第29話 人型と実戦
あれから何度かイニーツィオの試運転を行い、その操作に慣れたので実戦を行う事にした。
その為、俺は現在クーデリアが駆る試作2型の背に乗ってエルツ国のアルトゥン鉱山に向かっていた。
イニーツィオの武装は150mm滑腔砲とロケット砲、それとイニーツィオに内蔵されている肩部30mm機関砲。
護衛にジェームズ達の一式、それとクーデリアが乗ってた一式にシャルルさんが搭乗した計5機とフィーユ達だ。
シャルルさんの代わりにカトリーナが指揮を執る。その為予めステラ達と共に前線へと移動してもらった。
またクーデリアと共に試作2型に乗ったセシリアが索敵をする。
その為に試作2型に索敵装置も追加装備した。
ちなみに当たり前の様にキューちゃんは俺と一緒である。
さて、移動中とは言ったもののフィーユ達も居るためその移動速度は極めてゆっくりだ。
エルツ国アルトゥン鉱山までもう暫く掛かるかな。
にしてもまさかシャルルさんがパイロット試験に参加しててしかも7位だったとは思わなかった。
試験終了時に1位から10位の名前が表示されたのは覚えてるけど一人一人の名前までは覚えて無かった。
一緒に参加してたテレサが知ってて、試しにシミュレーションやらせてみたら物凄く上手かったのでクーデリアの一式に乗ってもらったんだ。
無論俺がイニーツィオの試運転を行っている間にシャルルさんには試作機でクーデリア指導の下訓練飛行は施した。日数で言えば足りないけれど部隊設立の時と違い今回はクーデリア達も慣れてるから補佐にも手が回るしそのままシャルルさんを連れて来ている訳だ。
「今ふと思ったけどイニーツィオじゃ黒い双翼に抵抗は難しそうだよね」
Beo《相手の速度が速いのもそうだが、イニーツィオは現在誘導兵器を持っていないからな》
Cecilia《遭遇したら取り敢えず逃げましょうか》
〘その方がよろしいかと〙
「いや、小回りは効くから肩部30mmを使ってみるよ。タイミング良くやれば当てれる筈だから」
何事も挑戦してみなきゃ分からないからね。
Teresa《え、兄さん当てれるんですか?》
「当てれなくはないと思う。迎え撃つ場合に限るけどね」
〘《《《《……》》》》〙
Charles《エルったらそんな事まで出来るのね!凄いわ!!》
皆が黙っちゃったと思ったらシャルルが物凄く褒めてきた。そんなに褒めてもなにも出ないよ。
Beo《それでも絶対は無いからな、危険と判断したら直ぐに撤退する事だ》
「《《《《《《《了解》》》》》》》」
〘そろそろ目標地点に到着します〙
ココからそう教えられ、戦闘準備に入る。
左手元の小型モニターを起こし武装を選ぶ。
初めは150mm滑腔砲を使おうか、ロケット砲にしようか。
〘提案、現在の状況下で150mm滑腔砲を使うとその反動で自機はおろか土台となる試作2型も墜落の可能性があります。滑腔砲、ロケット砲共に降りてからの使用が望ましいかと。肩部30mmなら問題は無いでしょう〙
武器を選んでいたらココがそう提案してくれた。
危険な理由まで説明した上で使用武器の提案をしてくれた、凄い。
取り敢えずはココが言った通り背部に滑腔砲とロケット砲を装備したままにし、肩部30mmを使うことにした。
試作2型に乗ったままアルトゥン鉱山を越えてその先の防御陣地に到着。
Cecilia《陣地防衛隊の魔法使い達が空にて四つ羽根と交戦中》
Crank《バナール隊、リュミエール隊、交戦を許可する》
「了解」
banalTeam《了解》
LumièreTeam《了解》
俺達は陣地防空戦に参戦。
フィーユとエミリー、シャルルさんとテレサが俺とクーデリアとセシリアの護衛に付き残りのジェームズ達がアンコニュへと攻撃に向かう。
Cecilia 《何体かこちらに来ました!》
俺は俺達を狙いに来た四つ羽根にマーカーを合わせトリガーを引く。
肩部から発せられる30mm機関砲がアンコニュへと当たり地上へと落としていく。
fille《エルはやらせないよっ!》
金色の長い髪を風に靡かせながら光魔法の光槍で次々とアンコニュを落とすフィーユ。
エミリーのゴールドベージュの髪も綺麗だけど、フィーユの髪も綺麗だよね。
そんな風に見惚れていると防空戦は終わりを迎えた。
Emily《数は少ないね》
エミリーが言った様に今回は数が少なかった。
様子見と言った所だろうか。
Stella《相変わらず良い腕ね》
「そりゃ選りすぐりの戦闘機乗り達だからね」
どうやら地上に居たステラが空中戦を目撃してたらしく仲良しグループの通信に入ってきた。
Sofie《というかお兄ちゃんが本当に当ててビックリしたよ》
Victoria《ほんと、流石エル兄様》
Cecilia《っ!新たな反応!これは……双翼です!》
「っ……来たか!」
新種の出現。俺達は即座に戦闘態勢を取る。
西から猛スピードで此方に向かう何体かの黒い双翼。
その内の1体の黒い双翼の下に何か大きなものが居る。
「ジェームズ!テレサと共にシャルルを守れ!他は迎撃に当たるぞ!」
banalTeam《了解!》
LumièreTeam《了解!》
こうして始まった対黒い双翼戦。
たが以前と同じく双翼は攻撃をしてくる事は無い。
1体、また1体と双翼が地に落ちる中、俺は巨大なものに狙いを付けて30mm機関砲を放つ。
すると30mm機関砲は甲高い音を立てて弾かれた。
「30mmが効かないっ」
どうやらあの巨大は鉄の塊か何かに覆われているらしい。
Emily 《なら双翼を狙うまで!》
エミリーの炎の槍が巨体を運ぶ双翼を穿つ。
これで巨体は成す術も無く地上に落ちる。
…………………………筈だった。
黒い双翼に吊るされた巨体が突如加速しイニーツィオにぶち当たった。
「これは……ずいぶん大型だなっ!」
アンコニュの新種。
今までで見たどのアンコニュよりデカい大型の敵だ。
俺はそのまま大型アンコニュに押され試作2型から落とされた。
Cecilia 《エルッ?!》
Victoria 《今助けに行くから!》
「大丈夫だ!このまま地上に降りて大型アンコニュを掃討する!」
大型アンコニュを引き離し蹴り飛ばして距離を取りつつスラスターを吹かして体勢を整えブースターを吹かすことで滑空する。
〘マスター、撤退を!〙
「駄目だ!こいつを野放しには出来ない!!」
このまま撤退すれば地上部隊がどうなるか分からない、成す術もなく壊滅する可能性だってある。
だからこそ大型アンコニュはイニーツィオで倒す!
地上に着地しブースターを吹かして大型アンコニュへと急速接近する。
のそのそと起き上がった大型アンコニュを両手で掴み即座にブースターを全開にして押し出す。
地上部隊が近くに居ては戦いづらいからこの場から引き離す為だ。
「にしても鳥みたいな形だなっ」
2本足に真ん丸な身体。しかし手や腕らしきものは無い。羽根も無いし形だけの鳥。
だがその身体は硬い外殻……恐らく鉄で覆われている。
赤い光を放つ鋭い2つの目。
《━━━━━━━━━!!!!》
突如口らしき所が開いたと思ったら凄まじい鳴き声が響いた。鳥の鳴き声の真似ですかね?
うるさいな。
十分距離が離れたのでその胴体を蹴り飛ばす。
大型アンコニュはそのまま後ろに転倒する。
その間に左手元の小型モニターのから150mm滑腔砲を選択しイニーツィオの右手に装備し構える。
照準を合わせ、トリガーを引く。
轟音と共に放たれる砲弾が起き上がった大型に当たる。流石にこの弾なら効く様だ。
そのまま滑腔砲を撃ちつつ接近し左肩を突き出して体当たりする。
体勢を崩した大型アンコニュにそのまま後ろ回し蹴りを放つ。
〘上空よりアンコニュの攻撃、来ます〙
ココの声と共に警告音がコックピット内に響く。
即座にブースターを吹かしてその場から離れれば上から幾つもの黒色の光線が降り注ぎ着弾と共に爆発を起こした。
即座に肩部30mm機関砲を上空の四つ羽根のアンコニュに向けて放つ。
Sofie 《援護するね!》
「頼むっ!」
援護に来てくれたソフィー達に空は任せ目の前の大型アンコニュに再び集中する。
《━━━━━━━━━!!!!》
「は!?」
鳴き声と共に放たれた赤い光線。
咄嗟にスラスターを吹かして避けたものの滑腔砲に着弾してしまった。
滑腔砲は手放すと同時に大爆発を起こした。
Victoria 《エル兄様っ!?》
「大丈夫!」
まだ武器は残ってるから。
急ぎロケット砲を左手で構える。
〘先程の光線と滑腔砲の爆発で右手に不具合が起こっています〙
「了解」
ココに答えつつチラリと右小型モニターを見る。
敵味方が入り乱れているのが見て取れる。
照準を大型アンコニュの頭に定め引き金を引く。
ロケット砲は大爆発し、大型アンコニュは口から煙を吐きながら放心したかのように上を向く。
その隙を逃さずもう一発ロケット砲を叩き込む。
「硬いなコイツ!」
2発もロケット砲を叩き込んだが倒れる気配がない。
それにあの口から放つ光線は厄介極まりない、何か策は……光線か、やってみようか。
俺はロケット砲を撃ちながら再び接近する。
接近に気付いた大型アンコニュは俺に向けて口を開けた。
〘危険ですっ!!!〙
「いいや!これでいいっ!」
大型アンコニュの攻撃動作を見てブースターを全開にして突っ込む。
そして壊れかけた右手をその口に突っ込む。
手を突っ込まれ唯一の出口を失った光の奔流が行き場を失い大型アンコニュの口の中で大爆発を起こした。
「ぐぅぅぅぅ!!!」
大爆発の衝撃でイニーツィオがぶっ飛ぶもブースターとスラスターを吹かして何とか転倒は防ぐ。
大爆発によりイニーツィオも右手と腕が肩まで吹っ飛び大破してしまったが大型アンコニュは東部が吹き飛んでその場に倒れた。
右小型モニターを確認、反応が無くなったことを確認する。
だが安心は出来ないので俺はブースターを吹かして飛び上がりロケット砲を構える。
ロケット砲の弾を残り全て大型アンコニュに叩き込む。
これで足が無くなり、胴体部分も外殻が剥がれたな。
右小型モニターを確認し空の敵も片付いた事を確認し俺は通信機に声を掛ける。
「ソフィー、ヴィクトリア、ミサイルを全弾叩き込んで跡形もなく消して」
Sofie・Victoria 《了解》
俺の指示に従い倒れて動かなくなった大型アンコニュに空からミサイルの雨が降り注ぎ大爆発が起こる。
爆煙が晴れデカい窪みが出来、そこに大型アンコニュの姿は無くなった。
〘新種の大型アンコニュの消失を確認〙
Cecilia《周囲のアンコニュの掃討も完了》
「ふぅ……よし、今日は戻ろうか」
banalTeam《了解》
LumièreTeam《了解》
今の状況で試作2型に飛び乗るのは難しい為俺はブースターを吹かしてエルフの国を目指す。
ジェームズ達が速度を落として付いてきてくれるから空から奇襲を受ける可能性も極めて低いから安心だね。
エルフの国へと帰還し補給を受ける。
あの戦いでブースターとかスラスターを使いすぎてもう少しで魔力が底を付きそうだったので冷や汗をかいた。
魔力貯蔵タンクとか何か別の方法で魔力関連を改善出来ないかな。
はたまた戦い方に問題があるのか、その辺を皆で話し合うとしよう。
ちなみに、俺が戦った大型アンコニュはその特徴から鋼鉄鳥と名付けられた。




