第41話 ツェントルム奪還
エルフの王城、そのセシリアの自室にて。
日に日に寒くなりセシリアの部屋の中は暖かさを維持する為の魔導具が作動し快適な温度で過ごせる。
そんな中俺はベッドで毛布を被りセシリアに抱きしめられて横になっていた。
「すぅ……すぅ……」
自身の胸に埋めるよう、俺の頭を優しく抱いて足を絡ませるセシリアからは規則正しい寝息とゆっくりと上下するその柔らかな胸から心音が聞こえてくる。
俺の背後には毛布に入り込み丸まったキューちゃんの寝息が聞こえる。
セシリアは決して力強く抱き着いている訳では無くまた眠っている為意識がある訳でも無いのだけれど、どういう訳か俺が逃れようとすると少し力を込めて抱き寄せてくる為抜け出せない。
つまり逃げようとすればするほどセシリアの柔らかな肉体の感触を強く感じる訳ですね。
頭から被った毛布を少し退ける、部屋の中は暗く閉め切ったカーテンの隙間から日が差してない事からまだ夜の時間である事が分かる。
まだ起きるには早い、だから俺はそのまま眠りに就くことにした。
目を閉じてセシリアの呼吸と心音、その身体の柔らかさに包まれるとあっという間に眠気に襲われ意識が遠のく。
セシリアと寝るようになってから不思議と良く眠れる。
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イムエーストゥン要塞奪還から数日間、要塞の修理と並行してツェントルム奪還に向けての準備を行った。
そして全ての準備を終え、いよいよツェントルムの奪還が始まる。
起きてローザさん達と一緒に朝食を食べ終えた俺はセシリアと共に試作2型でツェントルムへと行く為に格納庫へと向かって歩いていた。
セシリアとお揃いの緑色の防寒着を着て手を繋いで歩く、頭の上に何時ものようにキューちゃんを乗せて。
ちなみに俺の着ている防寒着はセシリアのお古である、どうしてもと頑なに譲らなかった為お古を着させてもらっているよ。
セシリアのお古と言うこともあり少し大きいその防寒着からは当たり前だがセシリアの良い匂いがする。
こう、セシリアに全身を包まれているみたいに。
格納庫に到着、整備員さんがあっちこっちに行ったり来たりしてる中俺とセシリアは真っ直ぐ試作2型に向かう。
「おはようございます、エル、セシリア様」
「おはよ、クーデリア」
「おはようございます、クーデリア」
俺とセシリアに気付いたクーデリアがこちらに駆け寄って来て挨拶してくれたのでこちらも挨拶を返す。
「準備は出来た?」
「はい、私含め全員準備出来てますよ」
「了解」
クーデリアは再び自機の一式へと向かう。
そちらに視線を向けると一式に乗り込んでいたソフィー達と目が合い笑顔で手を振ってきたから振り返す。
「では私達も早速準備しましょうか」
「うん」
準備と言っても実際は殆ど終えている。
俺はセシリアと共に防寒着を脱いで格納庫内の収納棚へと入れる、防寒着の下に既にフライトスーツを着用しているのでこのまま荷物を持って試作2型へと戻る。
緊急時に備えて暖の取れる魔導具等を食料と一緒に試作2型の後部に乗せる。
そのままコックピットに乗り込み、セシリアが乗った後キャノピーが閉まる。
〘システム起動します〙
試作2型のエンジンを起動させ、セシリアとココに各種システムを確認してもらう。
またツェントルム奪還作戦にて使用する武装は予め決めておいた、俺が使用するのは無誘導ミサイル。クーデリア達は誘導ミサイルを装備させてある。
離陸に問題ないと判断し俺達は滑走路へと進む。
俺を先頭にクーデリア達が並んだ事を確認。
「それじゃ行こうか」
「はい」
banalTeam《了解》
まずは俺と横に並んだクーデリアが発進、そのまま空へと上がる、直ぐにジェームズとソフィー、ヴィクトリアとテレサが上がってくる。
空で編隊を組んだ後ツェントルムへ向けて飛行する。
事前の偵察によってツェントルムを囲む様に聳え立つ城壁の上にガーディアン・ゴーレムが複数体居ることが分かっている。
その数はこちらのミサイルの数より多く、全てのガーディアン・ゴーレムを倒す事は出来ない。
その為優先すべきは侵入路付近のガーディアン・ゴーレムの撃破である。
ガーディアン・ゴーレムの遠距離攻撃は地上部隊に取って非常に脅威だからね。
自分達の攻撃の届かない範囲外から延々と光線が飛んでくるのは堪ったものじゃないし。
その為俺達含めた空中部隊は奪還作戦においてかなり重要だろう。
飛び続け、イムエーストゥン要塞を越えツェントルムの都市が見えてきた。
試作2型から地上を見れば地上部隊が防寒具を着ての進軍しているのが見えた。
ツェントルム付近にも地上部隊が見える事から下に居るのは後続、または補給部隊かな。
ツェントルムの城壁や空中で小爆発が起きていることから既に戦闘が始まっているのが分かる。
「このまま低空で侵入、地上部隊の侵入路付近のガーディアン・ゴーレムにミサイルを発射した後即座に速度を上げツェントルム上空へと離脱するよ」
Kudelia《了解しました》
俺の合図で皆が横一列となる。
味方の魔法使い達には既に連絡済み、俺達の進路の邪魔にならない様に上空で立ち回りつつガーディアン・ゴーレムの意識を釘付けにして俺達の援護に徹してくれている。
「照準ヨシ、ミサイル発射!」
セシリアの掛け声と共に放たれたミサイル、それに呼応するようにクーデリア達からもミサイルが2発ずつ放たれる。
狙いは頭部と胴体、寸分違わずミサイルは其処に着弾し6体のガーディアン・ゴーレムがその場に倒れ人型の瓦礫と化す。
俺達はそのまま城壁を越える。
城壁を越えたと同時に操縦桿を引いて急上昇を始める。
魔法使い達から入れ替わる様に、ガーディアン・ゴーレムの意識が俺達へと向き光線が放たれる。
「喰い付いたっ!!!」
《今っ!!!》
そしてその隙を付いて魔法使い達がガーディアン・ゴーレムに魔法を撃ちガーディアン・ゴーレムを撃ち倒していく。
俺達は即座に反転し迎撃に上がった四つ羽根を機銃で蹴散らす。
「シャルルさん、先に侵入路を確保しても良い?」
Charles《侵入路にアンコニュの地上部隊が外に流れ出て来る程大量に張り付いてないなら確保しても大丈夫です!》
チラリと侵入路付近の地上を目視する。
大量には居ないな、良し。
「セシリア」
「分かりました」
機首を侵入路へと向けてセシリアに声を掛ければ間髪入れずに返事と共にミサイルが放たれた。
Charles《……エル、せめて一報入れて下さい》
「すいません」
シャルルから低い声でそう言われ謝罪する。
Charles《全く……地上部隊をツェントルムへと侵入させても良さそうですか?》
「はい、大半のガーディアン・ゴーレムが沈黙しましたので大丈夫だと思いますよ」
Charles《了解しました、では地上部隊はプリュフォール隊を先頭に侵入して下さい!》
Stella《了解、行くわよ》
Sarine《りょうか〜い!》
「建物の影に隠れている奴も居るから気を付けるんだよ!」
Sarine《は~い!気を付けますっ!!》
地上部隊がツェントルム内部へと向けて進軍を開始した。
俺達はツェントルム上空を旋回し建物の陰から空へと上がってくる四つ羽根の相手を始める。
「鋼鉄鳥が居なくて本当に良かったわ」
「あれ本当に面倒くさいですからね……ツェントルム外より反応、速さからして黒き双翼ですね!方位は270!!」
「了解、バナール隊方位270、ヘッドオン」
banalTeam《了解》
クーデリア達を引き連れ西へと機首を向ける。
そして物の数秒でその姿を目視出来る距離まで近づく。
「機銃の射程内」
セシリアの言葉に反応し俺は引き金を引き機銃を放つ。
弾丸は先頭の黒き双翼に命中し奴を倒す事に成功する。
「クーデリア達は誘導ミサイル使っても良いからね!」
Kudelia《分かりました!》
そう言った途端に皆ミサイルを発射した。
流石にまだあの高速移動する奴を機銃で狙うのは厳しいみたいだね。
james《今回は数が多いな》
Sofie《だね〜!》
「売れ残った在庫処分でもしてるのかな」
Victoria《在庫処分じゃないと思うけど……》
Teresa《そもそも売れ残りでもないと思います》
「在庫処分してるのはエルの方では? この試作品の無誘導ミサイルとか要らないって言ってましたもんね?」
後ろから刺された。
「だって……格納庫圧迫してて邪魔なんだもん……
誘導ミサイルの方を量産して格納庫に運んで来てるのにいつまでも無誘導ミサイル置いてても邪魔じゃん……」
そりゃあ開発、生産コスト考えたら誘導ミサイルより良いけど目標に対する威力や命中率が低いんじゃ余り役に立たないじゃん……
まぁ動かない地上施設とかには一斉に発射する事で命中率や威力を補えるし、誘導システムが無い分故障する可能性が低いとか利点はあるけどね。
ただ高速移動する黒き双翼とかとにかく動く奴が相手だから俺からすると無誘導は扱いづらいんだよね。
そんな風に話しながら黒き双翼を倒し残りのガーディアン・ゴーレムを倒す。
ガーディアン・ゴーレムを全て倒したことで魔法使い達が空へと戻り制空権を確保、また複数の魔法使い達による地上への援護も可能となりツェントルムの奪還は順調に進んだ。




