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Combat・ with・The・unknown  作者: 唯ノ蒼月
第6章 エルの悪夢

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第50話 目覚め

フィーニス、イコルによるゲネシスへの宣戦布告から数ヶ月。

イニーツィオの撃破とパイロットであるエルの不在を知ったフィーニスは侵攻を再開する。


主力部隊がエルフ領内におり、ゲネシスの防衛部隊も抵抗は少なく結果ゲネシスの全土をフィーニスは掌握した。


各地で抵抗を続けるゲネシス軍も居る中、フィーニスは主力をエルフの国へと向けた。

しかしこうなる事を予期しエルフの東部には何箇所にも防御陣地が構築されておりフィーニスの侵攻は難航していた。

それでも被害を出しつつゆっくりとエルフの防御陣地を突破していくフィーニス軍。


ローザはセシリアやセレーネ達と相談し、相手に休戦を申し込んだ。

相手は休戦にあたり、ある条件を突き付けた。


それは【エルフの王女、セシリア・フォン・セレスティアとの婚姻】である。


無論、ローザ達は反対した。

だがセシリアは、休戦の為条件を少し変更した上で了承した。


【婚姻ではなく婚約】


相手もそれを了承し、セシリアの婚約を持ってエルフの国とフィーニス、イコルは休戦となった。


そしてセシリアがゲネシスへと赴く当日。


【彼】が目を覚ました。







エルSide


雨の音が響く暗い世界で。


『エル……助けて……』


確かにセシリア(彼女)の助けを求める声が聞こえた━━━━━













瞼を上げる。

重たい身体を起こし、両腕に取り付けられているコードを引っ張り抜きながらベッドから降りる。

だが足に力が入らずその場に転倒してしまった。


「いってぇ……」


「キュー」


「あれ……キューちゃん」


鳴き声のした方を見ればベッドの下で丸まっていたキューちゃんと目が合った。


「キュー」


「大人しく寝てる訳にはいかないんだよね」


「キュー」


ずいずい、と此方に近付くキューちゃん。

すぐ近くまで来たキューちゃんのその瞳は『大人しく寝てて』と訴えているのが分かる。

それもそうだ、現在碌に動けずこうして地べたに這いつくばって居るのだから……けど、けれどね。


「彼女が……セシリアが助けを求めてるんだ、行かなきゃならないんだ」


今止まるわけにはいかないんだ、例えキューちゃんに止められようとも身体を引き摺ってでも俺は行く。


「……キュー」


キューちゃんが何いってんだコイツ、みたいに顔を傾げたと思ったらとてとてと目の前を歩いていった。

見逃してくれた様だ……そう思ったらキューちゃんは口に何か咥えて戻って来た。


「それは……動かない身体を無理やり動かす秘薬とか?」


「キュー」


「マジか……」


どうやら当たったみたいだ。

キューちゃんは器用に口と足で注射器のカバーを外し手で持って俺の首筋にブスリと刺した。


「痛ぁ!?!?」


「キュー」


うるさいと言うかのように鳴いたキューは注射器の中身を全て投与し抜き取った後ゴミ箱に放り捨てた。


「キュー」


「先導してくれるの?ありがとう」


キューちゃんが他の皆に見つからないよう先導してくれる。

今の状態で皆に見つかれば俺は間違いなく止められる、だからこそ隠れて行く必要があった。

だから俺とキューは帰ってこれば間違いなく皆に怒られる。


「後で一緒に、皆に怒られような」


「キュー」


キューと共に王城を抜け出し、身体を引き摺りながら格納庫へと向かう。

昼間だと言うのに道中に見張りのエルフの人達は居なかった。

まぁ今回は見つからないからある意味幸運だね。


格納庫に着き、試作2型を探す。

どうやらキューちゃんが何処にあるか知っているらしく、俺はキューちゃんの後を追って試作2型の所まで辿り着く。


キューちゃんと一緒に格納庫の扉を開き、コックピットに乗り込みエンジンを掛ける。


武装チェック、と言っても誰も動かさない状態だったらしく機銃、機関砲、魔力砲しかないや。


「ま、何も無いよりは良いか」


「キュー」


ミサイルが無いのは心許無いけど仕方ないね。


「と言うかセシリアが助けを求めてるってだけで何処行けば良いか分かんないや……ゲネシス?」


「キュー」


なんとなくゲネシスに行けば良いと思いキューちゃんに聞いてみれば首を縦に振った。

なるほど、ゲネシスに行けば分かるのか。

キューちゃんも試作2型に乗ったことからこの行動に間違いはない。


〘ちょっとエル!勝手に抜け出して何してるんですか!?〙


居ないと思っていたら急にココが話し掛けてきた。


「セシリアが困ってるから助けに行く」


〘そんな身体で無茶です━━コラッ!?勝手に発進するなぁ!?〙


慌てふためくココを他所に俺とキューちゃんは素知らぬ顔で試作2型を発進させる。


試作2型のエンジン音を聞き付けた整備員さん達もやって来るがもう遅い。


「バナール1、行きます」


〘っ!?!?!?!?!?!?〙


俺はココの声にならない叫び声を聞きながら試作2型を離陸させた。


「うぉおぉぉ……」


万全な体調じゃないからか、それとも久々だからか、滅茶苦茶キツイ。


〘ああもう!帰ってきたら説教ですからね!〙


ココは怒りながら試作2型の補佐に回ってくれた。


〘エルの為に現在の状況を説明します〙


「お願いします」


〘エルが気を失ってから約3ヶ月経ち、ゲネシスの殆どがフィーニスの支配下にあり、エルフの国の北東部も少し侵略されています〙


「え……」


俺3ヶ月も眠ってたの……?

確かに長い事あの暗い夢を見てた気がするけど……。


〘エルが誰にセシリアの事を聞いたかは知りませんが、そこまで心配する事はありませんよ。確かに彼女は休戦の為、婚約の話を敵としましたが━━〙


「え!?セシリア婚約したの!?おめでとう!?」


〘話を聞きなさい。間違ってもセシリアにおめでとうなんて言ってはいけませんよ、叩かれますよ、グーで〙


「それ殴るって言わない?」


〘失礼、ぶん殴られますよ。コホン、この婚約の話はあくまで休戦の為、いわば反撃準備の為の時間稼ぎで本当に結婚する気なんて彼女にはありませんよ。証拠に彼女は敵から送られてきた婚約書にサインしてませんし〙


「良くそれで気付かれずに済んだね」


〘相手は断れないと思ってる様でしたので絶対見ないだろうと皆で結論付けて白紙で送り返しました。物の見事に相手は婚約書を確認してないみたいですね、それか確認した上で身柄を確保すれば良いと考えているのかどちらかですね〙


余程相手は気楽に考えているようだ。

ゲネシスを特に損害なく制圧したと聞いたからそれで自信でも付いたのかな。

エルフの国の制圧に苦労してるのになんともお気楽な話である。


「セシリアがゲネシスへ向かった理由は?」


〘今日が敵からセシリアがゲネシスへと向かう指定日ですからね、赴いた先で相手を断りそのまま全面戦争に入る予定です。休戦の申し出はその準備の為ですよ〙


「なるほどね」


〘そもそも相手がセシリアの身体目当てで、セシリアが向こうの手に渡った瞬間に侵略を再開する作戦ですから受ける訳無いです〙


……いやちょっとまって。


「何処からその情報得たの?」


〘サリーネの義母が敵兵捕まえて尋問して聞き出しましたのでまず間違い無いかと、その敵兵に関しても戦場でバレずに捕まえたらしいので恐らく行方不明者で処理されてるかと思います。戦場での行方不明者は少なくはないので情報が漏洩したと相手に気付かれた可能性も殆ど無いかと〙


「そう……なら良いか……」


余り深く聞かない方が良さそうだね……。

俺は話をそこそこに切り上げ操縦に集中することにした。


〘エル、相手へ奇襲を掛けたいので高高度まで上昇して待機して下さい〙


「良いけど、何か厄介事?」


〘目的地に付いたセシリア達から敵の情報を得ました、以前エルが戦った新型戦艦が2隻、それと人型が複数居ます〙


「え、それセシリア大丈夫なの?」


〘護衛にはエルフに見せかけてステラやサリーネを配置してます、また大破したイニーツィオや敵の人型を回収してイニーツィオを修理しましたので抵抗出来ない訳ではありません〙


「大丈夫って訳ではないのね……というかイニーツィオって誰が乗ってるの?」


〘エルの妹達ですよ、イニーツィオを複座に改修してレスティナがメイン、アルティナがその補佐です。レスティナが乗ってきていた人型にはシャルルが乗っています、またクーデリア達の一式も回収し修理済み、現在相手の索敵範囲外で待機中です。それとエルのことは内緒にしていますので、その方が奇襲も成功しやすいと思いますので〙


「なるほど、分かった」


整備員さん達にも報告済みらしく、俺の出撃は敵味方に知られていない。


〘確かに戦力を整える為に休戦しました、それは相手も同じ事ですが……まさかあんな戦艦を2隻も……〙


「過ぎた事は仕方ないよ」


そうして敵はおろか味方にも気付かれないよう高高度に到達し機を伺う。


〘今です、急降下して魔力砲を叩き込んで下さい。キツイでしょうが耐えて下さいね〙


「了解」


ココの指示に従い魔力砲をチャージしながら急降下を開始、狙いはココが観測しリアルタイムで補助システムに反映してくれているらしい。

今回は相手に気付かれてはいけない為、魔法で相手にマーカーを付けていない。

だから完全にココ任せになる。


「ぐぅ……」


久々の急降下に身体が悲鳴を上げている。

雲を突っ切り地上が姿を見せた。

ココの言った通りあの新型戦艦が2隻見える。

マーカーはその内の一隻を指し示している。

通信機から彼女の声がした。


Celestria(セシリア)《私には想い人が居ます!だから貴方とは結婚する気はありません!!!》


《なっ?!》


Celestria(セシリア)《私は!私、セシリア・フォン・セレスティアはエル・ヴァルドリンを愛しています!!!》


俺の身体はセシリアのその言葉に応えるように魔力砲のトリガーを押した。

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