第45話 防衛戦
ゲネシスとフィーニスの国境付近に到着した俺を待ち構えていたのは6機の黒い人型戦闘機と空中に浮かぶ白い戦艦。
六試人型戦闘機及び新型空中戦艦だ。
ベオから送られてきた情報によると。
両手で保持する巨大な砲を持った遠距離タイプが2機。
盾とブレードを思った近距離タイプが2機。
ライフルとブレードを持った中、近距離タイプが2機いる。
また相手の装甲材も武器も最新式である。
試作機であるイニーツィオでは分が悪いけどやるしか無い。
Beo《分かっていると思うが戦闘不能にすれば良い、わざわざ殺す必要は無いからな》
「うん」
俺を視認した近距離タイプの1体が此方に向かって接近してくる。
俺は即座に背中に装備されている150mm滑腔砲を右手に持ち狙いを定める。
照準器が人型と重なった瞬間に引き金を引く。
轟音と共に放たれた砲弾は接近する人型の構える盾に着弾。
接近してきていた人型はその衝撃に耐えられず後退った。
〘効果ありですね〙
そう言ってココがモニターを拡大して映した画面には大きく凹んだ盾が見える。
幾ら最新式の装甲材を用いた盾でも滑腔砲の破壊力を前に無傷では居られないようだ。
〘後方の人型より遠距離砲撃、着弾地点把握……避ける必要はありません〙
数秒後俺から少し離れた2カ所で爆発が起こった、ココの言った通り避ける必要は無く、ただ突っ立ってただけでした。
俺は滑腔砲を構え相手の動きを注視するが先程の滑腔砲が効いたのか向こうは盾を構えるだけで接近してくる事は無かった。
その間に何度か砲撃が合ったがどれも避ける必要は無かった。
〘言われた通りに確認しましたが地盤が崩れる可能性もありません〙
相手が俺の立つ位置の地盤落下を狙ったのかと思いココに調べてもらったがそんな事は無かった。
「パイロットは慣れてないのかな?」
〘私達に気付かれないようにしていたならシミュレーションはやっていても実戦は始めてでしょう、つまりド素人ですね〙
ココはそう結論付けた。
けれど油断はしてはいけない。
俺は滑腔砲を構え照準器を合わせる。
狙うは後方の遠距離タイプ。
戦闘中に何度も何度も撃ち込まれては流石に鬱陶しいので盾持ちが仕掛けてこない今の内に片方仕留めとく。
引き金を引く。
轟音、放たれた弾丸は後方で無防備に立ち続けている人型の頭部に着弾し爆発。
頭部が吹っ飛びながら後ろへと倒れた。
「外した」
〘いえ、当たっていますが?〙
直ぐに狙いを遠距離タイプの片割れに向ける、不味いと思ったのだろう近距離2機と近中距離1機が此方に駆け寄る。残りの1機はその場に立ったままだ。
「コックピット狙ったんだけど頭だから外れた」
〘狙いは外れましたが機体に当てているので良いのでは?頭部が壊れたことで正確な射撃はもう出来ませんし〙
轟音、滑腔砲から放たれた弾丸は今度はしっかりとコックピットをノックした。
その衝撃に当たった人型は転倒した。
〘魔力反応、回避を〙
言われた通りスラスターを吹かして横に回避行動を取ると俺の居た場所を赤い魔力の光線が通り過ぎた。
「えっ、なにあれ」
Beo《魔力ライフルだな、文字通り魔力を弾丸として放つ人型用の兵器だ》
「俺の知ってる魔力ライフルと違う……!」
俺の知ってるのは弾丸であってアンコニュみたいにあんな光線を放ったりしないっ!
〘流石、最新式と言うだけありますね。当たるとイニーツィオの装甲でも危険ですね〙
「一発も当たるなってことね……」
身体を起こそうとしている遠距離タイプの頭部に滑腔砲を狙って放ち破壊、遠距離からの砲撃を阻止しそのまま中近距離の人型に向かいつつ左手にブレードを装備する。
相手もそれに反応してブレードを構え━━━━
ブゥゥゥゥゥン
「…………」
Beo《マジックブレードだな、ブレード内部に魔力発生器を取り付けブレード表面を魔力でコーティングする事で切れ味を大幅に上げたものだな》
「解説ありがと、でもどうしようか、俺のブレードじゃ勝てないね……」
〘焦らないで下さい、まともにブレード同士でやり合う必要ありませんので〙
相手の新兵器を見てスラスターを吹かして後ろへと飛び退きつつ滑腔砲を撃つ。
中近距離型の肩に着弾し後ろによろめいたのを確認して着地。
頭部を狙ったが避けられちゃった。
Beo《前から調べていたが六試人型戦闘機計画は過激派と呼ばれる神血教会の者が裏で計画したものの様だ》
「裏でって事は本来の計画とは全く別の用途で計画されていたって事?」
俺の乗るイニーツィオは地上部隊の敵防御陣地を空中戦力無しでも突破する事を念頭に開発、作られたものだ。
そして六試人型戦闘機も同様の理由のはず。
ベオと話しつつ滑腔砲で近距離型を撃つ、盾で防がれるがそう何度も耐えられる物ではないだろう。
Beo《ああ、六試人型戦闘機は対アンコニュでは無く、対人用の兵器……奴等、始めから協力する気なぞ無く自分達の物にするつもりだったのだろう……ゴホッ》
対人用、つまり最初から戦争を起こして全てを我が物としようとしたと。
防御陣地の破壊はあくまで建前で本来の使用用途は敵地上部隊の制圧かな魔法使い達相手でも多少は戦えそうだし。
装甲が硬いと地上部隊の攻撃ではビクともしないし。
Beo《また、あの後ろの戦艦も試作だが名前が付けられている、名をdivinity……意味は》
「《神聖》」
〘烏滸がましい、自ら戦争を吹っ掛けた奴等の何処が神聖だと言うのか〙
珍しく不機嫌なココがそう吐き捨てる、声音も何時もより低くかなり怒ってるのが分かる。
システムでここまで感情豊かなのも凄いな、流石にセレーネさん。
「さぞかし自分達が素晴らしいとでも思ってるんだろうね」
Beo《自分達こそが正しいと思ってる集団だ。何度話そうと、我々とは交わらん》
ベオの言葉に耳を傾けながら滑腔砲を放ち近距離型の盾の破壊に成功する。
問題なのはあの魔力刃のブレード、滑腔砲での攻撃は避けれないみたいだけど流石に弾数が足りないし何処かで接近戦になるんだけどあのブレードのせいで近寄り難い。
Beo《新型戦艦、ディヴィニティ級からの攻撃動作を確認。回避しろ》
「了解」
スラスターを吹かしてその場から離れる。
〘ディヴィニティ級の主砲が発射されたのを確認しました、着弾地点把握、当たりませんね〙
ココがそう言った数秒後、轟音と共に爆発し、地面が大きく抉れた。
150mm滑腔砲や敵の遠距離型の砲撃を凌ぐ威力。
流石戦艦と言った所かな。
Beo《ディヴィニティ級の動きは此方で見る、お前は目の前の人型に専念しろ》
「了解」
俺はベオとココの補佐を受け、人型との戦闘を再開した。
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仮称アンコニュ本拠地。
奇襲作戦にて不時着したクーデリアは緊急時の荷物と武器を持って墜落したテレサとソフィーの2人と合流を果たした。
墜落した一式を盾に迫りくるアンコニュをライフルで撃ち倒す3人。
不時着したクーデリアと違い墜落したテレサとソフィーは怪我をしており2人共頭や手に包帯が巻かれている、合流したクーデリアが応急処置で治療を施したのだ。
(脱出は……もう少し掛かりそうですねっ!)
チラリと上空を見たクーデリアは即座に状況を把握した。
現在上空ではジェームズとヴィクトリアの他に4機の黒い一式が四つ羽根や黒い双翼を相手に制空権の確保を行っている。
地上に降りて合流した魔女オリヴィアと言えどこの数の敵から守りながら浮遊するのは危険であり万が一がある為未だ脱出出来ないでいた。
最古にして厄災の魔女と呼ばれるお伽噺の存在であるオリヴィアだが、本来彼女は戦闘が苦手であるのだ。厄災の魔女と呼ばれるのも人族が売ってくる喧嘩を片っ端から受けて返り討ちにしていただけであり、魔物の討伐でそう呼ばれた訳では無い。
fille《もう少しで着くから踏ん張れ!》
「分かっています!!!」
後少し、後少しでフィーユ達が到着する。
そうすれば万全な状況で脱出が出来る。
ライフルが弾切れになれば即座に弾を装填し再び撃つ。
Emily《見えたよ!》
エミリーの声、東側から魔法使い達が援軍に来た。
フィーユ達は即座にクーデリア達の周囲のアンコニュを片付ける。
「今ねっ!」
それを合図にオリヴィアは即座に浮遊魔法で自身とクーデリア達3人を浮かせフィーユ達と合流しようと急ぐ。
その時すぐ後ろで何かが落下し巨大な音を辺りに響かせ、落下地点は大きな土埃が舞っていた。
《━━━━━━━━━!!!!》
凄まじい鳴き声と共に土埃が晴れ、その中から現れる巨体。
2本足に真ん丸で硬い鉄の外殻で覆われた身体に赤い光を放つ鋭い2つの目。
「嘘でしょ……」
鋼鉄鳥がそこに居た。
誰もが言葉を発せない。
今、一番会いたくない敵と会敵してしまったのだ。
そんな鋼鉄鳥の顔面に黒い光線が叩きつけられ爆発を起こした。
「黒い一式!?」
ジェームズ達と共に四つ羽根を蹴散らしていた黒い一式の1機がその機体下部に取り付けられていた魔力砲らしき物から光線を叩きつけたのだ。
それを合図に残りの3機も機首を反転、鋼鉄鳥へと向かって行った。
「今よ!撤退するわ!!」
fille《っ!行くよ皆!!》
オリヴィアの声にフィーユも皆へと声を掛け一斉に撤退を始める。
鋼鉄鳥は周囲を飛び回る黒い一式に夢中でフィーユ達を気にも留めていなかった。
黒い一式のお陰により、フィーユ達は無事に仮称アンコニュの本拠地より脱出を果たした。




