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Combat・ with・The・unknown  作者: 唯ノ蒼月
第5章 混迷する情勢

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第49話 赤く染まる医療施設

セシリアSide



フィーニス軍の侵攻に単機で迎撃に向かったエルは大きな傷を負って帰ってきました。

意識を失い、血だらけとなった彼を銀髪ロングに一対の純白の翼を持つ女性が抱えて連れてきた時は心臓が止まる思いでした。


直ぐにセレーネ様の手配で秘密裏にゲネシス内の医療施設に運ばれました。

ゲネシス国内での入院はエルフ領内に最新医療器具を搬入、エルの受け入れ準備が完了するまでの間。

エルフ領内で準備が出来次第直ぐに移送する手筈となっています。


またエルと共に連れてこられた彼の母シャルロットさんはどうやらエルの手で治療されていたらしく、現在はエルフ領内にて入院しています。


エルの傷はセレーネ様の手によって治療されましたが未だに目を覚ましません。


「酷く魘されています……」


私はエルの眠るベッドに腰掛け、汗をかいた額を優しく拭いながらそう呟きました。

エルは倒れてからの数日、目を覚ます事は無く常に魘されているのだから。


またセレーネ様の奇跡や魔女さんの魔法によって生命を繋がれたエルの容体は予断を許しません。

いつ目覚めるかも分からない状況なのです。


「連戦による疲労もそうでしょうけど、一番はやはりベオが目の前で亡くなったのが原因でしょうね……」


エルの身体を診たセレーネ様が呟きました。


「ベオ……あの人の正体がエルの引取人のハーゲン卿だったのでしたね……」


「えぇ、過激派と呼ばれる神血教会に関係する者たち……けれどそれは表向きであり、ハーゲン卿の名も偽名だった。本名はローエン、裏で神血の妨害工作をしていた様ね」


「私とエルを同じ部隊に所属出来るように根回ししたのも彼だった様です。私とエルはクランクさんが根回ししたと思い感謝を述べ、けれどクランクさんは知らないの一点張りで、私とエルはそれが照れ隠しだと思っていましたけれど……他にも色々と根回ししてくれてた様で」


私は懐かしく思いながら言葉を紡ぎました。


「それじゃぁなんで本人はエルの事を突き放す様にしてたんだろう」


私の向こう側で椅子に座るサリーネが呟きました

サリーネの言葉に私は頷く、私の他にもフィーユも同意したようですね。


「彼、元から寿命が残り少なかったようなの。病によっていづれ死に至る、それと有事の際に神血の人質にされるであろう事は予想済み。だからわざとエルに冷たくし情が移らないようにしてたようよ。表では助けれない、けれど何とか傍で助けたい、だから機械音声と位置が特定されないように妨害装置を使ってまで裏でエルを助け続けてた。最後の最後でヘマをやらかしたけれど」


「自身の正体を明かした事ですね」


「あら、セラ」


扉から病室に入ってきたのはエルを助けてくれた銀髪ロングに一対の純白の翼を持つ女性でした。


「最後の最後に自身の正体を知ってもらいたくなったのでしょう。エルが嫌いなハーゲン卿のまま死にたくなくなり、自分がベオであり、エルに心から愛していると伝えたかった。彼もまた長い年月を経てエルに情が湧いた……いえ、元から湧いていたのかも知れませんね、誕生日プレゼントを毎年送ってましたし。彼も人間と言うことです」


セラさんはそう言いながら私の近くまで寄ったかと思えばエルの頬を優しく撫でました。


「にしても……まさかセラさんがココだとは思わなかったな〜」


私の向こう側に陣取るサリーネが膝に肘を付いて頬杖をつきながらそう言いました。

サリーネが言ったようにイニーツィオや試作2型のシステム補佐をしていた女性の声の正体が目の前にいるこの女性、セラさんなのでした。


「さて、情報を整理しましょうか」


セレーネ様の言葉に私達は全員彼女の方へと向き直る。


「エルの妹達と母親は現在エルフ領内にて保護、父親はエルとの戦闘で戦死。ゲネシスの国境を侵攻した相手の新型戦艦と5機の人型戦闘機は破壊。けれどイニーツィオが大破、連合上層部が発令したアンコニュ本拠地への奇襲作戦で一式も3機が大破状態」


表情1つ変えることなくセレーネ様は淡々と告げます。


「エルの母親、シャルロットに付きましてはエルが奇跡を行使して治療済み、現在は医療施設にて経過観察中です。また妹レスティナが乗っていた中近距離型の人型は回収し調査、位置が分かるような機器は取り外してあります」


セレーネ様から引き継ぐ形でセラさんが話を続けました。

中近距離型の人型戦闘機は私達の戦力と捉えて良いでしょう。


「エルが単機で敵の主力を全滅させた事で相手は現状様子見、慎重になっているけれどそれも時間の問題ね」


セレーネ様が言った通り、フィーニスもイコルも現在侵攻を止めて様子見しています。

自慢の主力部隊がたった一機の試作機に破壊されたのが効果的の様です。


「エルの父、ガーベッジが乗っていた正体不明の人型はどうやらフィーニスが皇女であるシャルルの為に用意した専用機の様です。帝国の、強いては皇族の威厳を象徴する為に。と言ってもシャルルは此方側に付き、裏切った形なのでガーベッジに渡り実戦投入されたのでしょう」


「そう言えばさ」


セラさんの言葉を聞いてフィーユが何かを思い出したようで手を小さくて上げました。

私もセレーネ様達もフィーユへと顔を向けます。


「何故彼はあの新型の戦艦に搭乗していたんだろう?」


「確かに……」


わざわざエルと敵対するあの戦艦に乗る意味が確かに分かりません。

セレーネ様に顔を向ければどうやらセレーネ様は思い出当たる事がある様子。

一呼吸した後、それを口にしました。


「恐らく、あの戦艦や人型の動きを完全に把握する為でしょうね。寿命も残り少ない彼は彼処を死に場所に選んだのでしょうね、エルが死なないように、生き残らせる為に」


セレーネ様の言葉にセラさんも頷いています、セラさんが言うにベオは確かにセラさんよりも早く行動を把握し報告していたと言います。

その中には危険な攻撃もあったと言いますし。


「それと、エルの事に付いて少し話しておくわね」


「エルについて、ですか?」


私はふと眠るエルを見る。

先程よりはマシにはなったものの今なおエルは苦しそうにしています。


そしてセレーネ様から聞かされたエルの肉体について。


セレーネ様の話では現在エルのその身は流し込まれた神血によって内側からじんわりと蝕まわれ、酷くボロボロだそうです。


エルは本来神血に適応する者、しかし神血に適応する為の人体実験と準備がその身を壊し適応出来ない身体へと変貌させたのです


今は神血を入れ替えエルと一番相性の良いセレーネ様の血しか入っていないらしいですがそれでも駄目という話です。


セレーネ様の調べではエルは【神の再誕計画】によって人工的に神を再現しようとした実験体。


【神の再誕計画】


それはこの地を去った神々を人の身を利用して再誕させる禁忌の実験。

その実験体に幼き日のエルがガーベッジによって売られ、選ばれたと言うことらしいです。


「そ、そんな悍ましい実験をエルにしたと言うんですか!?」


「エルだけじゃないわ、他にも何人もの子供がその実験体にされてる」


吐き気を催す程の悍ましさ、そして何より、その実験を受けた子は全員死に至っているという。

唯一例外なのが目の前にいるエル。

今なおその身体の内側を神血によって燃やされ、ボロボロにされながら生きているという。


今はセレーネ様とセラさんが治療を施し、また模索している最中であり、まだ完全に治らないと決まった訳では無いことだけが救いでした。

今日はこれで解散となり私達は魔女さんと交代する形でエルフ領へと帰りました。








エルの眠る医療施設。

その場所にエルが居ると言う事は確かに、秘匿された事であった。

だがその居場所を突き止められ刺客が放たれた。


「カトリーナ、勘付かれたわ」


「っ……!予想よりも早いですね」


窓から外の様子を見ていたオリヴィアが小声で共にエルの様子を見ていたカトリーナに告げれば彼女は顔を引き締めた。

相手は自国の兵、第2皇女のカトリーナは自国の兵を相手にする覚悟を決めた。

そっとカトリーナはオリヴィアの居る窓際に近付き外を見る。

既に日は沈み、外は真っ暗。

その闇に紛れて確かに屋根伝いに移動する人影を確認した。


「急いでエルを連れて逃げましょう」


カトリーナの言葉にオリヴィアは頷く。

ベッドからキューが降り出入口へと向かう中カトリーナはエルの身体を抱える。


「ガル」


「良し、行くわよ」


キューが出入口から顔を覗かせ安全確認をした後オリヴィアに向かって頷きながら鳴けばオリヴィアは直ぐに理解しカトリーナを手招きして廊下へと出た。


深夜、暗い廊下を身を低くして進む。

廊下の窓から再び外を確認するオリヴィア。

その視線の先に確かに地上から医療施設に向けて進む人影を見た。


「地上からも何人か入り込んできたわ」


「逃げてるのが気付かれない内に脱出したい所ですね……」


相手はまだ標的が病床で寝てると思っているだろう、それがこうして逃げ出しているとバレれば外に包囲網を引くだろう。

その前にカトリーナ達は此処から逃げ出したい。


「シー……」


先行するオリヴィアが口に人差し指を当てて停止、カトリーナもそれに従い止まる。


廊下の突き当り、その角から音が聞こえ、微かに明かりも見えた。


「こっちよ……」


すぐ近くの扉を静かに開けてオリヴィアとキューが室内に入る、その後を追ってカトリーナも進む。


室内をゆっくりと通る、廊下から聞こえる複数の足音に動きを止める。

カトリーナは背中を汗が流れるのを感じた。


足音が通り過ぎカトリーナ達は移動を再開する。

そのまま室内を抜け階段を降りる。


その時、焼けた様な匂いが何処からか流れてきた。


「っ!あいつら此処に火をっ!!」


エルの居た病室まで辿り着いた者が居ないことに気付いた。病床がまだ温かみを帯びていることから襲撃者達はまだ施設内にエルが居ることを確信しこの医療施設ごと燃やす事にしたようだ。


階段の踊り場からオリヴィアが窓から外を見ればあっちこっちで火の手が上がっているのが分かった。


「居たぞっごぉ!?」


オリヴィア達の姿を視認した黒い襲撃者はキューがその顔に体当たりをした事で沈黙させられた。


1人、また1人と見つかる事にキューやオリヴィアに制圧される襲撃者達。


「不味いわね……」


着々と襲撃者達が包囲を完成させつつあった。


「見つけたぞ!」


「チッ!」


2人の襲撃者に見つかった、即座に制圧に掛かる。

その時、オリヴィアとキューの後ろの窓を突き破って3人の襲撃者がカトリーナへと襲い掛かった。


「ごっ!?」


カトリーナと襲撃者の間に身を滑り込ませた者が1人目の顔を殴り抜け、2人目の腕を掴み回転、3人目へ投げつけて即座に3人の襲撃者を制圧した。


「こっちよ……」


黒い外套に身を隠した女が手招く。


「あ、貴方は?!」


「私はローズ、ローズ・アステール」


その名をカトリーナは知っていた。

なぜなら彼女はサリーネ・アステールの義母であり良くサリーネから話を聞かされていたからだ。


曰く、一度も近接戦で勝てた試しが無いと。


救援に来たローズに付いて行き、カトリーナは火に包まれた医療施設から脱出しエルフ領へと向かう。


途中で迎えに来たカナリア達と合流しそこからは馬に乗ってセレーネの下へと急ぐ。


エルフの王城、その一室にエルのための部屋が用意されていた。

カトリーナはセシリア達と合流し、その部屋へと通されエルをセレーネへと預けた。

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