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Combat・ with・The・unknown  作者: 唯ノ蒼月
第3章 拡大する戦線

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第30話 エルとサリーネ

アルトゥン鉱山付近での新種のアンコニュ、鋼鉄鳥との戦闘後ゲネシス南西部基地に帰還。


損傷したイニーツィオの修理の為、今日は珍しく休日である。

自室にて。朝から机に向かって椅子に座る俺の膝の上で丸まって眠るキューちゃんを左手で撫でながら右手でノートを書いていた。



【アンコニュの新種について】


“エルツ国アルトゥン鉱山付近にて見つかった新種は2種。一方は黒い双翼と呼ばれ、一式の姿を真似た様に羽根を2本、左右に伸ばした鳥のような姿をした高速移動する異形の生命体。もう一方は鋼鉄鳥の名付けられた2本足に真ん丸な身体。手や腕は無くまた羽根も無い形だけの鳥。赤い光を放つ鋭い2つの目がありまてその身体は硬い外殻で覆われている。”


“黒い双翼は高速移動が厄介極まりないが既存の兵器でも討伐可能、しかし鋼鉄鳥はイニーツィオ(試作人型戦闘機)の150mm滑腔砲やロケット砲を受けても持ち堪えられる耐久力を有する。また口らしき所から放たれる赤い光線がかなり危険である。”



【試作人型戦闘機】


“地上部隊の敵防御陣地を空中戦力無しでも突破する事を念頭に開発、生産された試作機。

また一式や試作機と違い装甲が重装甲と厚くそれなりにアンコニュの攻撃には耐えられる様だ。

武装は150mm滑腔砲とロケット砲、それとイニーツィオに内蔵されている肩部30mm機関砲がある。

けれどどれも鋼鉄鳥を相手するには威力が足りない、元々防御陣地を突破する為の物であるので仕方ないが新たな武器が必要な事に変わりない。”


“鋼鉄鳥の他にも大型のアンコニュが居ないとも限らない為近接武器が欲しい所。”



【試作空中戦闘支援機2型】


“エルフの国での墜落後改修された試作機。

改修の内容は武装の追加や部品を最新の物への交換等。

また原動機およびブースターユニットを一式の改良型に変換した為最大速度も加速度も上がり最大加速度では誰も追従出来ないだろう。

武装は今までの機首の機関砲×2門に追加して両翼に12mm機関銃を1挺ずつ装備。

両翼の前面には魔力の刃を展開する装置を取り付けた。

更に装甲材も最新の物で往来の物よりも頑丈で尚且つ軽量化に成功した装甲を使っている。”



【一式空中戦闘機】


“試作空中戦闘支援機のデータを元に作られた5機の戦闘機。

機首に30mm機関砲×2 、魔力砲1門”


“名称では戦闘機となっているが事実上戦場の主力は未だ魔法使い達であり一式空中戦闘機は実質彼女達の支援機である。また知っての通りアンコニュに支配された地域は支配されてない地域に比べ魔素が殆ど無いと言っても良いくらい少ない。その為一式戦闘機には魔力貯蔵タンクが搭載されておりそれによって魔法使い達に供給する事が出来る。供給するのは魔法使い達が自分でやる為一式のパイロット達が気にする必要は無い。”


“一式空中戦闘機によって魔法使い達の戦線への高速輸送を可能とし、輸送後は彼女達の動く魔力補給地となる。また一式戦闘機自体も武装してるから魔法使い達と共にアンコニュを倒せるし魔力貯蔵タンクの魔力が無くなったらそのまま撤退するも良し、戦線から離脱して魔力を補給後再び高速飛行で戦線復帰しても良し。

魔力の補給は要の地が正常に作動してる所なら空中で幾らでも補給出来る。”



「こんな所かな」


ノートを閉じる。


「終わったの〜?」


サリーネの声に身体ごと振り返ればそこには俺のベッドに寝転がる薄着のサリーネの姿がある。

下着がチラチラ見えたりするからもう少し何か着てもらいたいな。


「終わったよ〜」


「お〜おつかれ〜」


労いの言葉を言いつつサリーネはベッドの上をゴロゴロと転がり続ける。可愛いな。

サリーネが此処に居て良いのか、と言うと問題はない。

現在エルツ国の奪還作戦の準備中である。

アルトゥン鉱山を奪還した事で資材に余裕が出来兵器などを開発中だからだ。

またエルツ国や獣人の国へと進出し戦線を拡大した事で合流を果たしたエルツ国の兵や獣人達にも前線の防衛に当たって貰っているからだ。


にしても……。


俺はベッドに頭から布団を被って寝転がったサリーネに視線を向けた。


ゲネシス最強にして連合軍最強の地上部隊、プリュフォール隊。その副隊長を務めるサリーネ。

ステラは隊長。


仲の良いセシリアはエルフの国の王女で、そのエルフの国も無事に復活を果たした。


クーデリア達バナール隊も今や対アンコニュに必要不可欠な存在にして連合軍のエース部隊だ。


エース部隊と言えばフィーユ率いるリュミエール隊もエース部隊である。


ちなみに俺は連合軍内では正式にはバナール隊ではない。

連合軍での正式な所属はあくまでテストパイロットであり立場は低い。


俺がサリーネ達に関わる事で彼女達に対して嫌がらせが起きないか心配でもある。

特に俺は上層部からよく思われてない気もするから。


ステラ、サリーネ、セシリアが俺に感謝しているというのはよく聞く。

ステラとサリーネは幼少期に囚われの身でそこのボスに襲われたのを俺が助けた事。

セシリアは一人寒空の下、放置されていたのを俺が無断で倉庫、当時の俺の部屋に連れて助けた事。


それだけ。


たったそれだけの事で彼女達の重りになってないかが不安ではある。

助けてくれたから助けなきゃ、守らなきゃ。

そう言った考えが時に人の判断を鈍らせ取り返しの付かない事になる事がある。

ステラとサリーネについては特に俺の左目の傷の事も相まって強くそう思っているかも知れない。

彼女達が無理に俺を守ろうとして自身を窮地に追いやらない為にも、少し話をしようか。


「サリーネ、昔俺が助けた事とかで守らなきゃって考えたり、何か重りになったりしてない?」


「ないよ。私は私の意思でエルを守りたいんだ。助けてくれたから助けるとかそんな理由は無いよ。幼少期にエルが守ってくれた件はただの切っ掛けに過ぎないから」


「なら良い……のかなぁ」


「ステラやセシリアも同じだよ。自分の意志で動いてる。それが重りになった事なんて今まで一度もない。だから変に心配しないでね」


布団から顔を出すサリーネ。

その笑顔は間違いなく自然であり作り物なんかではない。


「それよりエル、身体動かしたいから模擬戦付き合ってよ」


「良いけど……俺そんなに接近戦は戦えないぞ?」


「気にしなくても大丈夫!準備運動みたいなものだし」


「良いなら良いけど」


俺が椅子から立ち上がると同時にサリーネもベッドから起き上がる。キューちゃんは俺の頭の上へと移動した。


「じゃ!行こっか!」


「その前にもう少し服着なさい」




着替えたサリーネと一緒に円形訓練所へと来た。


互いに武器を持ち離れた場所に立つ。危ないのでキューちゃんは少し離れた場所にて此処に来るまでに出会ったオリヴィアさんに見ててもらっている。


武器は互いに慣れたものでサリーネが木剣、俺が練習用魔力式ライフルと木製の短剣。


またこの練習用ライフルは実弾のボルトアクション式ライフルの動作を踏襲しており手動で銃のボルトを操作して弾薬を装填・排莢する動作を起こさなければ魔力弾は発射されず、また魔力が籠もっていても実弾と同じく弾倉分の弾を使い切った後は弾をその分込める動作もいる。

何故そんな面倒くさいことをしているかと言うと本物と同じ動作にしなければ練習にならないと思ったからだ。

特に俺は魔力式ライフルよりも実弾の方を好んで使う。

その為常時魔力が籠もっていて弾が放てる練習用魔力式ライフルを改造し実弾ライフルと同じ動作をしなければ発射出来ないようにしたんだ。


装弾数は5発、つまり5発撃ち切ったら弾を込めなきゃいけない。

ちなみに弾数は30発、その分だけの空薬莢を持ってる。


「じゃ始めよっか」


サリーネが木剣を構えるのと同時に俺もライフルをサリーネに向けて構える。


「……開始!」


「「!」」


オリヴィアさんの合図と共に俺はライフルを放つ。放たれる魔力の弾丸を躱しサリーネが迫る。

ボルトを動かし弾を装填しつつサリーネから距離を取り、構える。

狙いは右足。放たれる弾丸をサリーネは跳躍して避けた。


素早く装填し空中に居るサリーネを狙って放つもそれは木剣に防がれる。

そのまま迫るサリーネ、装填は……間に合わない。


「貰った!」


両手で体重を乗せて剣を振り下ろすサリーネ。

片手で持つ短剣では防ぎきれ無い、詰みだろう。


そう、短剣(・・)ではね。


「嘘!?」


驚きに声を上げるサリーネ。その表情も目を見開いている事からかなり驚いているようだ。

俺がライフルを盾にしたからだろう。

短剣と違い長物のライフルなら両手持てるからね。


「わわっ!ちょっ!?」


そのままライフルで押しのけ銃身を両手で持ち振るとサリーネが慌てて後ろに飛び退いた。

その隙に装填し着地の瞬間に合わせて引き金を引く。


「っ!」


これも木剣で防がれてしまった。

流石最強の部隊の副隊長、このくらいで倒せるはずもなし。

排莢しそのまま弾を込める、このライフルの良い所は弾が残っててもこうして弾を込める事が出来るという事。

サリーネから決して目を離さず、一発ずつ弾を込める。弾を込め終えたらボルトを操作して装填し構える。

互いに構えたまま数秒が過ぎ去る。


正直言って勝てる相手では無い、過去セシリアとも模擬戦をして勝てた試しは無いから。

そのセシリアと引き分けたサリーネと戦って勝てる筈が無いでしょ。

まぁ今回は木剣ではなくライフルなのだけれど。

というかどう考えてもライフルで戦うような状況ではない、遠距離武器だよライフルって。

そりゃ互いに構えた状況で開始なら有利だろうけどそれを避ける時点でどう足掻いても勝てるわけがない。

サリーネが様子見だろうからまだ戦えてるだけでこれが互いに木剣だったら最初の時点で負けてる。言い切れる理由はセシリアに模擬戦でボコボコにされたから。



なんだろ、泣きたくなってきた。



「悲しいね……」


「急にどうしたの?!」


突然の呟きと共に放たれた不意打ち気味の発砲は危うげなくサリーネに弾かれる。悲しいね。

直ぐに弾を装填し、撃つ。横にステップを踏んで回避。装填、撃つ。さっきとは逆方向にステップを踏んで回避。

装填、撃つ。今度は滑り込むことで距離を縮めながら避ける。

最後、装填、撃つ。

両足で力いっぱい踏み留まりつつ両手を逆手にして地面について両足を振り上げその場で後転して避けられた。


これで俺の弾数は0、再び弾薬を込めなければいけない。

それはサリーネも分かっていることでそれを阻止しようと此方に駆ける。


弾を込めるのは無理かな。


振るわれる木剣をライフルで受け止める。


再びサリーネを強く押しのける。押された事で後退るサリーネに強く踏み込む。


「っ!?」


近接戦では敵わない。それはサリーネも知ってる事だ。

そんな中で俺の取った行動に再びサリーネが驚く。

左肩を突き出しサリーネに体当たりする。体当たりした時にサリーネの胸の柔らかさを感じた。


よろめくサリーネに即座にライフルの銃身を掴み振るうが木剣で下に弾かれライフルを踏み付けて押さえつけられてしまった。

俺は直ぐにライフルから手を離し短剣を掴みサリーネの胸目掛けて飛び掛かる。


「読んでたよ」


サリーネの蹴り上げによって短剣を蹴り上げられてしまった。短剣は俺から離れた所に落ちた。

拾う事は出来ない、拾いに行っている間に背後から意識を刈り取られるだろう、ライフルも同じく。


「やぁ!」


「っ!?」


そして丸腰の俺にサリーネが突撃を敢行。

俺はサリーネに押し倒される形で地面に倒れる。

抱き着かれた事で両手が封じられてしまった。


「ふっふ〜ん、私の勝ちだよ!」


満面の笑みでそう言うサリーネ。

誰が何と言おうとサリーネの勝ちである。


「どうエル?私って強いんだよ」


「そうだね」


知ってた。

模擬戦でセシリアと引き分けたくらいだからね。

けれどこうして実際に戦って実感が湧くというか、分かることもある。


「だからエルが思い悩む必要は無いんだから変に考えないこと!これはステラもセシリアも同じだがらね!」


「痛?!」


ペシッと強く額を叩かれた。


「分かった!?」


「分かったよ」


俺の上から退いたサリーネに抱き起こされる。


「お疲れ様」


「キュー」


様子を見守っていたオリヴィアさんとキューちゃんが此方にやってくる。相変わらずキューちゃんは誰にも身体を触れさせない様だ。

トテトテと歩いてきたキューちゃんを抱き上げ頭の上へ乗せれば機嫌よく鳴いた。ご満悦のようです。

その後汗をかいた俺とサリーネは風呂場へ直行、汗を流す。ついでにキューちゃんも身体を洗ってあげる。


どうやらサリーネは俺に心配するなと伝えたかった様だ。

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