第66話 進軍再開
大陸内での神血教会との争いも終わり、大陸西部の奪還作戦が再開された。
俺達はエルツ国の要の地、ツェントルムより更に西へと進軍する。
とは言え以前の様にはいかない。
神血教会が他大陸へと逃げた事で東部の防衛部隊を編成、対戦闘機対策として有効な二式はその殆どを失った為にクーデリア達の一式を貸し出す事になった。
当初は俺の試作機も貸し出そうと思ったがセレーネさんが猛反対した事で無しとなった。
かと言って俺一人に試作機で制空権を取らせるのをセシリアやセラさん、ステラ等知人全員が良しとせず、セラさんが試作機を遠隔で操って無人支援機として運用する事も考えたが試作機のエンジン音に引きつられアンコニュが大量に出現する可能性を考慮して試作機は使わず全員地上を移動することになった。
さて、俺は大陸西部へ進軍を再開する前にどうしても行きたかった場所があった。
それはゲネシス南部にあるベオの屋敷。
屋敷の庭にベオの墓を作りたかったんだ。
そこにベオが眠る訳ではないけど、それでも弔いたかったから。
また屋敷はセレーネさんの所有物となり定期的に皆で掃除をする事にした。
主人が居なくなった屋敷の門は固く閉ざされていたが一緒に来てくれたセレーネさんが奇跡を用いて鍵を開けてくれた。
そんな屋敷の一室、恐らくベオの部屋で見つけた紙にはこんな事が書かれていた。
【やりたい事】
恐らくベオがやりたいと思った事を書き記したのだろう。
その内容は塗り潰されていたけど、良く見ればまだ読めた。
【エルと一緒に遊ぶ】
きっと叶わないと分かっていたからこそ、消したのだろう。
それを見た瞬間涙が溢れてきて止まらなくなったのを覚えている。
その後セシリアが抱き寄せて慰めてくれたことも。
そういった事をセシリアの部屋で思いだし、俺はセシリアへ自身の気持ちを伝えようと思った。
これからまた死地へと赴く訳だし、なら先に伝えておくべきかな。
「セシリア」
「はい?どうしましたか?」
そう思い俺はセシリアの名前を呼んだ。
荷物を整理していたセシリアは首を傾げながら此方に振り向いた。
「セシリア、好きだよ」
「へ……?」
俺の言った言葉を聞き、数瞬固まった。
「い、今なんて……」
「好きだよ、セシリア」
「っっっ!!!」
今一度、その言葉を伝えたらセシリアは頬を染め、目を潤ませながら口元を両手で隠した。
「いえ、待って下さい、その場の雰囲気にあてられてないですか?」
かと思ったらハッと我に返ってそう聞いてきた。
「ううん、違うよ。ずっと傍に居て欲しいって心の奥底から思ってるよ」
だからこそ真剣に、セシリアの目を見て話す。
「ふふっ……そうですか……嬉しいです」
再び頬を染め、嬉しそうに微笑むセシリアが何処までも綺麗で美しかった。
そのまま抱き着こうとするセシリアに不意打ちで口付けをしよう。
まだ私からはしてないから。
そう思って近付いてきたセシリアの頬に手を伸ばし、背が届かないから爪先立ちして口付けをしたのだけど……。
「「っ」」
不馴れだったからか、勢いが付きすぎて歯と歯がぶつかった。
けど口付けが離れる事は無かった。
セシリアがそのまま抱きしめてきたから。
長い口付けはどちらからともなく離れた事で終わりを告げ、互いの唾液が糸を引く。
「エルからの初めて、貰っちゃいました♪」
セシリア嬉しそうにそう言った。
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準備を終えた俺達はエルフの国からエルツ国、ツェントルムへと向かい更にそこから西へと目指した。
移動方法は荷馬車。
荷馬車は俺達を乗せて荒廃した大地を進む。
俺は支給されたライフルと弾薬や医療品が入った大型背嚢を前に置き、キューちゃんを頭に乗せて座る。
隣にセシリアが手を繋いで座っている。
ちなみにフィーユやエミリー、オリヴィアさんも一緒に荷馬車に乗っている。
また神の結晶苗木を植木鉢に移して所持する事で小範囲ではあるけど魔素が復活した空間を移動しながら生成して進む、これにより移動しながら魔法が使えるんだ。
野営用の荷物等も馬に荷車を引かせて運搬してる、人数が人数だから荷物も多いからね。
また料理担当でレスティナにアルティナ、母さんも付いてきててその護衛にリュミエール隊のお姉さん達やカナリアさんが居る。
あと今回はセレーネさんも後顧の憂いが無くなったことから付いてきた。
俺達は一直線に隣国の要の地を目指して進む。
道中で要の地まで物資が持ちそうに無いと判断したら仮拠点を作り物資を届けてもらってから再び進軍を開始する。
以前の様に一斉に行軍しないのは兵の数が少ないから。
その為俺達が少数精鋭で要の地へと進み奪還し要の地の機能を取り戻して魔力を使える様になった後魔法使い達が攻勢に出る手筈だ。
「今日は此処で休みましょうか」
「そうだね、もうじき日も暮れるし、馬も休ませないとね」
ステラとフィーユの判断で進軍を止める。
荷車から野営用の天幕を張るリュミエール隊のお姉さん達。
またオリヴィアさんやセシリア達が魔法を用いて土の防壁を作成する中、俺はレスティナや母さん達と一緒に晩御飯の用意をする。
全員分のご飯を用意する為、鍋なども大容量の物を使用する。
アルティナが母さんと一緒に野菜や肉を切っていく中、俺はレスティナと一緒にスープを作る。
スープと一緒に作って持ってきていたパンを出す、長持ちする様に作ったから味は少し落ちているけどその辺は皆了承済み。
初日はまだこういった風に作れるけど日が経つにつれて缶詰とか戦闘糧食になると思う。
最近は戦闘糧食もそれなりに良い味付けにはなって来てるからまだ食べれるけどね。
「あら?いい匂いがしますね」
晩御飯が出来上がった時、周囲の見回りに行っていたクーデリア達が丁度帰ってきた。
「お帰り、丁度ご飯出来たからお食べ」
「わ~い、お兄ちゃんのご飯だ〜!」
クーデリア達にご飯を食べてもらいその間は俺が見張りに付こうと思いライフルと大型背嚢を持って防壁へと向かう。
当たり前の様に頭にはキューちゃんが、隣にはセシリアが居る。
「セシリアご飯は良かったの?」
「後で大丈夫ですよ、エルと一緒に食べたいので」
「そっか、なら交代が来るまでお預けだね〜」
「エルと一緒なら問題無いですね」
そう話しながらセシリアとキューちゃんの2人と一匹で防壁の向こう側を睨む。
流石にキューちゃんを頭の上に乗せたままではキューちゃんの身体が丸出しで危ないのでキューちゃん用に身を乗り出せる部分をセシリアが魔法で作ってくれた。
数分後、気を利かせてくれたオリヴィアさんとセレーネさんがスープを持ってきてくれたのでそれを飲みつつ見張りを続ける。
ちらほらと動くものが見える、見たところ人型では無さそうでアンコニュかどうかも判断は難しい。
要の地を奪われ土地が荒廃したと言ってもアンコニュ以外の生物も確認出来るからだ。
魔物だとゴブリンとかも確認出来た。
「エル、セシリア、交代しよ」
「了解」
「お願いしますね」
見張りに訪れたエミリーとリュミエール隊のお姉さん達と交代して俺とセシリアとキューちゃん、オリヴィアさんとセレーネさんは一緒にご飯を食べに行く。
スープだけでは流石にお腹が空くからね。
「スープ飲む?」
「欲しいわね」
「私も頂こうかしら」
オリヴィアさんとセレーネさんがそう言ったので直ぐに火を起こしスープを温め直す。
「セシリアはスープはいらない?」
「はい、先程飲みましたので大丈夫です」
「はーい」
スープはいらない、けどお肉は食べるそうなので人数分の肉を焼いていく。
「お兄様、手伝いますね」
「ありがとうね、レスティナ」
近くに居たレスティナがわざわざ手伝いに来てくれた。
食事を終え、皆で見張りを交代しながら朝を待つ。
母さんやレスティナ、アルティナにはそのまま朝まで休んでもらいました。
レスティナやアルティナも見張りをすると言っていたけど娘二人と一緒に寝た方が母さんも安心するだろうからと説得した。
2人が不満げだったのは言うまでもないだろう。




