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Combat・ with・The・unknown  作者: 唯ノ蒼月
序章 はじまりの序曲

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第4話 支援要請

ゲネシス聖都・某所


長テーブルを挟んで向き合う形で椅子に座る者たちが居るこの場所で今話し合いが行われていた。この場に居る者たちは全員【過激派】と呼ばれる者でゲネシスの軍上層部である。

それらは全員金の装飾が施された白装束を着用している。


「ヴィンセントの奴等もしつこい物だ、こう何度も支援要請を送ってくるとは」


「まともな支援など得られる筈も無いのに健気な事だ」


支援要請が記されたヴィンセント魔法大国からの紙を持っていた人物が長テーブルへと叩きつけるように置く。


「今回はどうする?無視するか?」


「流石に無視は不味いだろう、しかし兵を送るのも厳しいのが現実、だが我々と同じくフィーニス帝国もイコル聖王国もアンコニュに侵攻されている為支援を得られない事くらい分かるだろうに」


男は吐き捨てる様に言った。

ゲネシスは勿論ヴィンセント魔法大国もフィーニス帝国もイコル聖王国も異形の生命体アンコニュの侵攻を受けている。

その中でもヴィンセント魔法大国はイコル聖王国がアンコニュに南部領土を支配された事で北、西、南の3方向からの侵攻を受けている、その為他の3カ国よりも状況が悪いのだ。


「我々やフィーニス、イコルは最悪海へ出て残った離島へと逃げれば良い、しかしヴィンセントは大陸内部にあり海へ逃げるのは難しい為必死だろう」


「しかもゲネシス上層部の殆どは海へと逃げる考えを持っていないからな、いくら連合を組んだとは言え仲の悪いフィーニスやイコルを頼りにはしたくないのだろう」


故にヴィンセントはゲネシスばかりに支援を要請する、その要請がフィーニス、イコルにも通ずる過激派が処理してるとは夢にも思わないだろう。


それぞれがヴィンセントの支援要請をどうするか考えている時、1人の男が手を挙げた。


「私に一つ案がある」


「なんだ?」


「ハーゲン卿に許可を頂く必要があるが、例の試作空中戦闘支援機を送るのは如何か」


神血教会が裏で行った人体実験、その失敗作が試験を行う試作空中戦闘支援機を送り込む。

データも取れて、撃墜されても乗り手が失敗作である為ゲネシスの戦力としても痛手は無く、その上で支援をしたというヴィンセントへの貸しが手に入る。

だが失敗作とは言え今はハーゲンが引き取り人、その本人に許可無くはやれない。

故にその場の全員が静かに椅子に座るその小太りの中年男性へと視線を向ける。


「私は構わん」


そしてハーゲンは迷わず許可を出した。


「ハーゲン卿の許可は得られた、どうする?」


「私は異議はない、恩を売っておくのも良いからな」


「私もだ」


「ではそうしよう」


「「「「全ては神血の為に」」」」


そうして話し合いは終わり、1人また1人と部屋を出ていった。


「ゴホッ」


「ハーゲン卿、最近体調が優れぬようですが……」


「何、安静にしていれば直に治るだろう」







Crank(クランク)《過激派の上層部から新たな命令だ……ヴィンセント魔法大国より支援要請、直ちに現場へと向え……だそうだ》


「行くしかないですよねぇ……」


試験飛行中に新たな命令が出た様でクランクさんから通信が入る。

過激派上層部、俺の引き取り人であるハゲもそうだったな。

下手するとハゲも関与してるんじゃないか?。


Beo(ベオ)《命令ならば仕方あるまい、直ちに機首を方位345に取れ、おおよそ15分後にヴィンセントへと着くだろう、補助は何時も通り私がする》


ベオの機械音声を聞き機首を方位345、北北西へと向けスロットルレバーを全開にして全速力で向かう。


「命令が増えない事を祈るよ」


《……》


俺の切実な願いを通信越しに聞いた皆は黙ってしまった。


Beo《……ロスト、お前の本名だが》


「え、何急に」


いきなり俺の本名とか言われても記憶無いから分からないよ。


Beo《お前に記憶が無いと聞いてな、お前の情報を調べてみたんだ》


「それで?結果分かったの?」


Beo《エル、エル・ヴァルドリン、それがお前の本名だ、調べるのに骨が折れたぞ》


俺の問への返答にベオはそう応えた。

エル・ヴァルドリン、それが俺の名前らしい。


Cecilia(セシリア)《良かったですね、エル》


そして俺の名前が分かった途端に通信で名前を呼んでくるセシリア、その声音は何処か嬉しそうに聞こえた。


Beo《ちなみに家族構成も調べた所妹が2人、父と母の5人家族の様だ、父親はお前を売った後1人フィーニス帝国へと移動した様だ、妹2人と妻にお前を売って得た金の半分を置いてな》


Cecilia《妹さん達は保護したいですね……お名前は分かりますか?》


「いや覚えてない」


Cecilia《エルには聞いてません》


セシリアが酷い……。

少し心が挫けそうな俺を他所にベオがセシリアに答える。


Beo《その辺りもちゃんと調べてある、姉の方がレスティナ・ヴァルドリン、妹の方がアルティナ・ヴァルドリンだ、髪色はエルと同じく紅色で長く伸ばし、瞳の色は黒色だ、ちなみに歳はレスティナが1歳下、アルティナが2歳下だ》


俺が今13歳だからレスティナが12歳でアルティナが11歳って事か。


Cecilia《なるほど、ちなみにご両親は?》


Beo《母がシャルロット・ヴァルドリン、クズな父親がガーベッジ・ヴァルドリンだ》


Cecilia《ありがとうございます、よく覚えておきます》


俺は覚える必要は無いかな、特に父の方は。

父の名を覚えるくらいなら別の事覚えた方がまだ有用だろう、母の名前は覚えておいた方が一応良いかな、会えるとは思えないけど。


Crank《……坊主?》


Cecilia《エル?》 


どうやらずっと無言で飛行してたのが異様と捉えられたらしい。


「なに?」


Cecilia《ご、ごめんなさい?!わ、悪気があった訳ではっ!》


「何の話?」


急にセシリアに謝られたけど何について謝ってるか俺には分からない。


Cecilia《その、怒ってます……よね……》


「待って、何に対して怒ってる事になってる?」


Crank《坊主、気づいていないのかもしれないが、今のお前さんの声音だいぶ不機嫌だぞ》


「ほんとに?」


Crank《本当だ》


どうやら自分では気付いていなかったが声がかなり不機嫌と捉えられたみたい。


「怒ってはないよ、これは本当、ただ少し……ううん、なんでもない、もうじきヴィンセント魔法大国に着くと思うから集中するね」


Cecilia 《ごめんなさい……》


セシリアからの謝罪を最後に俺は再び無言となり、目の前に集中する。

確かに少し傷付いた、けれど所詮は失敗作なんだからあまりセシリアをどうこう責めたり悩ませる訳にはいかないよね。


操縦桿を両手で握りしめつつ前を見つめる。


Beo《ヴィンセント魔法大国への到着を確認、方位315に修正、約18分後に到着する》


「了解」


機首を方位315に向けそのまま飛び続ける。

眼下にちらほら街や村が見える中ただ飛び続ける。


「そう言えばベオってさ」


Beo《どうした?》


「どうやって俺の位置把握してるの?」


Crank《言われてみればそうだな……実際どう把握してるんだ?》


ベオは恐らくだが初飛行の時から俺の位置を常に把握していたと思う、それをどうやって把握してるのかが疑問に思って聞いてみた。

クランクさんやセシリアは通信だけで位置までは把握出来てないから余計気になった。


Beo《まさか位置を把握する機材がそちらには無いのか?こちらは試作機の位置を把握する為に試作機に搭載されている通信機から位置を特定する機器があるが……もし良ければそちらに送ろう、これがあればより細かく補助が出来るからな》


Crank《助かる、いつもすまない》


Beo《困った時はお互い様だ、気にするな》


そんな機械があるんだ、なるほどそれで俺の位置を特定し補助してくれているんだな、助かる。

そうして飛び続けているとずっと遠くの空が赤く染まっていて、それは次第に大きくなる。


そうして近付いて、空が赤く染まっていた原因が判明した。

燃え盛る炎が眼下に広がっていた。

1つの街が燃えているのだ、その上空で魔法使いの少女達が黒い四つ羽根のアンコニュと戦闘を行っている。


俺の乗る試作機から発せられる音、それに気付き発生源を見ようと振り向く少女達の顔は此方を視認した途端嬉しそうな笑顔に変わった。

支援要請が受理され援軍が来たことが嬉しいんだろうか。


黒い四つ羽根のアンコニュに照準を合わせ機関砲の引き金を引き弾丸を発射しその横を通り抜ける。

操縦桿を引き旋回し倒した事を確認しながら他の四つ羽根を狙う。


前もそうだったけど、この旋回時の押さえつけられる圧力はキツい、しかも速度が速ければ速いほど感じる圧力……確かベオ曰くGだったかな、がキツくなる。

またGにも種類があるらしく、通常の旋回で足元に体が押さえつけられる感覚になるものをプラスGと呼び、前回りをするように機首から下に突っ込んで旋回し体がフワリと浮くような感覚となるこれをマイナスGと呼ぶらしい。


操縦桿を握りしめ、Gに耐えつつ魔法使いの少女と相対する四つ羽根を狙い、倒す。

流石にこの試作機を無視出来なくなったのか何体かの四つ羽根が此方を捉えるとその数瞬後にその全身が燃え、灰となって散っていく。

魔法使いの少女が魔法を放った様だ。


試作機を追えば魔法使い達から、魔法使いと相対すればこの試作機から攻撃される。

そうして四つ羽根は徐々にその数を減らしていき、遂に全ての四つ羽根を倒す事に成功する。


「恐らく新たなアンコニュ、西の方」


安堵したのも束の間、西の方角を見ると黒い点が複数見えた、恐らくアンコニュだろう。

喜ぶ魔法使い達を他所に俺は旋回し機首を西に向け、スロットルレバーを全開にし全速力で黒い点へと向かう。


そして数秒後、互いの有効射程範囲内に入る。


「っ?!」


照準を合わせた四つ羽根の前に黒色の光が集まりだす、それは初めての飛行試験で見た光線を集める姿。

攻撃する為黒い光を集めだした四つ羽根に思わず引き金を引いてしまった。

機関砲の発砲音、弾丸は容赦なく四つ羽根を襲いその命を奪う。

集まっていた黒い光は術者がやられたからか霧散し方方へと散った。


「はぁ……はぁ……!」


そのまま、数体の四つ羽根を通り抜け旋回する、俺が飛んできた方から魔法使いの少女達が慌てて駆け付けてきているのが見えるが到着までほんの少し時間が掛かりそうだ。


そのまま機首を残りのアンコニュへと向け、いざ引き金を引いた時、問題が発生した。


「え?」


引き金は確かに引いた、けれど機関砲から弾丸が発射される事は無かった。

一度引き金を離し、すぐにもう一度引き金を引くがやはり出ない。


「なんでっ!なんで出ないっ?!」


弾切れまたは弾詰まり。

だがこの時の俺は焦りそんな事も分からずただひたすらに引き金を引いては離すを繰り返していた。


眼前に迫る四つ羽根、咄嗟に操縦桿を引いて高度を上昇させ事なきを得る。


Cecilia《エルっ!応答してください!エル!》


「た、弾が出ないっ!」


通信機から聞こえるセシリアの声に我に返り急いで自分の状況を伝える。


Beo《弾詰まりかっ攻撃方法を魔力砲に切り替えるんだ!》


そうだこの試作機にはまだ魔力砲があ━━━


瞬間目の前を黒色の光線が昇っていった。

敵アンコニュの魔力攻撃が目の前を掠めた。


「はっ……!」


身体が、思考がまた死の恐怖に包まれる。

早く魔力砲を放たなければ。


━━━魔力砲は操縦桿の1番上、親指を乗せる所のカバーを外し中にあるボタンを押す事で魔素を集め魔力に変換しボタンを離せば魔力砲から魔力の塊が放たれる。


マニュアルに書かれていた事を思い出し急いで操縦桿の上辺のカバーを親指で弾くように外す。

この間にも四つ羽根の攻撃に晒されていてキャノピーの向こう側を黒の光線が複数通り抜けている。

震える手で魔力砲の引き金を押す、するとキャノピーの前面に緑色の文字で【魔力充填率━0%】と表示された。


「早く、早くっ!」


魔力充填の速度は決して遅くはない、一瞬で10%、20%と上がっていっているから。

けれど今はアンコニュに襲われている最中で死ぬかもしれない。

襲い来るアンコニュを倒す為、早く溜まって欲しいと思うのは普通だろう。


「ひぃっ!?」


後ろから鈍く重い音がしキャノピーの中で警告音が鳴り響いた事で更に恐怖が駆られる。


Beo《落ち着くんだ!その機体は頑丈に作られている!並大抵の攻撃では壊れん!》


ベオは通信でそう言うが、未だに警告音は鳴り止まず不安と恐怖は募る一方。


Crank《坊主っ!帰投するんだっ!》


Beo《これ以上の戦闘支援は却って危険かっ……エル!戦闘行為を止め戻れ!ヴィンセントには此方から連絡を入れておく!》


「や、やらなきゃっ!」


Cecilia《エルっ?!》


此処で支援を止めたら今後の作戦や連合の結び付きに支障が出るかも知れない。

そう考えたらやるしかなかった。

覚悟を決め操縦桿を強く握り締める。


魔力砲を放つ為にアンコニュを正面に捉えるよう旋回し、充填率を見やる。


【魔力充填率━100%】


「いけるっ」


アンコニュに照準を合わせ魔力砲の引き金、ボタンを離す。


前面に書かれていた緑色の文字の消失と共に放たれた赤く大きな魔力の塊が目の前のアンコニュを数体巻き込み、包み込むように飛んでいき消失する。


目の前にいたアンコニュとその後方にいたアンコニュを巻き込み、多くのアンコニュは赤い魔力の塊と共に消えた。


「やった……あっ!?アァ━━━?!」


後方で先程までよりも更に大きい音が鳴り、試験機が大きく揺れる。


慌てて周囲を見渡し、上に最後の1体が居ることを確認。

機首を向けようとした矢先にその最後の1体の全身が燃え上がり地上へと落ちていった。

旋回しながら後方を見れば駆け付けた魔法使いの少女達が居た事から彼女達が魔法を用いて倒してくれたようだ。


周囲にアンコニュの姿は無い事を確認して旋回、そのまま基地を目指す。


「き、帰還するよ」


Beo《よくやった……戻ってゆっくり休むんだ》


ベオ達から安堵の吐息が吐かれたのを通信機越しに聞きながらスロットルレバーを全開にし全速力で飛行する。

行きに掛かった時間を考えるのに基地に戻るまで約30分くらいかな。


あれだけ煩かった警告音もいつの間にか止まっていた。


「やっぱり慣れないや」


Beo《一度や二度で慣れるものでもないだろう、こればかりは数をこなすしかない》


ベオの言った通りなんだろうな、今日も帰ったら恐らく手足が震えて立てなくなりそう。


「弾数の残量が分かると良いんだけどね、あと武装がもう少しあれば慌てずに済むかも」


Beo《後でシステムや武装を追加できるか調べてみるとしよう》


そうして初めての時と同じ様に飛び、基地に到着した。


「今度はなにっ?!」


だが此処で新たな問題が発生。

着陸の為に前脚を出した途端鳴り響く警告音、焦る気持ちを抑えながら計器を見ればどうやら3つある脚の内、後ろ脚の2つが引っかかったのか出てこない様だ、これでは着陸が出来ない……。


Beo《脚が出ない……仕方ない、胴体着陸……胴体を直接滑走路に接触させて緊急着陸するぞ》


ベオの指示に従い、前脚を収納し速度を落として地面へと胴体を直接接触させる。


「っ……?!っ!」


Beo《大丈夫だ、そのまま……そうだ、良いぞ》


今までの着陸よりも強い衝撃に震えるもベオが大丈夫と言うから信じて機体の制御に集中する。


揺れも次第に収まりなんとか胴体着陸を成功させる。


Beo《よくやった、今日はゆっくり休め》


「ありがとう」


助けてくれたベオにお礼を言って試作機の原動機を切り、キャノピーを開ける。


「エル」


「うん」


キャノピーを開けると、コックピットの外で両手を広げたセシリアに返事をしてコックピットの縁に両手を掛けて乗り越える。

やはりと言うか、予測通り力が入らず落下するがセシリアが優しく抱きとめてくれる。


「ありがと」


お礼を言ってセシリアの顔を見つめる。


「……私の顔に何か付いてますか?」


「ううん、いつもありがとうね」


俺を抱えるセシリアの顔がほんの少し赤くなった気がした。

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