37話 エルツ奪還準備
離島奪還から数日後。
バナール隊、リュミエール隊、プリュフォール隊等、連合の主力部隊によるエルツ国奪還作戦の再開が決められた。
何でも連合上層部は大陸西部にアンコニュの母体があると見ているらしくその足掛かりにエルツを奪還して西部の偵察を行いたいそうだ。
最終目的はエルツの要の地であるツェントルムと呼ばれる都市の奪還と要の地の機能回復。
やり方はエルフの国の時同様制空権を確保しながら地上のアンコニュを一体も残さないようゆっくりと要の地まで進軍する予定。
だがイニーツィオは修理中の為直ぐに出撃は出来ないから鋼鉄鳥が居た場合地上部隊が壊滅するので基本的にはクーデリア達が偵察する、問題が無ければそのまま進軍するが鋼鉄鳥等が居た場合は進軍ルートを絞る必要が出てくる為必ずしも地上を全て制圧出来るとは限らない。
「ほんとっ……ここに来て厄介な新種が現れたなぁ」
「そうだねぇ」
俺の呟きにサリーネが反応する。
現在俺はゲネシス南西基地のサリーネの部屋、そのベッドの上でサリーネに抱き枕にされてる。
両手足を絡ませて抱き着いてきているからサリーネの柔らかな肌や後頭部に柔らかな感触を感じるが気にしてはいけない。
作戦開始までまだ時間はあり、今は作戦に向けての準備期間と言った所だろうか。
ちなみに必要な物資については既に運搬が始まっている。
空中輸送なのでそこまで時間は掛からないだろうね。
鋼鉄鳥が居ることからイニーツィオの修理が終わるまで待ちたいけど多分それより先に作戦が始まる。
海に入るものではないね。
対鋼鉄鳥用の武器の開発も行われているが完成するまでまだ時間が掛かるだろうね。
「エル〜こっち見て〜」
「は~いなんです━━」
手足による拘束が解かれたので転がって振り向くと口を塞がれた。
直ぐ目の前にあるサリーネの顔と口に感じる柔らかな感触。
ついこの間同じ事があったね……。
ステラの次はサリーネから口付けを貰った。
「えへ、好きだよエル」
サリーネはゆっくりと唇を離して笑顔でそう言ってきた。
「っ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「わっ……」
慣れない状況に恥ずかしさを感じサリーネの胸に顔を埋めて誤魔化す。
「えへへ、耳まで真っ赤。照れちゃって可愛いね♡」
サリーネはそう言って追い討ちを掛けてきた。しかも逃げれない様に丁寧にまた抱き着いて。
「早く慣れると良いね〜エルの事好きなの私やステラ以外にも居るからさ〜」
サリーネからとんでもないことを聞かされた。
一体こんな失敗作を誰が好きになると言うのだろうか。
と言うかあの時言ってたステラの好きな人って俺かよ……。確かに口付けされたけどさ……。
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そうして気持ちが落ち着いた後、サリーネと共に部屋を出る。
サリーネはもう少し恥じらいを持とうよ、いきなり目の前で寝間着脱いで下着になって着替え始めて私はビックリだよ。
「あっエル!」
「おはよセシリア」
廊下で出会ったセシリアと挨拶を交わす。
と言ってもとっくに朝の時間は終わりもう昼前なんだけどね。
セシリアの服装は運動着、少し汗をかいている事から運動した後だね。
汗で透けて見えてるからそっと視線を逸らしておこう。
「昨日はステラとでしたが今日はサリーネと一緒でしたか。今夜は私と一緒に寝て頂けますね?」
「セシリアが良いなら良いけど」
なんかここ最近皆一緒に寝たがるよね、オリヴィアさん然りクーデリア達然り。
「そりゃ目を離すと直ぐ無茶をするエルが心配だもの、それ以上に私達は好きな人だから一緒に寝てるだけだけど」
サリーネがそんな事を言うとセシリアも首を縦に振って同意している。
だが待って欲しい、俺はそんなに無茶な行動はしてないと思うんだが。
「そんな無茶してる俺?」
「幼少期の賊の頭の時」
「エルフ救出作戦時の殿の時もあります」
「基地襲撃の時、エルフの前線基地での墜落時、鋼鉄鳥との初戦闘時」
「離島奪還時の空中での飛び移り、海中戦など無茶しかしていませんよぉ?エ〜ル〜?」
「待って!?話せば分か━━━ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?!?!?」
じわじわと近寄ってきたセシリア、後ろにはサリーネが立ち塞がり逃げ道は無い。
そして俺はセシリアに頭部を鷲掴みされたのは言うまでもないね。
その後セシリアにお姫様抱っこされ、単独で散歩に行っていたキューちゃんと合流。
キューちゃんは気にせず俺の腹の上を陣取り、俺はセシリアに抱えられながらそのまま浴室に連れてかれた。
流石に別々じゃ無いと不味いので何とか男湯に逃走、キューちゃんを洗っているのだけれど。
「なんで居るのぉ……」
「貸切にしましたから♪」
「いぇーい♪」
セシリアとサリーネが男湯を女湯(貸切)にして入ってきた。
少しは気にしてくれ……。
入浴だけは避けたかったのに2対1では為す術無く湯船に引きずり込まれた。
と言うか普通に魔法で身体強化は卑怯だと思います。
前をサリーネ、後ろをセシリアに挟まれているせいでドキドキする。
2人共タオル巻いてるからまだ良かった。
風呂から上がり、髪をセシリアに拭かれる。
自分で出来ると言っても聞かない、セシリアはこんなに頑固だっただろうか。
その後は広間にあるソファにキューちゃんと共に寝転がったりして怠惰な1日を過ごしたよ。
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ある日の早朝、自分の自室で辞書で見てたらココと書かれた古代語を発見。
coco
意味は……お気に入り?
これから名前取ってたら……セレーネさんのお気に入りってこと?
いや深く考えては駄目だ、名前の響きが可愛くて付けた可能性もある。
古代語の本を閉じてベッドを見ればそこで眠るクーデリアとテレサ。
とうとう2人で眠りに来た。
無論俺はその2人に挟まれて眠ってた訳なんだけど目が冷めた後に緊張からか二度寝が出来なくてこうして起きた訳だ。
キューちゃんは一人掛けのソファーで丸まってる。
この2人だけではない。
ソフィーとヴィクトリア。
ステラとサリーネ。
フィーユとエミリー。
オリヴィアさんとセレーネさん。
などなど色んな組み合わせで皆来るんだよね。
勿論セレーネさん単独とかもあるし。
そんなある日の夜。
「ついにこの日が来たなっ!」
待ちに待ったこの日がな!
「ああ!」
「やるぞっ!」
ジェームズとアルドル、その2人の手には枕がある。
会議室に集まったのは俺、ジェームズ、アルドル、そして、クランクさんの4人、そして付き添いのキューちゃんである。
今から始まるは男の夢、枕投げである。
無論セシリア達には内緒である。
今思えばこの時全員テンションが可笑しかったな。
枕投げが終われば全員で床で雑魚寝。
キューちゃんも含めた俺達は床で眠る。
こう言う男同士の青春みたいなの、一度やりたかったんだよね。
そして翌朝。
「何やってるんですかぁ!!!!!!!!」
中々起きて来ない俺達を起こしに来たセシリア達に正座させられ滅茶苦茶叱られた。
それぞれが自室に居ない為4人で抜け出して危険な魔物退治とかをやりに行ったのでは無いかと気が気でなかったとか。
そして会議室を開けたら中は散らかり放題で俺達は床で雑魚寝。
うん、そりゃ怒るわ。
女子達に監視されながら片付けていると俺の通信機が鳴った。相手はベオだ。
Beo《取り組み中の所すまないが話がしたいんだが》
「ベオからのお願いですし、仕方ないですね」
「え、待って、俺が答え」
「まだ叱られたいですか?」
「すいません!」
Beo《……取り敢えず話すぞ》
ベオの言葉に皆が作業を止め話を聞こうと俺の周りに集まる。
Beo《離島奪還の時の索敵装置の不具合だが》
Beo《あれはイコル、フィーニスによる妨害だ》
「あ、あれやっぱり妨害だったのね」
これは中々きな臭いな?
あれ、これシャルルさんとカトリーナさんとかってもしかして……
Beo《ちなみにだがフィーニスのシャルル、カトリーナ、そしてテレサは白だ、問題ない。伝えたい事は以上だ。……いや、あと通信傍受……盗み聞きの可能性も考慮し重要な会話は今後通信機では控えた方が良いだろう。ではな》
ベオはそう言って通信を終えた。
シャルルさん達は敵ではないようで良かった。
「にしてもこうも一体どういう目的なんだろうか」
裏でこそこそとしてるのは分かったけどその目的までは分からない。
離島奪還も絶対何かあるぞ。
「もし宜しければ活動拠点をここ南西基地からエルフの王城近くの基地に移しません?女王であるお母様の許可を得なければなりませんが」
セシリアがそう提案してくれた。
確かに俺達の主力基地として知られているし何かされたら終わりだから拠点を移すのはありだね。
「許可が降りたら私もそっちに移動するわ」
「セレーネさんも来るの?」
「ええ、こうも怪しいとフィーニスから距離を取って置きたいわ」
それもそうだが国は良いのだろうか。
「全てが全て私が居なければ機能しない訳じゃ無いわ」
なら良いのだろう。
俺は翌日、セシリアと共にオリヴィアさんにエルフの王城へと送ってもらって話をする事となった。




