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Combat・ with・The・unknown  作者: 唯ノ蒼月
第6章 エルの悪夢

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第54話 夢の主

「私が開けるわ」


「分かりました」


ステラが一歩前に出て両開きの扉に手を当てます、私達は何事にも対応出来るよう構え、互いに目を合わせ頷く。

ステラが扉を押し込む。


扉は拒絶すること無く簡単に開き、私達は素早く室内に入り無防備なステラを守る様に剣を構えて前へと出ました。


広く、蝋燭の仄かに明かりを灯している部屋。

セレーネ様の奇跡で見ていた景色と何ら変わらない。


その奥でエルを赤子の様に抱きかかえ優しく撫でて寝かしつけている赤毛の獣。


その姿を見て、私は体の奥底から怒りが湧き上がってきました。


「貴方ですね、エルに余計な事を吹き込んだのは」


「エルハ、ワタシノモノダ」


「っ!このっ!」


「落ち着きなさい」


エルを自分の物に様に強く抱きしめた赤毛の獣に飛び掛かろうとした私をステラが押さえます。

また私と同じ様に飛び掛かろうとしたエミリーはセラさんの奇跡による光の鎖で捕まってました。


「離してください!」


「だから落ち着きなさいって。怒りに呑まれて我を忘れ飛び掛かれば相手の思う壺よ」


「っ!すぅ……はぁ……そう、ですね、すみません取り乱しました」


ステラに言われ私は深呼吸をして落ち着きを取り戻します。

エミリーも同じく落ち着きを取り戻した様です。


「まずはエルの奪還が最優先ね、その役割はセシリア、貴女に任せるわ」


「嬉しいですけど、私で良いのですか?」


私の他にステラもエミリーもエルの事が好きなのは知っています。

だから2人もエルの奪還、確保に立候補すると思ったのですが……。


「確かに私もエミリーもエルを好きだけれど、此処でしっかり決めておかないと皆で私が助けるってなって収拾が付かなくなるわよ」


「そうだね、それじゃ私とステラで赤毛の獣の注意を引く形だよね」


「なら私は奇跡で3人の援護ですね」


「問題はあの大事に抱えられているエルをどう助けるか、ですね」


此方の様子を見やる赤毛の獣、その両腕で大事に抱かれるエルをどうやって助けましょうか。


「取り敢えず様子を見ながら戦ってみましょうか」


「賛成〜」


ステラとエミリーが赤毛の獣へと駆け出しました、私とセラさんは2人の後ろで赤毛の獣の動きを見て隙を伺います。


近付く2人に赤毛の獣はエルを左腕で抱え右腕を振るう。

結構な速さで横薙ぎに振るわれますがそれに当たる2人じゃありませんよ。


赤毛の獣の視線が追ったのはステラ、振り下ろされる右腕をステラが剣で受け止めます。


隙だらけの背後にエミリーが飛び掛かり蹴りを入れたその時。


「?!」


エミリーの蹴撃は赤い防壁に防がれてしまいました。


「チッ」


舌打ちしたエミリーはその防壁を破ろうと何度も打撃や剣撃を加えます。


「あれは……」


「奇跡、ですね……」


セラさんが言ったように赤毛の獣が張った防壁は奇跡によるものでした。

それもエミリーの攻撃で破壊どころかヒビすら入らない強固な防壁で、しかも防壁を張りながらステラの相手をしている程。


「奇跡を用いるという事は元々神官だったのでしょうか」


「それか奇跡を与えた何者かが居るかですね」


奇跡を与える事が出来る者が居る……あまり考えたくないことですね。


「恐らくですが防壁にかなりの自信があると見えます、エミリーの方を見向きしてないので。防壁を突破した瞬間少なからず隙が生まれると思いますのでその隙にエルを奪い返しましょうか」


「ですがあの防壁をどうやって」


「防壁については私が何とかします、行ってください」


セラさんに言われて私は赤毛の獣へと駆けます。


「っ!」


足元に出現した円形の赤い光、即座に横に飛んだ直ぐ後に赤い光の奔流が立ち上りました。

防御だけでなく攻撃も行える程に奇跡の扱いに長けている様です。

連続して放たれる立ち上る奔流を避けながら赤毛の獣へと接近します。


赤毛の獣へと剣を突き出すも赤い防壁に阻まれてしまいました。


「固いですね」


「ね〜どれだけ攻撃してもびくともしないし」


足元に赤い光が出現したので飛び退きエミリーと合流しました。

一度剣で突いてみた感じあの防壁を割れる気がしません。


赤毛の獣はステラに集中し一向に此方を見ません、1人ずつ確実に仕留めていく算段でしょうか。


ステラはまだ余裕はありそうですが……ずっと1人ではいづれ限界を迎えます、後どれくらい持つのかも分かりませんし早い所注意を引きたい所ではあります。


私は試しにステラの方へと駆け、ステラに向かって振るわれた腕を受け止めます。

その隙を突いてステラが踏み込み剣を振りますが即座に防壁が張られました。


「恐ろしいくらいの反応速度と防壁の構築速度だね」


「あの防壁がある限りエルの奪還は不可能に近いわね……」


あの防壁に2人は頭を悩ませています、申し訳ないですが手の内が知られるのを避ける為に2人にはこのまま内緒のまま進ませていただきます。


赤毛の獣の注意を散漫させる為、再び散り四方から攻め始めます。

私は何時でもエルを助けられる位置を取って攻撃を繰り返しますが当然の如く刃は防壁に阻まれ赤毛の獣には届きません。


「今ですっ!」


後ろから響いたセラさんの声に反応して私は赤毛の獣の懐へと飛び込みました。


発動しない防壁、それに気付いた赤毛の獣はしかし既に腕をステラへと振り下ろしている為直ぐに妨害は出来ません、流石セラさん良いタイミングですっ!


エルの下まで辿り着き、直ぐに赤毛の獣の腕からエルを抱き上げ奪い返します。


優しく支えていただけだったお陰で何の抵抗も無くエルを取り返す事が出来ました。


そのまま腕を蹴りセラさんの下へと下がり、ステラとエミリーも合流しました。


「ア……」


がら空きとなった自身の両腕を見て唖然とする赤毛の獣。

エルを救出した今、後は夢の主であるあの獣を倒すだけ。


「ア、アア、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」


突如、赤毛の獣が両手で頭を押さえ叫びだしました。


「ワ゛タ゛シ゛ノ タ゛イ シ゛ナ ヒ ト!カ゛エ セ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛!!!」


両腕を地面へと叩き付けたかと思えばその腕を支えに上半身を持ち上げ、そのまま飛び掛かってきました。


私はエルを落とさないよう両手でしっかりと抱きしめ飛び退く。


大きな音と共に着地した赤毛の獣は両手を祈る様に組んで掲げ、そのまま私に振り下ろす。


私の前に神聖な力を帯びた防壁が現れ赤毛の獣の両手による叩き付けを受け止める。

赤毛の獣は再び手を掲げました。


「無駄ですよ」


それを見たセラさんが呟く、けれど赤毛の獣は動きを止めません。


「貴女に私の奇跡は破れ━━」


━━ガシャン


「━━へ?」


両手に赤色の光が灯ったかと思えばそのまま振り下ろされた両手によっていとも容易くセラさんが張った奇跡の防壁は割られました。


「嘘でしょ!?天使である私の奇跡の防壁を割れるはずが……まさかっ!?」


赤毛の獣の右手が上がる。赤色の光が灯る。


「エルヲ!カエセッ!!」


放たれる灼熱の奔流、私達はその場を飛び退いて回避しました。

奔流が通った後をなぞる様に数瞬遅れて爆発が起こりました。


また振るわれる赤毛の獣の両腕もその後を追従する形で炎が出現し始めました。


「さっきよりも攻撃が苛烈になったねっ!」


「エルを奪われた事で荒れたみたいね」


先程まではエルを抱えていたから抑えていたのでしょうか、けれど此方にエルが居ることに変わりは無いのですけれど。


エルが居るのもお構いなしに赤毛の獣の攻撃は苛烈さを増すばかり。


狙いは変わらずエルを抱える私ばかり、ステラやエミリーには歯牙にも掛けません。

セラさんの光の鎖による捕縛もほんの一瞬動きを止めるだけで破られてしまう始末です。


セラさんの奇跡を打ち破ると言うことはセラさんよりも高位の者……つまり神々より直接奇跡を賜った者なのでしょう、厄介極まりないですね。

セラさんも戦い辛そうですし。


セラさんが奇跡で構築した金色の光の槍を投擲しましたが地面より立ち昇った灼熱の奔流に阻まれてしまいます。


私に肉薄し両腕を振り回す、燭台が薙ぎ倒されますが火の手が広がるような事は無いですね。


「危ないですね……エルに当たったらどうするんですか」


「エ゛ル゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛!!!!!!」


振るわれる両腕を避けて呟くも赤毛の獣はエルにご執心の様です。


赤毛の獣に名を呼ばれたエルは私の腕の中でピクリと震えました……何故私の声には反応しないのに赤毛の獣の声には反応するんでしょうかねぇ?

少し相手が羨ましく思えてしまいましたがエルの寝顔が可愛いので良しとしましょう。


「そろそろエルを諦めてくれないかしら」


「エルへのお触りは厳禁だよ〜」


私の前に割り込んだステラとエミリーが赤毛の獣が叩き付けるように振り下ろした両腕を受け止めます。


「熱っっ!?」


赤毛の獣が両腕に炎を纏っている為、それを素手で受け止めたエミリーが叫ぶ。

彼女が剣よりも素手を好むのは知っていましたが何故よりにもよって今、素手で受け止めたのか謎です。熱いに決まってるじゃないですか。


赤毛の獣の上からセラさんが飛び掛かり、光の槍で貫きました。


「どうか……お許しを……」


目を閉じ、祈る様なセラさん。

貫かれた赤毛の獣は脱力し、その場に倒れ伏しました。


「終わりましたね……」


夢の主の打倒は終わりました、エルの見る悪夢も直ぐに終わりを迎えるでしょう。


━━━━━━━━━━━━ゴポッ


「っ!?エルッ!」


そう思っていたのに、私の腕に抱かれているエルを包み込むように黒い靄が発生したのです。

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