれて息苦しいです。


「良かったっ本っ当に良かったぁ!」


「ごめんね」


そっと顔を上に向けたらセシリアの瞳に涙が浮かんでいたのは内緒にしとこう。

しばらくそうして抱きしめていて落ち着いたセシリアは俺を助けた女性に向き直る、何故か俺を抱きしめたまま。


「セシリア・フォン・セレスティアです、エルを助けていただきありがとう御座います、貴女のお名前をお聞かせ願えますか?」


すると女性は被っていたフードを取る、綺麗な蒼髪がふわりと舞って腰まで伸びる。

その姿を見て俺以外の全員が驚く、え、なに、有名人なの?


「セレーネ・ジュテームよ、よろしくねセシリア」


「なっ?!なんで貴女様のような方が此処にっ?!」


セシリアが驚き動揺してる、そのせいか抱きしめている両手の力が強くなったから抜け出せなくなった。


「え、なに?皆知ってるの?」


「やっぱり坊主は知らんか……」


セレーネさんを見て引き攣った顔をしたクランクさんがそう言うに知らない方が可笑しいくらいの有名人っぽいんだけど、残念ながら人に興味ないから知らない者は知らない。

それはそれとしてこの後どうするのだろうか。


皆も今の現状が良くない事は分かっている、落ち着きを取り戻せば現状をどうするかの話し合いになる。


「あの空の異形共をどうにかしなければ……」


「だが出ていったところで上から狙い撃ちにされるだけだぞっ!」


「此処に居てもいずれはやられるだけだ!クソッあの試作機が異形共を連れて来なければっ!」


そう思うのも無理はないか、実際あの操縦者がアンコニュの支配地域に行かなければこんな事にはなって無いだろうし。

それっきり皆黙ってしまった、誰も進んで犠牲にはなりたくないだろうし仕方ないのかな。


空に上がれるフィーユやエミリーもあの数を相手取る勇気は無い、セシリアも俯いてその手を強く握りしめている。

それぞれが様々な反応を示す中、その中で多くの者に共通しているのはその身体が震えていること。

刻一刻と近付く死の恐怖に心が飲まれ身体が震えているのだろうか。


このままだと1番可能性のあるフィーユやエミリー達に白羽の矢が立つかも知れない、だから俺は覚悟を決めて手を挙げる。


「俺が迎撃に上がる」


俺の声に全員が視線を向ける、その瞳は様々な色を乗せていた。

エルフの大半は自分が行かなくて良かったと言う安堵のもの、少数は申し訳無さそうなもの。

そして仲の良いフィーユとエミリーは驚愕し、クランクさんは唇を噛み締め、セシリアとセレーネさんはこの世の終わりみたいな顔してた。


「駄目よエル、空に上がったら幾ら私でも助けられないわっ」


「そ、そうですっ!エ、エルが上がらなくともっ!」


「ひ、姫様!ここは失敗作に任せ━━」


「貴方達は黙ってなさい!」


俺の意見を聞き安堵の表情を浮かべていた1人がそう言った瞬間セシリアが今まで見たこと無い程に激怒しエルフ達を叱った。

余りの迫力に慄然とする中、クランクさんが此方に近付いてきた。


「坊主、上がるにしてもまだ試作機が上がったまま━━」


クランクさんの言葉を遮り俺は隣の格納庫を指差し


「あるじゃないですか、とっておきの1機が」


そう言い放つ。

隣の格納庫に納められた空中戦闘機の1機。


正式名、一式空中戦闘機


俺の乗った試作空中戦闘支援機のデータを元に改良が施され生産される5機の戦闘機の内の1機。

他のみんなは乗れないが試作機に乗った俺なら乗れるはずだ。


「そいつの試験飛行も兼ねて上がります」


「だがこんな状況下でっ!それにそいつぁまだ調整が━━」


ああ━━ベオが言っていた通り、この整備のおっさん達も良い人だ、こんな失敗作の心配をしてくれるんだから。


「こんな状況下だからこそです、それに必ず生きて帰ります、それじゃだめですか?」


そこまで言うと誰も何も言わなくなった。

やる事は決まった、後はそれを実行するだけ。


俺は隣の格納庫に移動し鎮座する戦闘機を見る。

試作機に似た形、だが後ろに付けられた推進装置が2つから1つに変更されていたりと細部に違いがある。

コックピットに乗り込み原動機を起動する。

コックピット内も細部が変わっているが大きな変更は無いため問題はなく操縦出来そうだ。


整備班のおっさん達が格納庫の扉を開き合図を送ってくれた、それに合わせ操縦桿を倒して機体を前進しさせ滑走路へと向かう。


「穴だらけではあるがなんとか離陸出来そう」


Crank(クランク)《了解した、離陸後直ちにアンコニュの迎撃を始める、新装備の索敵機器で此方でも敵を確認出来るから少しは教えられそうだ》


新装備として索敵する為の装備がこの一式戦闘機には取り付けられていてそれにより敵の位置を素早く知ることが出来る、また通信機でその情報を共有出来るからクランクさん達司令部も把握できる。

以前ベオが渡すと言っていた俺の位置を把握できるものだろう。


穴に気を付けながら一式戦闘機を滑走路に進ませいざ離陸しようとスロットルレバーに手を伸ばした瞬間セシリアから通信が入った。


Cecilia(セシリア)《待って下さい!試作機が落ちてきますっ!》


Beo《止まるんだエルッ!》


「っ……いや!このまま行くっ!」


一瞬後方上空を見れば火を吹きながら落ちてくる試作機、それを見て行けると判断し即座にスロットルレバーを全開にし加速する。

今なお落ちている試作機を狙ったアンコニュの流れ弾が俺の付近に着弾しては小爆発を起こし爆風に機体が煽られながら機体を進ませる。

心の奥底から湧き上がる恐怖を抑え込み、操縦桿を握る手に力が籠もる。


《俺が死ぬ……?俺は!俺はフィーニスの……》


通信に割り込んだ若い男の涙声。

ふと横を見ればすぐ傍を、擦れ擦れに試作機が落ちた、擦れ違った一瞬、試作機の操縦者と目が合った。


《助け━━》


通信は地面に衝突し爆発した試作機と同時に雑音が混じり聞こえなくなった。


「……クソ……」


後方で爆発する音を聞きつつ、言いようの無い感覚に襲われながら操縦桿を引き空へと上がる。

空へと上がった後直ぐに旋回しアンコニュの迎撃戦を行う。

旋回性能、加速度、操縦性など今の所試作機と然程違いはないため動かしづらい事は無い。

アンコニュに狙いを定めて機首固定機関砲の引き金を引く、轟音と共に機首に固定された試作機と同等の機関砲が火を吹き弾丸を放ち、1体のアンコニュへと当たったのを確認しながらその側面を擦り抜けながらその後ろに居るアンコニュを捉え引き金を引く、それを何度も繰り返す。

余計な事は考えずアンコニュを倒す事だけに集中する、そうでもなければ俺はきっと恐怖に飲まれるだろう。

全速力でアンコニュの軍団を突っ切りながら弾丸を放つ事もあれば急上昇から宙返りしそのまま急降下して弾丸の雨を降らせたりしてアンコニュ達の数を減らしつつ敵意を此方に集中させる。

一体ずつ減るごとにアンコニュは一体、また一体と俺に意識を向け始める。

それを何度も繰り返しアンコニュの殆どが俺を狙った瞬間。


「フィーーーユッ!!!」


fille(フィーユ)《ッ!行くよ皆!》


俺は大声で呼び掛ける、すると呼び掛けた相手、フィーユが基地で待機していた者達に合図を出したのが通信機越しに分かった。

俺を囮にしアンコニュの意識を基地から逸らす事でフィーユやエミリー、この一式を運んで来てくれた魔法使い達を安全に空へと上げさせる。

空にさえ上がれれば射程範囲に入って魔法使い達が一方的にやられる事も無い。

それでも怖いだろうに彼女達は拒むこと無く空へと上がってきてアンコニュの迎撃戦に手を貸してくれた。

フィーユに頼まれたからではない、全員が自分の意志で手を貸してくれたんだ。

母国でもない、異国のこんな辺境の基地に自分の命を賭して戦ってくれる。

そんな彼女達を誰一人死なせ無いためにも俺は一式で空を駆ける。


Beo《背後を取られたぞ、ブレイクしろ》


「ブレイクってなに?!壊すの?!」


Beo《すまん……回避しろ》


ベオからの新たな指示を聞き宙返りして反転しアンコニュをやり過ごす。

マニュアルはあくまで試作機の動かし方だけで専門用語とか書かれてないからいきなり言われても分からないんだよ。


Crank《ちなみにブレイクには回避の他に戦闘中の空域から離脱する場合にも用いられるらしいぞ、ベオから教わった》


Cecilia《私も一緒に教わりました!》


「いや俺にも教えてよ?!1番必要な相手が知らないなんて事ある普通?!」


上空にフィーユ含む魔法使い達が上がってアンコニュの迎撃をしてくれる事でこうした会話の余裕も生まれてきた。


そのままアンコニュ達の敵意を一身に受け、決して魔法使い達に攻撃を向けさせないようにひたすら一式で縦横無尽に動き回る。

そうしてアンコニュを倒しその数がどんどん減っていき、見る限りでは最後の1体に弾丸を叩き込む。


Crank《基地上空のアンコニュの反応の消失を確認》


Cecilia《お疲れ様でした、申し訳無いですが滑走路の修復を始めるので暫く上空で待機しててください》


「了解」


直ぐに通信機からクランクさん、セシリアからそう連絡が入り、暫く上空で待機することとなったのだが。


Crank《方位270からアンコニュの増援を確認した!》


どうやらまだ終われないようだ。

クランクさんが言った様に方位270、西に向かって飛ぶ。

魔法使い達よりも戦闘機の方が速度が速い為スロットルレバーを戻してフィーユ達と同じ速度にして西へと共に向かう。

そんな中クランクさんから新たに通信が入った。


Crank《いやまて、アンコニュの反応が急激に減っていく……》


「偵察飛行してきます」


Beo《了解した、フィーユ達は一度基地へと降りて休息を取れ、エルは危険と判断したら直ぐに引き返す事、基地上空まで付いてくるようならフィーユ達が再び上がってエルと共に迎撃しろ》


fille《了解しました、エル、気を付けてね》


通信機で呼び掛けてきたフィーユに手を挙げて答え、1人西へ向かう。

最初はロストと言う偽名を教えていたけど不意の事態に本名で呼ばれたりする事から長くは隠せなかったが、まぁ問題ないでしょう。


そうしてものの数分でアンコニュの反応が消えた現場へと到着。

相変わらずの曇り空、したは荒れ地。

キャノピーから周囲を見渡す、複数のアンコニュと思わしき点が見えるだけで他は……ん?。


素早く動く影が5つ……。


Beo《エル、そこから何か見えるか?》


「今までのアンコニュより高速で移動してるのが5個ある……速度的に一式と同等……?」


Beo《まだ他の機体は出来上がってない……どういう事だ……?アンコニュが作り上げたのか……?》


「ここからじゃ遠くて見えない、接近してみる?」


Crank《頼めるか》


「了解」


クランクさんに確認した所アンコニュの反応は未だに減り続けているらしい。

取り敢えず接近し、危なくなったら旋回して逃げれば良いだろう。

そうして接近していくと━━


《━━━━━━》


通信機が酷い雑音を放つ。

雑音に混じり微かに何か声のようなものが聞こえるが何もわからない。


鳥の形をした影は俺の接近に気が付くと反転しその場から猛スピードで離れていく。

後方からこの機体と同じ様な推進装置による加速が見受けられた。


Cecilia《エル、雷雲が近付いています、帰投して下さい》


「……了解した」


あの5つのUnknown、気になるが今は帰るべきだな



━━━━━



アンコニュとの戦闘により墜落した試作機、そのパイロットは死亡が確認された。

試作機は回収後セレーネさんが改修を施すと言うことになり、また亡くなったパイロットの亡骸はフィーニス帝国へと渡され遺族の下に戻ったそうだよ。


亡くなったパイロットの名前はカイン・プルーネル。

家名のプルーネルはフィーニス帝国が与えたものであり、瞳の意味を持つそれはフィーニスの目となる重要な役割を持つ家系だそうだ。

また彼は空が好きで「大空を自由に飛びたい」と良く言っていたそうだ。

家族の下に戻った彼はゲネシスの許可を経てゲネシスとフィーニスの国境の境、それも東寄りの山の上に墓を建てられたそうだ。

その山はフィーニス帝国を見渡せるし空にも近い、きっと亡くなった彼も喜ぶだろう。

ただ聞いた話では彼の家族はショックが大きく混乱していたと話に行った兵士が言っていたんだとか。

こんな事になるなら彼を試作機に乗せなきゃ良かったなとも思う、乗せなかったら乗せなかったで文句とかは出てくるんだろうけど。

セシリアやクランクさん達は気にするなと言っていたけどちょっと無理かな……。


余談だけど、今回の一件で失敗作である俺が亡くなったって噂も広まったらしい。

試作機が墜落しそのパイロットが亡くなったって聞くとそう思うのも無理は無いだろう。

クランクさんにもサリーネやステラから連絡が入ったらしく無事である事を伝えていたよ。


「セレーネさんって結局何者なの?」


「詳しくは言えんが、まぁ簡単に言うと俺の雇い主の1人だ」


謎の女性、セレーネさん。

魔力を用いない奇跡の使い手であり、クランクさんの雇い主の1人だそうだ。

そしてどういう訳かそのセレーネさんに俺は直接手ほどきを受けて奇跡を習うことになった。

マジでどうして?俺にそんな才能があったの?

詳しいことは教えてはくれなかったけど、これからセレーネさんと2人っきりで奇跡の修練をする事に変わりは無い。

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